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彼について

全くわからない。こんなに共感できない人は初めてだ。。。これがはじめに彼に対して思ったことだった。

彼は、みんなから自然に愛されている。ガッツがあると見せかけてヘタレであり、そう見せかけてやっぱりかっこいい。誰もが逃げたくなるようなことに向き合って期待に応えてでも、自分で自分のやったことにびっくりしたりする。

この物語の中では彼の役割は大半が傍観し受容することだ。ただ、目の前のものを受け入れていく。急に出てきたタカミさんを受け入れ、そんな他人から見せられた歴史を全身で感じながらだんだんと自分から入り込んでいってしまう。彼はそれを怖がらない。他人も自分と違うものも怖くない。全部受け止めて受け入れてしまう。

ちょっと気になって、自分で一度感度100%で物語全部を受け止めてみたことがある。そしたらイワレビコ以外の19人の想いがいっきに

わっ!!!!てきて、

泣いてしまって、とてもじゃないけど『力が出てきたー!』なんて言えなかった。寧ろ今すぐ逃げ帰っておうちに引きこもりたくなった。しかも、彼が背負っているのはそれだけじゃない、天下統一する地上の人々全部、まとめます!と言ってしまうのだ。最終的にはオロチもまつったりなんやかんやして救ってしまう。。。かれの懐は広すぎる。ブラックホール並だ。なんでそんなに強いんだろう。全くわからない。わたしは途方に暮れてしまった。


そこで少しでも彼を理解すべく稽古場近くの公園を勝手にイワレビコのイメージスポットにして稽古後はほぼ毎回通い詰めた。

「神社を建て一生感謝を言い続けます。あなたが心穏やかに過ごせるように祈り続けます。そしてその気持ちを後世に伝え続けます。」

わからないなりにこれを実行しよう!と思ったのだ。実際は公園の塀の上でただぼーっと座ってただけだったけど…何回か通ううちに

風に揺れる木々の音とか晩夏の葉の匂いとかたまに通る見回りの人の懐中電灯の光とか。座った土の柔らかい冷たさとか外灯にぼんやり浮かぶ夜の空気とか体の中に残るさっきまでの稽古の熱とか。

そんなものが次々と自分に馴染んでくる気がした。何回目かの時に公演がうまく行きますように、と呟いてみた。出した言葉が夜の空気と自分の中身をつないでくれた気がした。

その時、受け入れるってこういうことなんだって思った。

彼はこれが常日頃の感覚で周りにあるものと馴染むことが普通になっているんだ。そこに特別に感情は持たない、自然にそうなっているんだ。そして、もう一つ気づいた。自然に色んなものを受け入れられてしまう本当の理由。

彼は全部のことを信じることができる人なんだ。


彼は自分のことも身の回りのすべてのことも信じている。タカミさんのことも信じている。地上のみんなは一つになれると信じている。国を作った人たちのことを信じている。その国作りにかける思いを信じている。そして彼自身のことを信じている。

祈ることも受け入れることも信じることから始まっている。

そこまでわかってようやく少し彼が普通の人間に見える気がしてきた。そして彼のことがすきになれた。そこからは今までと全く違う世界が見えた。彼の目を通せば世界は光にあふれて力が湧いてくる。結局彼は、物語の外のわたしまでも救ってくれた。ありがとう。


彼から学んだこと。人を信じること。自分を信じること。そして受け入れること。祈ること。

たぶん当たり前なんだけど、なかなかできなくて、でも少しずつできるようになりたいなと思う。いつかほんとうに彼のように人を救えたらいいな。

ありがとう、君に出会えてよかった。




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