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日常は決して当たり前じゃない。クーデターを経験し、肌で感じたミャンマーの素晴らしさとリアルを伝え、未来の日本とミャンマーを結ぶ。-Yūna

MAKERS U-18にはどんな人が集まっているのでしょう?8期生、野中優那さんに詳しく聞いてみましょう。

9期生エントリー受付終了!10期は2025年3月末開催予定。今冬情報解禁。
詳細はこちら▶https://u-18.makers-u.jp/

簡単に自己紹介をお願いします。

 野中優那です。ヤンゴンかるたプロジェクトの代表をしています。ミャンマーで2年間暮らしていて、2021年にクーデターを経験して日本に帰ってきました。そこから日本の伝統文化である「かるた」を使ってミャンマーの人々の文化や暮らし、歴史を知っていただくという取り組みをしています。

どうして活動を始められたんですか?

 日本に帰ってきた時に、クラスメイトにミャンマーから帰ってきたって言ったら、「ミャンマーって今内戦してて危ないんでしょ、危ない国から帰って来れてよかったね」って声をかけられました。その言葉に対して、今、ミャンマーでは私達と同世代の若者が自由や未来を賭けて戦っているのに、なんでみんな無関心なのだろうと違和感を覚えました。

 けれど振り返ってみると私自身、これまでウイグル民族やアフガニスタンの問題に対して、同じように無関心だったんだと思ったんです。私たちは学んでるはずなのに、世界で実際に起きてることをどうして「自分ごと」として捉えられていないのかを考えた時に、そこで実際に生きる人々の顔や息遣いを想像できていないからじゃないかと考えたんです。

 ニュースで報道されるミャンマーは村が焼き尽くされ、若者が銃を持つ悲惨な状況です。けれど今そこで戦っている人々は、家族とご飯を食べたり、学校に行ったり、仕事をしたり、私達と同じように日常を生きてきた人たちで、クーデターによってその日常を奪われた人たちです。それを気づくことができるツールを仕込みたいと思って、ヤンゴンかるたプロジェクトを立ち上げました。ヤンゴンというのは私が住んでいた最大都市の地名になります。

どうしてかるたにしたんですか?

 私自身が百人一首が好きっていうのがまずあります。それにかるたって日本人なら誰でも知ってるのでルールを説明する必要がありませんし、小さな子どもからお年寄りまで老若男女関係なく遊べるので、かるたにしたいと思いました。

 私と兄弟がミャンマーに住んでいた2年間に現地で撮影した写真を使っています。44枚の写真と短いキーワードから、ミャンマーの人々の暮らしや文化を伝えられるような、かるたをしながら写真や動画を使って説明を加えて、写真だけではわからない背景を遊びながらより深く知れるような仕組みになっています。

どんなかるたなんですか?

 全部で44枚ありまして、ミャンマーにある托鉢(たくはつ)の仏教の文化だったりとか、ミャンマーの人はナマズを食べるんだよって話だったりとか、そういった人々の日常や文化、歴史とかも知れるようになってます。

かるたが完成するまでのエピソードを教えてください。

 かるたは、コロナ禍、自宅待機の間に、高校に入学したらミャンマーの魅力を同級生に伝えられたらなと思ってプロトタイプを作成してました。写真はコロナ前に撮影したものがほとんどです。その後、クーデターが起きて帰国してからそれを使ったプロジェクトを始めたって流れになります。

 なので、クーデターが起きたっていうバイアスがかからない状態で作ったカードなので、当時の日常や風景がそのまま残っています。ただ、いざ製品化しようとなったときに、本当に情報が合っているのか、ミャンマーの方にとって失礼な内容になっていないか、確認しなきゃいけないと初めて気づきました。そこで、上智大学や東京外国語大学の教授の方や翻訳家の方にご連絡して、実際にかるたを見ていただいて内容を校正していただきました。

 たとえば、ミャンマーって135の民族がいる多民族国家なんですけど、ミャンマーの「建国の父」と尊敬されるアウンサン将軍は、ビルマ族にとっては英雄だけど、他の民族にとっては実はそうじゃないとか、8大民族を書くなら135の民族を全員紹介した方が良いのではないかなど、フィードバックしていただきました。

 ただ、もちろんミャンマーの方にきっちり失礼がないようにすることは大切なんですけど、あんまり細かくなりすぎると日本人にとってわかりにくくなってしまうので、そこのバランスを見出すのはすごく難しかったですね。

 そこからかるたを実際に製品化するためにクラウドファンディングを始めたっていう感じです。それまでは全部手作りで、1枚1枚コンビニで写真を印刷して自宅でラミネートしてました。多分、当時15セットぐらい作ったので、全部で660枚とか、そのくらい作ったと思います。

クラウドファンディングをされたんですね。

 はい。一番最初は、人からお金を集めるのは恐れ多くて全く考えていなかったんですが、プロジェクトの相談をしていた日本人学校の先生から「クラウドファンディングはあなたの活動を知ってもらうきっかけや広報にもなるからやってみたらいい」ってアドバイスをいただきまして、このクラウドファンディングを通してミャンマーのことも知ってもらおうと思って、ミャンマーの木工品だったり、バックだったり、手織りバックだったり、ミャンマーに10年以上行かれている写真家の方の写真集を返礼品につけました。そうしたら、その方たちもクラファンを拡散してくださり、プロジェクトに関わってくださる方が増えていったのが嬉しかったですね。2021年の12月から22年の2月1日まで実施してたんですけど、目標金額が150万円で、322人の方から合計で309万円の支援をいただきまして、200%達成できて、本当に嬉しかったです。

その後はどんなことをされたんですか?

 クラウドファンディングの後は、主に地域の国際交流センターだったり、あとは日本語教室やミャンマーレストランとコラボして活動をしてました。料理を食べながらかるたで遊んだり、写真やアート作品としてかるたを展示して、トークイベントを行ったり、色々な団体とコラボしながら、興味の窓口を広げることを意識して1年間は活動してました。

 2年目は公教育に入ることを目的としていたので、公立小学校や大学でイベントをさせていただいていました。他にも、ミャンマーにルーツを持つ子どもたちに自分の故郷を知る授業したり、生き方のモデルとしてキャリア教育の講演会を小学校でさせていただいたりしています。これまでで40回以上イベントを開催してきました。

 当初から公教育に入りたいと考えていたので、ご縁をいただけるようになり嬉しいです。

公教育というところは最初から決めていたんですね。

 公教育に入りたかったのは、全く関心がない人たちに一番伝えられる手段だなと思ったからで、私が一番伝えていきたいのは同世代の子たちなので、そうすると公教育に入っていくことが一番なのかなと思っています。

イベントはどんな内容なんですか?

 イベントの中では、最初にミャンマーのことを簡単に知っていただくクイズをやっていただき、かるたでミャンマーの日常や文化を知っていただいてから、その後に、その日常が今奪われている現実を、私が体験した話を絡めてお話しています。そうすると、ただクーデターの話を聞くよりも、日常と現実のコントラストがわかりやすくて親近感が湧いた、と感想をいただきます。

 イベントをするたびに、子どもたちが「いつかミャンマーに行ってみたい」と言ってくださったりとか、「ミャンマーのことだけじゃなくて、ウクライナのニュースを見るたびにミャンマーのことを思い出すようになった」とか、「ウクライナで実際に起こっていることがより想像しやすくなった」と感想をいただくので、いま目の前の人に伝えることには意味があると思ってます。

どんな人にどんなことを伝えたいと思って活動されてますか?

 まずは、少し興味があるけど一歩踏み出せてない子たち、募金とかは少しうさんくさいし講演を聞きに行くのもちょっと怖いって人もいると思うので、その人たちにも気軽に楽しく知ってもらえる手段として使っていただきたいです。

 日本から帰った時、違和感と同時に、もし日本で何か起きたら私達はミャンマーの人たちと同じように行動を起こせるんだろうかとか、危機感もあったんです。世界の問題って本当は私たちの未来に対しても重要なことで、平和や民主主義が当たり前じゃないんだよってことを考えるきっかけにしていただきたいです。

 私自身、兄が学習障害を持っていて、当事者が語ることは何よりも大切だと思っています。けれど、当事者じゃない多くの人たちがそれを理解したときに初めて社会が動くと思っているので、公教育で伝えていくことはすごく大切だと思っています。

それにしても、2年間でイベント40回というのはすごい回数やられていますね。

 正直な話をすると、学生なので、中間テストの前はイベントを入れないようにしようとか思うんですけど、気づいたら1週間前でも入っていたり、テストの途中でなぜか岡山県でのイベントが入ってて、土曜日のテストが終わった後に新幹線に乗って日曜の夜中に帰ってきて、月曜日にテストを受けようと思ったら寝坊してギリギリになってしまったときは、流石に焦りました。。

 色々な若者が集まるコンテストとかスピーチの場では、ミャンマーの人だって覚えてもらうことが多くて、認知を広げていくことにもつながります。そういったご縁を大切にして積極的に参加していたら、伝える場をいただくことが増えてきました。

たくさんのイベントであったり、活動を続けることができているのはどんなモチベーションや原動力があるからだと思いますか?

 私がミャンマーのことを好きだからだと思います。2年間しか住んでないですけど、本当に空が青くて、穏やかでやさしい人々が暮らす国でした。クーデターによって、それまで当たり前にあった平和がどんどん崩れていき、直前まで同じように生きてた人々がこんな風に命まで奪われてしまう状況を目の当たりにして、すごく悲しかったです。帰国したとき、日本の若者に「ミャンマーは内戦してる物騒な国」ってイメージが持たれたことも悲しかったので、私の好きなミャンマーを知ってほしいっていう思いが、一番強いです。

 中学2年の時にミャンマーで職場体験に行ったんですけど、職場体験先の人が家族にご飯をご馳走したいからお金を貸してほしいって同僚の方へ頼んでいて、同僚の方は快くお金を貸していたんですね。けど田舎に帰る途中で借りたお金を、花を売ってる子どもたちに全てあげてしまって、家族にご飯はご馳走できなかったって話されていて。

 私は「借りたお金あげちゃったの!?」って思ったんですけど、2人とも「それは良いことをしたね」と笑っていました。貧しくても助け合いながら施し合っていくっていう精神が根付いてるんだなっていうのを感じて、すごく心が温まった瞬間でした。そういった人々の平和が脅かされていると思うと、悲しいですし、何とかしたいなって思います。

 活動を最初に始めた時、クーデターで大変なんだから、遊びでミャンマーのことを伝えるなんて呑気だ、ふざけてるって言われるんじゃないかって思ってました。けれど実際に始めてみたら、ミャンマーの方に、「本当に一番求めているのはこういう活動だ」って言っていただけて、それがすごく嬉しかったです。やっぱりその言葉が自己原動力で、思い出す度に胸が温かくなりますし、頑張ろうって思います。

 あとは、自分自身がイベントをして、かるたを使ってミャンマーを伝えたり、お話するのも楽しいので、楽しみながら活動できています。イベントが終わった後に参加してくださった皆さんが、「ミャンマーにいつか行ってみたい」って声をかけてくれるのが本当に嬉しくて、イベントをする度にモチベーションをいただいています。

今後目指されていることや目標はありますか?

 今後の目標としては、紛争ってミャンマーだけでなく他の国でも起こってるので、他の国とコラボしながら世界の紛争や問題に目を向けてもらえるような取り組みをしてみたいです。色々な国の支援団体とコラボして、例えば1日レストランを開いてその国の食事を味わいながら、今どういう状態かを聞けるような場所をやってみたいなと思っています。

 あとは、私の弟が英語が得意なので英語版かるたを作成してるんですけど、違う言語でも発信していけたらいいなって思ってます。あと、こちらは全然進捗してないんですけど、ミャンマー語かるたを作る計画があります。かるたって言葉が短いので、日本語を学ぶのにすごくいいと言われたことがあるんですね。なので、ミャンマーにいる子どもたちに日本を知ってもらうかるたを作りたいなって思っています。実は、ミャンマーには日本語を勉強する人もすごく多いんですね。日本の文化を知るきっかけになれば嬉しいです。ミャンマー語のかるたで日本のことを知ったミャンマーの若者と、ヤンゴンかるたでミャンマーのことを知った日本の若者が、5年後10年後、交流できるような未来があればいいと思い、活動しています。

 ミャンマーのクーデターから、次の2月で3年が経ちます。どうしてもほとんどの人は、ミャンマーでクーデターが起きていることも忘れていると思います。ミャンマーの人は、「ミャンマーのことを世界に忘れて欲しくない」っていつもおっしゃってるんです。なので、私の活動でミャンマーのことを覚えてくださっている人が周りに少しでも増えたらいいのかなって思ってます。

 寄付とか募金とかって、そもそも知らなければ始まらないと思います。もちろん、食糧支援・医療支援に大きなお金を支援するとか、例えば子どもたちのために勉強机をミャンマーに寄付するとか、そういった支援もあると思うんですけど、まずは、その支援の土台となる”知るところ”をこのヤンゴンかるたで作っていきたいです。

 あとは、今活動する中でミャンマーの難民の方にお会いする機会がすごく増えてきています。私の知る方は、すごく優しくて勤勉な人なのに、なんでこの人が日本にいることすら許されてないんだろうって思うことがありまして。自分は今、こういう草の根的な、目の前の人に伝えて自分の周囲を変えるっていう活動をしてますけど、国の仕組みとか法律とか、体制が変わっていかないと、根本的な問題解決にはつながらないと思います。なので、その枠組みや仕組み自体を変えていけるような人になりたいです。

野中さんの想いや理想、そこから湧き出る行動や挑戦、いかがでしたか?
引き続き、応援しています!

[取材日]2023/11/13
©2023 Yūna Nonaka &ETIC. All Rights Reserved.

<最後に>

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こちらのnoteに新キャッチコピーに込めた想いを綴らせていただきました。

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U-18革命児の皆さんの背中を押すための企画を随時開催いたします。こちらのnoteに開催予定のイベントスケジュールをまとめています。

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今後とも、応援よろしくお願いいたします。

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