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推し映画について語る-18:「孤狼の血」

若手俳優では松坂桃李さんが一番好きです、演技力No.1だと思っています。そして役所広司さんの演技は何を観ても「最高!」としか思えず、日本映画界になくてはならない役者さんだと思っています。
そのおふたりの”異次元の演技のぶつかり合い”が存分に味わえる名作「孤狼の血」が、遂にNetflixで配信スタート。配信当日は嬉しすぎて、早速4周しました。改めて、「孤狼の血」への愛を綴りたいと思います。


推し映画18:「孤狼の血」

“映画館で鑑賞しなかったことを後悔し続けている映画”TOP5に入ります。広島・八丁座での舞台挨拶に行きたかったなあ…!時を戻したい!

『凶悪』などの白石和彌監督がメガホンを取り、柚月裕子の小説を映画化。暴力団対策法施行以前の広島県を舞台に、すさまじい抗争を起こしている暴力団と彼らを追う刑事たちのバトルを活写する。役所広司が主演を務め、松坂桃李、真木よう子、滝藤賢一、田口トモロヲ、石橋蓮司、江口洋介らが共演。昭和の男たちが躍動する。
<あらすじ>昭和63年、広島の呉原では暴力団組織が街を牛耳り、新勢力である広島の巨大組織五十子会系「加古村組」と地元の「尾谷組」がにらみ合っていた。ある日、加古村組の関連企業の社員が行方不明になる。ベテラン刑事の刑事二課主任・大上章吾(役所広司)巡査部長は、そこに殺人事件の匂いをかぎ取り、新米の日岡秀一(松坂桃李)巡査と共に捜査に乗り出す。(Yahoo!映画より)

2018年5月12日公開。

広島出身で、かつ祖母が呉出身なので、聴く音すべてが懐かしくてエンリピしてしまいます。皆さんネイティブなのかな?と思うほど言葉が自然で、まずそこに感謝でした。圧倒的リアリティ。

白石和彌監督の作品は「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」「彼女がその名を知らない鳥たち」「ひとよ」を視聴していますが、この「孤狼の血」が一番好きです。
すべてのシーンが最高です。展開がやばい、演者がやばい、映像がやばい。

※以下ネタバレあり※

展開がやばい

しょっぱなから、なかなかえぐいシーン満載です。これまであまり任侠モノを観ていなくて、耐性が無かったので、ちょっとだけ怯みました、冒頭。
でも、主人公が、呉原署に赴任したての新人・日岡刑事(松坂桃李)だったので、すんなりとストーリーに入っていけました。

登場人物も多いし、展開がわや(内容盛りだくさんで、ジェットコースターみたいに速くて無茶苦茶しよる…的な意味で)なのに、クライマックスで “あれもこれも、全部…⁉︎” と伏線回収されていくのが快感でした。

大上刑事(役所広司)が行方不明になってからの展開がやばい。鳥肌立ちまくりです。神です。
日岡が、大上の真実を知っていく様が残酷すぎる。猛烈に嫌悪していた“がみさん”のことを、めちゃくちゃ好きになってしまったのに、本人はもうこの世に居ない…という寂しさ。
もっと話したいこと、教えてほしいことがたくさんあったのにと思った瞬間、その人は隣に居ないという喪失感を、日岡と共感しまくってしまって、ものすごくつらい展開でした。

これは“父と息子の物語”だと、何処かで読んだのですが、原作の“大上の過去”を知ってから視聴すると、つくづくそれを実感します。
(特に、監察記録にダメ出しされてるところ。がみさん、かっこよすぎるわ)

「正義たぁ何じゃぁ?」大上の台詞が刺さります。

演者がやばい

“役者”で観る映画を選ぶ方ですが、この作品は、出演陣全員がやばいです。
役所広司と松坂桃李の本気の芝居が最高だし、中村倫也と竹野内豊の狂犬っぷりも良い。

演技の振り幅が凄い若手俳優と言えば、“柳楽優弥・山田孝之・松坂桃李”だと思っているのですが、松坂桃李さんの出演作品では「孤狼の血」「彼女がその名を知らない鳥たち」「新聞記者」「日本でいちばん長い日」の演技が好きです。
今回改めて、隅々まで見返して「孤狼の血」が一番好きだな!と実感しました。
役所広司さんの出演作品は、いろいろ観ましたが、「渇き。」の藤島が大好きです。

このふたりの演技のぶつかり合い。ほんっとやばかったです。一番ゾクゾクしたのは、クラブ梨子での、ひりつくような役所広司×松坂桃李の空気感。
演技巧者って、レベル感が揃ってないと、ちょっと異空間が生まれてしまう瞬間があるな…と思っているのですが、そういう意味で、“日岡と大上”は、同じ立ち位置に居たのではないかと。

- 役所広司:大上章吾(呉原東署:暴力班捜査係 主任)
ヤクザな刑事。ほんと迫力あって凄かった。一番好きなのは、梨子の店で日岡とサシで飲むシーンです。
「落ちんようにするにゃあ、歩き続けるしかなぁ」と煙草を吸う。「ほんなら落ちんように、落ちて死なんように、前に進むしか、ないじゃないの」と笑う。
ここ、松坂桃李だから空気が持つんだよなあと思います。(手錠をかけろよ)の仕草、たまりません…。
あと、大上ノートの字が達筆なのがまた。人柄ですよね。

- 松坂桃李:日岡秀一(刑事二課・暴力班捜査係・大上班のメンバー)
ナチュラルなのに、キャラが憑依したような演技しますよね。凄い。ほんとに素晴らしい演者(たまに「この人だけ次元が違うな」と思う作品があります)。
運河に向かう時の表情が本当に凄い。喪失感と罪悪感と絶望感と。
その後、ひとりで養豚場に乗り込むシーンの、目の焦点があっていないような表情。松坂桃李と豚のショットは本当に名場面だと思います。虚な目と、豚の真っ黒な目と。

- 江口洋介:一ノ瀬守孝(尾谷組:若頭)
「外道は外道らしゅう、死んじゃらんかい!」から、生首を放るまでの一連の仕草がやばいです。

- 中村倫也:永川恭二(尾谷組:構成員)
加古村組の構成員の耳を食いちぎるシーン。
「舐めちょんか、わりゃあ」の笑顔からの、「まっずい耳じゃのぉ!」タコ殴りの、狂犬っぷりがやばい。

- 竹野内豊:野崎康介(加古村組・若頭)
冒頭いきなりの「おう。豚の糞食わせい」がもう…狂犬としか言いようがない。

- ピエール瀧:瀧井銀次(全日本祖国救済同盟・代表)
大上刑事との絆をびんびんに感じます。
養殖いかだから、海に2発撃つシーン。弔いかな。ぐっときました。

- 真木よう子:高木里佳子(クラブ梨子のママ)
全部のシーンが良い。日岡と夏祭りを歩きながら大上のことを話すシーン、震える声が良い。

あと、中村獅童演じる安芸新聞社の記者が、一番カタギじゃなかったよね…と思っています。

映像がやばい

「普通映さないよね…」ってところまで映してくれるのが、強烈なインパクトとして、この作品を名作たらしめているのだと思います。本当、容赦ない。
豚の糞を食わせる場面。
股間の真珠を取り出す場面。
無人島で死体を掘り出す場面。
大上の遺体の顔。
五十子の生首。
特に、大上の遺体は、忘れられないです。


八丁座に飾られていた日岡のスーツ。本当に、映画は一期一会ですね!
スクリーンで観れていたら、あの無人島での、ぶんぶん飛び回る蠅のうるささとか、クラブ梨子でのひりつくような役所広司vs松坂桃李の空気とか、体感できたんだろうなあと思います。悔しい。
いい映画は、映画館で観ないとですね。続編も楽しみです!



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