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セクター間の翻訳をしていきたい。インパクト投資会社で修行中、いつか青森で面白いことをする。-Manoka

MAKERS U-18にはどんな人が集まっているのでしょう?6期生、古井茉香さんに詳しく聞いてみましょう。

9期生エントリー受付終了!10期は2025年3月末開催予定。今冬情報解禁。
詳細はこちら▶https://u-18.makers-u.jp/


簡単に自己紹介をお願いします。

 古井茉香です。青森出身で、今はインパクト投資でゼブラ企業※の支援っていうのをやっています。社会性と経済性の2層を追求しながら、持続的に企業経営をする会社を投資・事業開発・経営支援の面から支援していこうっていう会社にいます。

※ゼブラ企業(Zebras)とは、「サステナビリティ」を重視し、「共存性」を価値とするスタートアップのことをいう。「企業利益」と「社会貢献」という相反する2つを両立することから白黒模様の「ゼブラ(シマウマ)」にたとえられている。

出典:https://ideasforgood.jp/glossary/zebras/

インパクト投資に関わることになったのはどうしてですか?

 元々社会起業家とお金を持っている資産家の間にある溝を埋めたいと高校生の時から思っていて。MAKERS U-18に参加した時は在日外国人の問題を解決したくて社会起業家を目指していたんですけど、先輩とか友達のいわゆる社会起業家って呼ばれる人たちを見ていると中々お金が集められなかったり、行政から助成金を得たいって思っても行政から理解を得られなかったり、他のスタートアップよりも資産家からお金を集められなかったりとか、あとはそもそも社会起業家側が事業開発とか、経営についての知識があまりなかったり、社会起業家側にも行政側にも資産家側にも色々な問題があって、こういうカオスな状態で自分が社会起業家として事業を立ち上げると、先に自分のメンタルが参っちゃうんじゃないかなと思いました。

 で、一旦その界隈から離れることにしたんですよね。その後に飛び込んだのがVCの界隈でした。VCではやっぱり社会起業をしている子たちよりも急成長してる会社にどんどんどんどんお金が流れていて、社会性と経済性の二つを両立した企業にお金が回るような仕組みをいつか作りたいなって思っていました。そんな矢先に偶然出会ったのが、今のZEBRAS AND COMPANYっていうインパクト投資をする会社で、社会起業家サイドに立って社会問題を構造的にグローバルアジェンダなど色々なものを見ながら構造的に観察したり投資家サイドではファイナンス・事業計画・事業開発などそういった面を勉強していて、いつかこの二つを結びつけられるアプローチ方法は何なのかっていうことを考えながら動いています。

お金が回る仕組みを考えているのはどうしてですか?

 稼がせたいんですよね。やっぱり今、社会起業=稼げないっていうイメージがまだまだあると思っていて、そのイメージを払拭したいっていう気持ちがめちゃめちゃ強いなと思ってます。社会性と経済性の二つを両立する企業にお金を出して利益を出してリターンをもらうっていう、このインパクト投資のやり方はまだまだ日本では聞かないと思うんですけど、ヨーロッパとかアメリカでは徐々に徐々に当たり前になってきていて。なおかつそこにお金が集まっていて、1000億円とか7000億円のファンドや財団もヨーロッパにあったりと社会のために何かしていきましょうっていう流れが生まれてきてると思うんです。

 これは経済活動を起こそうっていうモチベーションが変わってきているからだなって思っていて、元々18世紀のイギリスでは購買活動をするために経済活動をしていこうってモチベーションが生まれていて、その後に物を購入するための利益を得るために経済活動のモチベーションが大きくなって、今はヨーロッパやアメリカの社会がお金を集めてそのお金を社会にいいことをしようとしている人たちに投資をしていきましょう、という流れ。多くの人々が動かされる思いをベースに経済活動を動かそうとするモチベーションがあるんじゃないかなと思っています。

 自分は青森で都会と地方の教育格差の問題に悩まされたり、アメリカ留学に行ってるときに留学生として差別とか偏見とか悩まされたり。そういう社会問題に直面する当事者ではあったけれども、でもやっぱり学問的に見て経済活動をする人々のモチベーションが変わってきているのであれば、その動向に合わせて自分もお金が動く新しい仕組みを作りたいなと思ってます。誰かのために役に立ちたいとか、社会問題を解決して何か役に立ちたいとか、そういうモチベーションを人々は持っているんじゃないかなって私は考えているので、問題を解決したい人を応援したいっていう思いもあり今の社会の動向を見ながらインパクト投資ってめちゃめちゃ面白いなって思ってこの分野にいます。

ご出身の青森県で活動していくことは考えていますか?

 これめっちゃ面白くて。私は元々青森大っ嫌いで大っ嫌いすぎて東京に進学してもう二度と青森戻るかみたいな、そういうことを考えたんですけど、東京に進学した途端、青森の方がめちゃめちゃ好きになっちゃったんです。

 あと、地元っていうワードはかなりパワーワードになってくるんですよね。地元が青森ですっていうだけで、青森県内の企業さんとか行政の人とのコミュニケーションがめちゃくちゃ円滑になるっていうことがあって。この前青森でワークショップを開催したときに、地元の協賛企業の方が東京の大学生に「出身どこ?」って一番最初に聞くんですよね。これめちゃめちゃ面白いなと思って。東京だとあんまり気にされない「出身」とかは、青森だとかなり気にされる。仲良くなる第一歩として、地元出身かどうかっていうのは気にされるポイントだなって。特に自分は青森出身の自分を持っているので、青森が地元っていうのを活かして青森の中で信頼を得て、自分が面白いことを将来できたら楽しいなって捉えてます。青森の高校生のためになりたいとか、地元青森のために何かしたいっていう思いはもちろん、青森が地元であることを活かしてできることがかなりあるなと思っています。

 出身が青森でアメリカに留学したことがあって東京の会社で金融に携わっている人が青森になかなかいないんですよね。私はまず聞いたことがないなって思ってます。別に青森以外の地域でもいいんですけど、自分が青森に注目している理由は、もちろんそこに自分のルーツがあるからっていうのと、ただ単に青森っていう土地が面白いから。観光資源もたくさんあるし、土地もたくさんあるし、でもそこを有効活用するできる人がまだまだ少ないなと思っていて、有効活用の意味も観光産業を生み出すとかそういうことではなくて、行政と企業と教育機関という色々なセクターを巻き込んで面白いことがドカンとできる地域なのに、まだまだそれができていない。でもそこに可能性があるって私はずっと思っていて、だから注目しているっていうっていうのはあります。

その青森で開いたワークショップについて詳しく教えてください。

 9月の上旬に、コネクトキャンパスっていう青森県の高校生に向けたワークショップを開催しました。そのワークショップでは、勉強って果たして役に立つのかとか、本当に学ぶ意味って何なのかみたいな。普通の高校生が学校の教師に質問したら「受験のためだろ」「将来のためのためだろ」とか一言で片付けられそうな問いについてガチで答えていくよっていうワークショップを東京の大学生8人ほど、青森に連れて行って開催しました。

 これを開催した理由は二つあって、一つ目は普段自分が交流している東京の大学生に教育格差っていうものは学問的な文献だけでは説明できないっていうことを伝えたかった。二つ目はただ単に青森県に勉強を心から楽しんでいる大学生が少ない。やっぱり勉強って何のためにするのっていう質問、学校の先生とか塾の先生にしても「受験のためだろう」っていう答えしか出てこないけど、青森の子たちに学問の楽しさを伝えたい、学問が大好きすぎて狂いに狂ってる人たちの存在を見せてあげたかったっていう二つになります。

 一つ目に関しては、元々高校3年生の時に東京大学とか早稲田大学、慶應義塾大学とか、いわゆる難関大学の大学生とアカデミックな議論をする機会に多く恵まれたんですけど、都会と地方の教育格差是正って活動について話す時に、青森は大学進学率が全国で一番低いとか、自分の周りに4年制大学を卒業した親・先輩が全くいないとか、そういう学問的なことを並べて話さないと教育格差を説明できなかったんですね。ただ自分は教育格差っていうものは学問的な文献では説明できないことだなってずっと思っていて、難関大学に通っている大学生たちっていうのは普段から学問的な文献やデータを読んで社会問題を理解しているけれども、青森ではそのデータや文献とかを引っ張ってこれない。そういう、表に出てこない教育格差問題があるっていうことをどこかのタイミングで伝えたくて今回ワークショップっていうのを口実に、自分の周りの大学生8人くらいに学問で説明できない問題があるっていうことを説明したかったっていうのがあります。

 二つ目の青森に大学生がめちゃめちゃ少ないっていう問題についてなんですが、本当に少なくて。特に学問を心から楽しんでる大学生っていうのがマジでいないんですよね。だから、教育格差や女性軽視、貧困などの社会課題を社会と個人の関係を明らかにして構造的に捉える訓練を学問的にしている大学生を青森に連れて帰りました。ですが、その青森の高校生が抱えている、例えば何か課外活動をしたいとか東京の大学に進学したいっていう考えも時には青森の規範の中で外れてるってされてしまうんですけど、そういう構造の中に自分がいて、自分たちが抱えている問題が社会の構造によって起きているっていうことに青森の高校生が気づいてもらうためにも、問題を学問から捉えることが得意な大学生を連れてきて、青森の高校生自身が自分たちが抱えてる問題をメタ認知して欲しかったっていう思いがありました。
  
 ただ今こんなかっこいいことを言ったんですが、ただ単に休みが長くてすごく暇だったし、なんだったら普段からあまり言葉が通じないなと思ってる東京の大学生と青森の高校生を繋げたら面白いことが起こるなと思って開催したっていう理由もあります(笑)。

色々な一面をお持ちだと思うんですが、目指しているものはありますか?

 翻訳者です。アカデミックな議論を大切にして学術的なことを勉強する人々、社会問題を抱えている当事者に寄り添いながら事業を進める社会起業家、社会性と経済性を重視してお金を出して意思決定をする投資の業界など、様々なステークホルダーの方、様々な業界が社会にはあって、でもその各業界で話されている共通言語は全然違うんだなっていうのを20年しか生きてないですけどすごく感じてきました。その各業界で話されてる共通言語が違えば、その業界で取り組んでいることがすごく面白いことでも、なかなか他の業界と連携できずに面白いことが生まれないなって感じていて、自分が各業界で話されてる共通言語を習得すれば、行政と投資の業界を繋げることだってできるし、色々な業界を繋げることができる。最終的には誰も生み出せなかったような、各業界を繋げることで生まれるインパクトを目指したらいいなと思っています。

 心地良くなった場所を抜け出す勇気を持つのはめちゃくちゃ勇気がいることだと思います。数ヶ月、1年もいればそれなりに知識がついてきて、それなりに人のネットワークも生まれて心地がよく、色々な仕事をすることができると思うのですが、そういう場所にヌルヌルといたら他の業界と何か繋がって面白いことは全く生まれないので、「ある程度できるようになったな」、「ここの専門知識が身に付いたな」と思った段階で勇気を出して他のところに飛び込んでみるような人が増えたら嬉しいです。

<編集後記>

古井さんの想いや理想、そこから湧き出る行動や挑戦、いかがでしたか?
引き続き、応援してます!

[取材日]2022/11/10
© 2022 Manoka Furui&ETIC. All Rights Reserved.

<最後に>

▶︎MAKERS UNIVERSITY U-18について知りたい方へ
公式WEBサイトをぜひご確認ください。

▶︎MAKERS UNIVERSITY U-18のコンセプト
こちらのnoteに新キャッチコピーに込めた想いを綴らせていただきました。

▶︎他のMAKERS U-18生についても知りたい方へ
自分のスタイルで挑戦を続ける、カオスなまでに多様なMAKERS U-18生を紹介しています。これまで取材したメンバーをこちらにまとめておりますので、ぜひご覧ください。

▶︎MAKERS U-18を体験してみたい方へ
U-18革命児の皆さんの背中を押すための企画を随時開催いたします。こちらのnoteに開催予定のイベントスケジュールをまとめています。

▶︎大学生以上の方へ
大学生版MAKERS UNIVERSITYもございます。ぜひこちらもご覧ください。

▶︎教育に想いがある方へ
MAKERS出身の若手起業家・イノベーターが、その生き様を高校生に伝える高校への出張授業プロジェクトも始まっています。

今後とも、応援よろしくお願いいたします。

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