見出し画像

おしゃれを選ぶ楽しさを届けたい。ファッションを入り口に、障害を持つ人たちの世界を広げる。-Mina

MAKERS U-18にはどんな人が集まっているのでしょう?8期生、加藤海凪さんに詳しく聞いてみましょう。

9期生エントリー受付終了!10期は2025年3月末開催予定。今冬情報解禁。
詳細はこちら▶https://u-18.makers-u.jp/

簡単に自己紹介をお願いします。

 加藤海凪です。体の特徴や知的な遅れが原因で本来楽しめるはずのファッションを楽しめてなかったり、生活の壁に感じている人たちがいる現状を解決するために、お洋服をデザインしたり、小物を作ったりしています。

どんな洋服を作られているんですか?

 今はデザイナーさんと協力して、よだれかけにもなるし汚れにも強くて作業中にも使えるベストを作っています。前がポケットになって食べこぼしてもそれでキャッチしてすぐに捨てられる構造になっていて、しかもおしゃれなものを作っています。知的障害のある人たちは作業仕事が多いんですけど、つなぎだとトイレに行くときに不便だったり、着る時に負担になったりすることがたくさんあるので、機能面も大切にしつつ、楽しく働けるように、普段でもおしゃれに着られる服やアイテムを作りたいと思っています。

洋服を作り始めたきっかけを教えてください。

 弟が知的障害を抱えていて、私は小さい頃から服が好きで自分で選んでいました。でも、弟は毎日お母さんに服を選んでもらったり、買い物に行ってもらったりしていました。その違いに少しずつ違和感を感じていていたら、体のサイズ感や肌の過敏さ、知的な遅れによる服の表裏や後ろがわからないといった細かい部分が積み重なってお洋服を着ることがちょっとした負担になっているんじゃないかと気づいたんです。だから結果、毎日同じTシャツと履きやすいジャージのパンツになっているんだなって。だからこそ、ファッションを楽しむところで生活に選択肢が広がっていったりとか、自分で選ぶって行動を起こすためのきっかけを作りたいと思って活動を始めました。

 私が事業を思いついたきっかけが、名古屋市で開催されているスタートアップユースキャンプってイベントが夏にあって、そこで自分の事業を考えようっていうコーナーがあったので、自分の好きなファッションと障害を組み合わせて、知的障害者向けのファッションが今までにないし問題がたくさんあることだったからやってみたら面白いんじゃないかなと、初めは実行するしないは置いといて、事業を考えてプレゼンしてって感じでそのキャンプが終わりました。

 でも、その後にやっぱり、あれ本当にやりたいなって思って、そのキャンプにメンターとして来ていた社長の方に相談に乗ってもらって、どう実行するかのヒントをもらえたので、そこから自分で作っていったりとか、人にこういうことやりたいんですって話しに行ったりして、繋がりが増えていったり、モノづくりがどんどん進んでいく感じがすごい楽しいなって思ったので、ファッションが好きっていうところもそうだし、自分でものを作るみたいなところがはまったっていうか、続けたいって思って今もやってます。

よだれかけから作り始めたのはどうしてですか?

 よだれかけはめちゃくちゃ正直に言うと自分で作れそうだったから作ってみたんですけど、最初私は服の知識もなければアパレルやってたとかでもないので、とりあえず自分が作れそうなものは何かなって考えた時に、おしゃれのよだれかけぐらいなら自分でも考えて作れるんじゃないかなと思って始めて、色々な人にミシンをもらって、5台ぐらい集めたりとか、車のシートの廃材をいただいてそれを生地にしてよだれかけを作ったりとか、一番できそうなところから始めようっていうことで作り始めました。

 ただ、最初作ったよだれかけが、裏地とかが肌が過敏な人に適してない素材ってことに気づいて、おしゃれって以上に知的障害の方たちに合うものを作りたいと思っていたので、自分の限界を感じたというか、それで今はデザイナーさんにお願いして詳しい人たちにいろいろ聞いて、素材集めだったりとか、プロトタイプから今、発展させていってる感じです。

なるほど。実際にはどのように作られたんですか?

 最初は全然何もわからないって感じだったんですけど、とりあえずフリー素材みたいな型、それも前掛けじゃなくて付け襟の型を使って、しかも寸法とかもよくわからないので、とりあえず型のサイズで作ってから着て、調整してまた紙に直してちょっと綺麗にしてって感じでちょっとずつ調整していきました。

弟さんに着てもらったりしました?

 一日中着てもらったりとかはないんですけど、弟に着てもらったら、「いいんじゃない」みたいな感じで、多分気に入ってはいるんですけど素直じゃない感じでした(笑)。でも、生地とか裏地とかもうちょっと工夫するべきだなって弟が着ているのを見て感じて、車のシートの廃材でももう少し柔らかめの素材を使った方が窮屈にならずに着れるかなって思ってちょっと改良して、ちょっとだけ柔らかい素材のものに改善することができて、よかったかなって思ってます。

車のシートの廃材を使ってるのが面白いですね。

 最初は、車のシートの廃材を持ってる人からたまたまミシンをいただいて、シートの廃材もいただいて使ってみるかってところでした。拭けば汚れが取れる素材なので洗濯もしなくていいし、ウェットティッシュで除菌すれば汚れもすぐに取れる素材なので、ちょうどいいかと思って使いました。できるものとあるものを探して作ってみたっていう感じです。

 皮が素材だと肌に赤みが出たり動きづらかったりって理由で、知的障害の人たちや身体障害の人たちは、皮の素材は着れないって聞いてたんですけど、車のシートの廃材は結構柔らかめの皮なので、このもしかしたら服にできるかもしれないなみたいなってところで、思いつきました。

知的障害をお持ちの方のファッション事情ってどんな感じなんですか?

 本人がおしゃれをしたいかどうかは健常者の人と同じように人それぞれなんですけど、でも興味ある子たちはすごく多くて、今ある服がかわいいとかカッコいいってのはあるんですけど、それをコーディネートしたり季節や場所を考慮して自分で組み合わせて服を着るっていうことが難しかったりします。

 障害を持っている子が苦手なのは、周りの状況、たとえば気温や季節を踏まえての調整ができないことだったりするので、たとえば冬物がかわいいと思ったら夏でも着ちゃうとか、身体のサイズに合わないのも着ちゃうとか、前と後ろを間違えちゃったり細かい操作、チャックとかボタンとかが苦手でうまく着れないって問題があります。

 なのでお母さん達が服を選ぶってなるんですけど、そうなってくると本人の意思っていうよりも、着やすさとか、支援のしやすさだったりとか、そういう部分を考えて機能性の高いもの、普通にTシャツとジャージみたいなものを選んで着させるっていうことが多くなります。周りの人に見られても大丈夫な服を買ってくれるけど、でもそれは本人が着たいと思ってる服とは少しずれてるところがあるので、本人が選べて、機能性も高くて、ファッション性も高い服を作れれば、当事者もそうだし、お母さんのような支援者の方の問題も解決できるんじゃないかなと思ってます。

その問題がクリアされる洋服を作っていきたいということですか?

 そうですね。私のブランドでは、本人が全部選べて、コーディネートも自分でできるようなものにしたいなって思ってます。お母さん達が子どものコーディネートを選ぶとか服を決めるという行為は、小さい頃以外は多分無いことだと思っていて、その支援の負担を少しでも減らしたいですし、やっぱりお母さんがずっと付きっきりな人たちが多くて、そうなるとまた社会に出づらかったりとか、自分のやりたいことや自分が選ぶということが少なくなってしまいがちだなと思ってます。なので、親の負担も減らしつつ、自分で選択できる部分も育てられるようにしていきたいです。

 作りたいブランドのイメージは、どんどんカスタマイズ追加していけるようなものにしたくて。例えばまず一つの服があったら、そこからアイテムを追加することでオーダーメイドチックというか、たとえばちょっと寒くなってきたなって時に寒い時用の組み合わせにできるような、そういう買い方、選び方のシステムを作りたいです。

 一つ問題を解決する服をつくって、それをベースにそれと組み合わせることができる服やアイテムをどんどん作っていきたいなって思ってて。たとえば、ベストだけどよだれかけにもなって汚れにも強くて普通におしゃれって服を今作っています。

 その後は、よだれかけに合う長袖や半袖の服を作ったりして、コーディネートをカスタマイズできる選択肢を広げていきたいし、それをポップアップにして療育も交えて、実際に選んでいく部分もやりたいです。触り心地とか着方がわからない部分とか試してみないとわからないところ、初めて気づくこともたくさんあると思うので、対面の時間をたくさん作りたいなって思ってます。

 そもそも当事者の方が服を選ぶっていう機会が少ないし、お母さんが服を買いに行くのも面倒くさいっていうのがあるので、ポップアップを開いてそこで療育、お金の使い方だったりコーディネートの組み方だったり、知的障害を持ってる人もそうじゃない人、それに身体障害の人も集まって一つのイベントみたいにして、お母さん達は子育て、教育するみたいな感覚でその場所に来て、当事者の人たちは楽しんで学んでみたいな、ただ服を買うっていう直線的な関係じゃなくて、服を選ぶって体験を提供したり、コミュニティを提供するみたいな。

 ファッションはあくまでも手段なんです。本当にやりたいことは、その子たちが社会へ出ていけるような環境を作るってところが一番やりたいことですね。

 知的障害を持った人たちのために作った服だと伝えなくても、普通に欲しいって思えるような服が作りたいです。なので、一つの障害とか見せ方にこだわるってよりかは、もちろん健常者の人も着たいと思えるし、知的障害だけじゃなくて身体障害のある人とか、色々な介護が必要な人とか、病気を持ってる人とか、幅を広げて色々な人に着てもらえるような服が作りたいって思ってます。

洋服はご本人が購入できるように、というイメージですか?

 そうですね。最終的には自分で買ってもらうのが理想ではあるんですけど、でも中々難しい部分でもあると思っているので、ターゲットは保護者であったり支援者の方ですね。着るのは当事者の方なんですけど、ポップアップで療育をしたり、学びを得られるような空間にするとか、親のコミュニティを作るとか、そういう部分でお母さんたちがこの服を買うメリットを作っていきたいなって思ってます。

ブランドを通して届けたいメッセージはありますか?

 そうですね。ファッションの魅力だとも思っているんですけど、選んでいくワクワクっていうか、服屋さんに行ってこれめっちゃかわいいって服を見つけて選んだときの楽しさとか、そういう部分を色々な人に体験してもらいたいなって思いがあります。私自身、服自体もすごく好きで楽しいんですけど、友達と遊びに行く時とか旅行行く時、イベントに行く時の前日に、自分がどういう服を着るのかを鏡の前で立って1人ファッションショーみたいな感じにするのがすごい楽しくて、その服自体はそんなにカッコよくなくても組み合わせてカッコいい服にするとか、組み合わせるのがすごい楽しいなって自分の中で思ってます。なので、それを障害を持ってる人にも伝えていきたいなって。

 この間、知的障害を持ちながらモデルをやってる子と一緒に服を買いに行くって企画をしたんです。お母さんも同行してもらって、古着屋を巡って一緒に服を服を選んで、最後に一番いいものを選んで着てもらうって企画でした。

 その時に、普段は洗濯物の一番上から服を取ってくるだけみたいな感じらしいんですけど、実際は、ちょっと憧れもある。服を見た時も、「これかわいい」とか「この素材嫌」とか、すごくアクションしてくれて。こういうのと合わせたらかわいいんじゃない、とか言って一緒に見て、選んでる時もすごいイキイキしていたんです。最初の方は服を見てるだけって感じだったけど、最後の方は、「これは好き」「これは嫌い」みたいなのをはっきり言ってくれるようになってて。

 知的障害を持ってる人たちは受動的な人が多いし、お母さん達も受動的になりがちで、コミュニティも狭くてあまり外に出なかったりなところを、自分から選んだり好きなものを言うとか、そういうところから選ぶ楽しさを知ってもらって、外に出るとか社会に出るきっかけになったらいいし、自分の好きな服を着たらもっと外に出たいなって思えるようになると思うので、そういう体験を提供していきたいなって思ってます。

 弟にも、「姉ちゃん服選んでよ」みたいに言われるので、選んだりとか私の持ってるメンズっぽいもので着ないものをあげたりとかしてました。そしたら学校とかで、服の自慢したりとかしてるらしくて、「これかっこよくない」みたいに言ったりとか「学校の中で一番おしゃれなんだよね」とか言ってきたりして、アドバイス求めてきて、それを実践してみんなに自慢するっていうのがあって、楽しそうと言うか、自分を表現するって体験になってるのかなって思います。

今後の目標や目指しているものはありますか?

 まず、服をちゃんと完成させて、商品にするのを達成したいですね。商品にする時にはクラウドファンディングとかして、色々な人に知ってもらいたいなって思ってるのが、直近の目標です。服の縫製をしてくれる場所も決まったので、そこで何パターンか作ってみて今年中にプロトタイプを完成させたいです。その後は施設を訪問して色々な人にヒアリングしてフィードバックをもらって、その後にクラウドファンディングとかに繋げていって商品にしたいっていうのが直近の目標です。

 最終的には、私は服だけじゃなくて教育だったり就職だったり、障害を持っている人たちの生活の幅を広げる活動を全般的にしていきたいと思っていて、一般的な福祉のイメージじゃない、「普通におしゃれ」「普通に行きたい」とか、障害関係なしにクオリティの高いものを作りたいなって思ってます。一番やりたいのがフェスを作りたくて、私はフェスがすごく好きで、食べ物もあるし、服とかもあるし、音楽もあるし、自然の中で空間もいいし、周りの人たちは楽しいしみたいな、そういう、何でも集まってる空間がすごく好きで、なので、障害がある人たちを巻き込みながら自分の商品を売ったり、就労支援事業者を呼んだり、アーティストとかを呼んで、一つのでっかいフェスを作りたいってのが一番の目標です。

 さっきもちょっとだけ話したんですけど、弟が服を選んだ時に学校で自慢してきて、これが一番おしゃれなんだみたいなことを言ってて、ちょっとだけ自信が持てたんだろうなって思います。あとはモデルの子と一緒に服を選ぶ企画の時も、お母さん曰く、普段はこれを着てどこどこに行きたいなんてあんまり言わないらしいんですけど、その時は普通の会話の中で「これ来て今度ディズニーに行きたい」みたいなことを言ってくれて。

 そういうちょっとした、外に出たいって気持ちを芽生えさせるとか、そういう力が服にはあるんじゃないかなって思ってます。圧倒的に綺麗にしたりカッコよくしたいってわけではないんです。

 今世の中にある障害者ファッションは啓発活動的にやってることが多いので、ある意味ファッション性が高すぎるというか、ファッションショーに出るために服を作ってる人が多くて、中々普段の生活の中に馴染んでいかない物が多いっていうのを感じています。なので、その子のライフスタイルに合うっていうことをすごく大切にしたいと思ってます。

 自分が好きな服があることで、生活が少しでも楽しくなったり、外に出たいと思えたり、少しでも自由になれる、そういう部分を大事にしていきたいです。だから、自信をつけてもらうイベントとしてファッションショー的なものももちろんやりたいんですけど、どちらかというと日常の中でその子が自信をつけられる、日常の中の経験として作っていきたいですね。

加藤さんの想いや理想、そこから湧き出る行動や挑戦、いかがでしたか?
引き続き、応援しています!

[取材日]2023/10/23
©2023 Mina Kato &ETIC. All Rights Reserved.

<最後に>

▶︎MAKERS UNIVERSITY U-18について知りたい方へ
公式WEBサイトをぜひご確認ください。

▶︎MAKERS UNIVERSITY U-18のコンセプト
こちらのnoteに新キャッチコピーに込めた想いを綴らせていただきました。

▶︎他のMAKERS U-18生についても知りたい方へ
自分のスタイルで挑戦を続ける、カオスなまでに多様なMAKERS U-18生を紹介しています。これまで取材したメンバーをこちらにまとめておりますので、ぜひご覧ください。

▶︎MAKERS U-18を体験してみたい方へ
U-18革命児の皆さんの背中を押すための企画を随時開催いたします。こちらのnoteに開催予定のイベントスケジュールをまとめています。

▶︎大学生以上の方へ
大学生版MAKERS UNIVERSITYもございます。ぜひこちらもご覧ください。

▶︎教育に想いがある方へ
MAKERS出身の若手起業家・イノベーターが、その生き様を高校生に伝える高校への出張授業プロジェクトも始まっています。

今後とも、応援よろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?