見出し画像

10年経っても変わらないなら私がやるしかない。その子の世界に焦点を当て、普通を頑張る人たちの日常を支える。-Hikari

MAKERS U-18にはどんな人が集まっているのでしょう?5期生、森本陽加里さんに詳しく聞いてみましょう。

9期生エントリー受付終了!10期は2025年3月末開催予定。今冬情報解禁。
詳細はこちら▶https://u-18.makers-u.jp/

簡単に自己紹介をお願いします。

 森本陽加里です。”普通”を頑張る人たちの日常を支えるアプリ「Focus on」を作っていて、昨年末に一般社団法人Focus onとして立ち上げて、来年2月リリースを目指して開発してます。

アプリを開発しようと思ったきっかけを教えてください。

 きっかけとしては、私自身が通常学級に在籍する発達障害の当事者であることが大きいです。学校に行き続けたかったけれど、毎日行ったりだとか、みんなと同じようにやりなさいって求められることが中々難しくて不登校になってしまったりして、学校の中でその子たちが学び続けられる環境を作りたいって考え始めたところです。

 最初は、私自身が納得して通い続けられる"学校"を作ろうと思ってたんです。それこそMAKERS U-18に行く前までは、「私学校作る!」みたいな感じで、高校の先生に「どうやって学校作ったらいいんですか」とか「使える場所ないですか」って聞いてたりしたんですけど、でも仮に学校を作ってもその学校がある地域、その学校に通える何百人しか幸せにできないなって考えた時に、だったらアプリなら全国どこにいても誰といても使えて、その子たちが学校に行き続けられる環境を作れるお手伝いができるなと思ってアプリを選んでます。

 小学生とか中学生の時は、いつか私が行ける学校教育になればいいな、いつか誰かが作ってくれればいいな、って思っていて、自分がやるって発想ではなかったです。

 でも、高校生になった時に発達障害の子の支援団体に所属していて、そこで出会った子に小学生の頃の大変だったエピソードを話したらすごく共感してくれて。それは嬉しかったんですけど、同時に良くないことでもあって。というのも、私が小学生の時から5年以上経ってるのに、今小学生の子も同じことに困っている。厳しい言い方をすると学校は何も変わってないというか、本人たちは同じような苦しみを持ってる。みんなわかってるはずなのに。っていう気持ちにすごくなって。

 文部科学省の調査で発達障害の子たちが通常学級にどれくらいいるかって明らかになってたり、ニュースでも取り上げられてみんな知ってる言葉なのに、なんでこんなに変わらないんだろう。みんな見て見ぬふりしてるんじゃないのぐらい思っちゃって。10年経っても変わらないなら私がやるしかない、と思ってやり始めました。

確かに、言葉はみんな知っている気がします。変わってないのってなぜなんでしょうか?

 率直に、わかんないんだろうなって思いますね。当事者が何をわかってほしいのかだったり、先生たちも何を知ったらやりやすくなるのかとかがわからなくて、かつお母さんたちも先生たちも忙しい状況だと、その子のことを理解するのは難しい状況で。

 答えが一つじゃないっていうところが一番大きくて、あと小中学生の発達障害の子だと特になんですけど、自分で自分の感覚を表現する言葉を持っていないので、本人に聞いてもどうすればいいか答えが出てこないところも、支援が難しい原因なのかなと思います。

 私自身、小中学生の時に、母が頻繁に学校に通って先生とやり取りしてる中で、すごく大変な話し合いの中で1個、こういう支援しましょうって決まるんですけど、それが私に合わなかった時に素直に言えないみたいなことがあって。私のことを思ってくれている人たちが私のためにやってくれて、私も何とかしたくて、でもしっくりこないのを言えない気まずさがあったり、他にも、病院でもらう診断書や調査結果を先生に見せてもわからないじゃんとか、もっとこうだったらよかったってことが自分の中でポロポロあって。

 なので私は、こうしたら10年前が変わる、10年後が変わるって確信があってやってるわけではなくて、私が今まで生きてきた中で、何でこれこうなんだろうとか、ちょっともやっとしたところとかを1個ずつ解決していくことで何か変わるんじゃないかってアプローチをしてます。

 なるべく本人たちの感覚を大事にしたいって思ってて、保護者や先生が話しているその子の特性とか困り事とかが、私自身が知って欲しかったしんどいとこじゃないこととかがあって、どうしようもないことなんですけど、支援に使われる情報は支援者側から見た困り事や改善したい部分なので、本人がどう思ってるかっていうのは置いてけぼりなんですね。

 でもそれって、本人の自立においてすごくもったいないことをしてるんじゃないかなと思っていて、自分の苦手を気づかないうちに勝手に解消されてる状態じゃないですか。そしたら、保護者がいなくなったらとか先生が異動しちゃったら、その苦手がまた苦手として戻ってくるんですよ。自分としては苦手を認識してないし、改善する方法も持ってないので、よくわかんないけどうまくいっていた時期とよくわかんないけどうまくいかなくなる時期みたいな認識しかなくて。それって生きていく上で怖いなって思って。

 自分が嫌だったところを解消しつつ、自分が生きていくための何かを作りたいっていうところでやってるので、全部を解決できるかわからないですけど、少しでも当事者のモヤモヤする部分を潰していけて、かつ、外の支援者に対して、あの当時はこんなとこにモヤモヤしてたんですよっていう気づきを共有するだけでも、何か変わるんじゃないかなって思ってます。

そんな中で、どんなアプリを作っているんですか?

 来年2月にリリースしようとしているアプリは発達障害の子たちが学校に来られなくなる最悪の状態を防ごうってことで、"疲れ"ってところに着目しています。発達障害の子たちが学校に行く中で、みんなと違うところで努力してたりとか、みんなと違うところで我慢してたりする子たちが多いので、大人が気づかないタイミングですごい疲れが溜まっちゃってバーンアウトしちゃったり、学校行けなくなっちゃったりとかみたいなことが多いんです。

 そこで、疲れだったり困りごとを本人たちからどんどんアプリに記入していってもらって、UIとかはセルフケアアプリみたいなものと結構似てるんですけど、唯一違うのは、それを誰かに共有するためのアプリっていうところ。疲れが蓄積していって一定の値を超えたり、普段と違う変化をしたら保護者や教員に通知がいって、やばいじゃん休ませた方がいいじゃんってわかってその子がバーンアウトする前に何らかの手、相談ができたり、休ませることができたりするものを作ってます。

 ただ、それだけだと、発達障害の子が学校に行き続けられるかで言えば不十分で、その次は、そもそもその疲れを溜めなくていいような環境調整ができるようにしたいよねっていうところで、本人がどんなことにどんな背景で困るのか、本人のカルテ・取説みたいなものができる機能も今作ろうとしています。

 それは2025年とかにリリースできたらいいなと思って、妥当性信頼性の研究をしてるんですけど、まずは最悪の状態を防いで、その後環境自体を調整していくとか、本人の見え方・感じ方や意見が支援にも反映されるサイクルを作れるアプリサービスにできたらいいなって考えてます。

アプリ開発はどんなステップで進めたんですか?

 高校2年の時にMAKERS U-18に参加したんですけど、その時はFocus onをビジコンで発表して賞をもらったって時期だったので、合宿に参加して、もう既に形にしていたり事業をしてる人がいて、もうめっちゃ焦りました。

 合宿が終わったタイミングでコロナになったので、高校3年が始まらなかったんですよ。全然始まらなくて休校になっちゃって、1ヶ月空いたので、アプリ作ろうと思いました。その時はエンジニアもいなくて私もアプリ作れなかったんですけど、ノーコードで作れるホームページとパワポとGoogleフォームだけで、アプリの最低限の機能を体験してもらえるプロトタイプを出しました。そこからやっぱりUI的にもアプリにしたいと思って高3の終わりぐらいからエンジニア探し始めました。大学1年からはエンジニアが2人入ってくれて、そこからアプリ制作に取りかかりました。

 作りたいものはそれこそビジコンで発表してた内容だったりとか、MAKERS U-18で言ってた内容からほぼぶれてなくて。ただ、現実を知ったというか。大学とかで検証していく中で、私の作りたいものを最初から100%用意したところで、保護者だったり先生が使いこなせないってことを知って、まず先生たちがどう使ったらメリットがあるかみたいな想像ができてなかったんです。

 初めて作ったプロトタイプだったので単純に説明不足だったのもあるんですけど、たとえばその子がどんなことにどんな理由で困るのかっていうカルテの部分だと、保護者の方は家庭内での理解もしたいけど、その子が通う学校や病院、塾だったりにも知ってほしい。そういったことを最初からアプリに盛り込んでも、受け取る先への共有システムができていなかったりどういう使い方をすればいいのかわからないと効果が薄くて、そこを最初から全部盛り込むのは厳しいなって思いました。

 なので、来年2月にリリースするアプリは高校生がすごい直感的に操作して、保護者だったり先生はノータッチの状態でメリットだけ享受できるってシステムにしました。まずそこから参入してその後カルテ機能を作って、その後支援が回る機能作ってみたいに、5年くらいかけて理想を現実にしようって計画を立てました。

 最終的には学校や行政に導入したいので、どういう順番でやっていくかは考えつつ、やってみてますね。

アプリを通じてどんな状態を実現したいですか?

 そうですね。作りたい世界観としては、人々がお互いの世界を覗くような感覚で相互理解し合える環境を作っていきたくて。なのでFocus onも発達障害の子から見えてる感覚であったり、その子たちが感じてる疲れのようなものをどうやって外の人に体感してもらうか、知ってもらうかをすごく大事にしています。

 私自身は発達障害ってすごく面白い世界だと思ってます。私の中では生まれてから当たり前の感覚だったけど、これって他の人と違うんだみたいなことが、学んでいく中で発見があったりするので、すごく面白い分野だなと思ってます。

 でも私達が言ってるのは、今は支援する側とされる側っていう上下関係ある感じなんですけど、そこを対等にしていきたいというのがあって。

 っていうのも、例えば私であれば、私の支援を作ってる全員、私の関係者なわけなんですよ。確かに両親だったり学校の先生も私に対して支援をしてくれるんだけど、私が支援されるだけかっていったら全然そんなことはなくて、自分なりに頑張れるとこは頑張ってたりとか自分に対して自分を支援しているような感覚があって、例えばそれを、「私はこういう風にこういうことを努力してるんだけどでもここだけは助けてもらわないとどうにもならないからちょっと助けて」みたいなことを共有する関係って、上下関係でもなんでもなくて、生活する環境の中での調整をしているだけだと思うんです。

 全員で心地よく過ごしていくためには誰がどこで折り合いをつけるかみたいなところを、それぞれが伝えられる対等な関係になっていけたらいいのかなと思ってます。

 なので、代表の私のアイデンティティや興味分野として、発達障害っていう風に言うんですけど、でも発達障害のことをみんなに知ってほしい、理解してほしいってより、その子についてを知ってほしいってイメージがあります。アプリの名前のFocus onっていうのもその子に焦点を合わせるってイメージで名付けているので、例えばADHDだからアスペルガーだから自閉症だからこうなんだってことではなくて、その子自身のことをそれぞれが理解する。お互いのことをお互いが理解し、1人の人として理解するみたいな関係性になれることが一番理想だなと思ってます。

 今メインで作ってるのはアプリなんですけど、例えばこれがもうちょっと広くみんなに使ってもらえるようになったタイミングで発達障害の当事者の声を題材にした講演会みたいなものもすることで、保護者の人が他の当事者の世界を覗くことができたりとか、保護者の人にも登壇してもらって、保護者が思ってる世界を他の人が覗くことができたりとか、色々な人がそれぞれどんなふうに世界を見てるんだろうとか、この人はこう見えてるからこんな行動を取ったんだなっていう、納得感のような、お互いにわかりつつ調整しつつみたいなことができる社会を作っていきたいなって思ってます。

アプリがない今の10年後と、アプリができた後の10年後ってどんな変化があると思いますか?

 やってることの起点が、過去に感じたモヤモヤを一個ずつ潰していっている感じなので、その質問めっちゃ苦手なんですよ。。

 でもそうですね。最近思うのは、もし私のアプリがないままだったら、発達障害の子って、ずっと普通に寄せないといけないと思うんですよ。たとえば、コミュニケーションスキルとか時間管理の仕方とか、いわゆるマジョリティの中での常識やルールを覚える、もしくは、その子の苦手を補えるだけの得意を伸ばしましょうっていう、その2パターンがすごく多い気がしていて、でもなんかそれってすごく苦しいというか。。

 なんというか、得意なことがないって思ってる子たちもいますし、ギフテッドと呼ばれるような天才型なら伸ばしていけばいいと思うんですけど、そういった子たちばっかりじゃない。そうなった時に全員が全員、普通に合わせる訓練や教育を受けるのかっていったら、なんかそれって、あんまり素敵な未来じゃないなって私は思います。

 そこにFocus onがあったら、自分中にある特徴であったり特性だったり自分ルールみたいなものを、小中高大学生とかまでで保護者の方も理解するし、自分自身もどんどんどんどん自己理解を進めていく事で、例えば社会人になって親元を離れてからも、誰かの普通やルールに寄せなくても、もしくは自分の何かを一生懸命伸ばそうとしなくても、関係調整だけでうまく生きていけるんじゃないかなって思います。

 それができる未来の方が、ありのままでっていうとよくありがちな言葉なのであれですけど、10年後、普通のルールにすごく縛られて生きていかないといけない未来よりかは、その人らしく障害と共に生きていけるような未来になるんじゃないかなと思います。

どんな原動力やモチベーションで活動していますか?

 本音は、私のためですね。小学校3年生のときの私を助けるためにやっていて、でもその先には、基本の矢印は私に向いてるけど、自分と似たような苦しみだったりとかしんどさを持ってる子たちも一緒に助けていけたらいいなと思ってて。

 だから何か、私が熱量を持って死ぬまでやり続けることって、私自身を幸せにするためのことじゃないとできないとは思っていて。だから一生私のためにやっていくのは変わらないと思うんですけど、でもその時に、私と似たような子たちとか、その子たちのお母さんや先生の希望を一緒に背負って考えていきたいって思いがすごくあるので、自分と似たような子たちも言ったら身内みたいな感覚があるので、その子たちも一緒に幸せにしていきたいですね。


追記:インタビューから半年後、β版の開発を終え、クラウドファンディングを実施。目標金額を達成されました。

森本さんの想いや理想、そこから湧き出る行動や挑戦、いかがでしたか?
引き続き、応援してます!

[取材日]2023/3/20
© 2023 Hikari Morimoto&ETIC. All Rights Reserved.

<最後に>

▶︎MAKERS UNIVERSITY U-18について知りたい方へ
公式WEBサイトをぜひご確認ください。

▶︎MAKERS UNIVERSITY U-18のコンセプト
こちらのnoteに新キャッチコピーに込めた想いを綴らせていただきました。

▶︎他のMAKERS U-18生についても知りたい方へ
自分のスタイルで挑戦を続ける、カオスなまでに多様なMAKERS U-18生を紹介しています。これまで取材したメンバーをこちらにまとめておりますので、ぜひご覧ください。

▶︎MAKERS U-18を体験してみたい方へ
U-18革命児の皆さんの背中を押すための企画を随時開催いたします。こちらのnoteに開催予定のイベントスケジュールをまとめています。

▶︎大学生以上の方へ
大学生版MAKERS UNIVERSITYもございます。ぜひこちらもご覧ください。

▶︎教育に想いがある方へ
MAKERS出身の若手起業家・イノベーターが、その生き様を高校生に伝える高校への出張授業プロジェクトも始まっています。

今後とも、応援よろしくお願いいたします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?