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児童養護施設のイメージを変えたい。身近なロールモデルとして、施設の子ども達一人ひとりが自由に選び、行動できる場所に変える。-Yuna

MAKERS U-18にはどんな人が集まっているのでしょう?6期生、山内ゆなさんに詳しく聞いてみましょう。

9期生エントリー受付終了!10期は2025年3月末開催予定。今冬情報解禁。
詳細はこちら▶https://u-18.makers-u.jp/

簡単に自己紹介をお願いします。

 山内ゆなです。私自身が児童養護施設の出身で、児童養護施設の子どもたちに外との繋がりを得る機会や方法、本を届けたりパソコンを配ったりプログラミングを教えたり、あとWi-Fiを設置したりしています。

活動を始めた背景やきっかけを教えてください。

 きっかけは私が施設に住んでる時に、小学生の女の子から「本を読みたいから教科書を貸してほしい」って言われたんです。それで、施設にもっと本を増やしたらいいんじゃないかって思って、SNSで本募集みたいに発信したら本がすごいたくさん、本当に集まって。その後、他の施設の方からうちにも本が欲しいって言ってくださったんですけど、さすがに本をずっと集め続けるのも大変だし、前回集まった本も古めの本が多くてそれを子どもたちに渡すの少し違うなって思って。

 そこで、みんなが子どもたちにおすすめする本だったり、人生で出会った最高の一冊を子どもたちに送るプロジェクトやってみたらどうかなって思ったんです。半ばノリでクラウドファンディングを始めたら、またすごい額が集まって。運営母体の法人も作りました。

 今は本を送る活動は終えたんですけど、その先に子どもたちが欲しいものは何だろうって考えて、子どもたちに聞いたりして。本を読みたい子ももちろんいるんですけど、施設ですごい暇だったりとか、あとやっぱり施設がすごい閉鎖的で、施設以外のことを知りたいって子もすごい多くて、何か、外との繋がりを作りたいなって思ったり、色々なことを知りたいけど知る機会がない子ども達に知る機会を届けたいなって思いました。子どもたちが欲しいものがあるんだったら、そこで私達ができることがあるんだったら、これからもやっていけたらいいよねっていうので続けてて、今はプログラミングをメインに教えてます。

ご自身も施設出身ということで、何に困るかがわかるのは強いですね。

 そうですね。私自身大学進学するのにめちゃめちゃ反対されて、児童養護施設って18歳で高校卒業したらみんな大体一人暮らしを始めるんですけど、一人暮らしをしながら大学進学、しかも親の支援が一つもない状況で大学進学ってすごい難しくて。

 お金だったら、アルバイトで200万円貯められれば大学行けるって言われるぐらい。高校生が200万円自分で貯めるって結構きついことだと思うんですけど、それぐらいの感じなんですよね。無理だからやめとけよってずっと言われる、味方が誰もいない状態で、大学の奨学金を探したり行きたい大学を探したりすることはめちゃめちゃ大変でした。なんで施設に住んでるってだけでこんなに進路選択が限られて大変なんだろうっていうのはすごい思います。

活動していて良かったなと思う瞬間はありますか?

 施設出身で大学進学した人がほとんどいない、そもそも大学進学を考える人が全然いなかった中で、私が施設で2人目の大学進学者だったんですけど、その時に下の子たちが自分も大学に行ってみたいって言ってくれたり、実際に私の1個下でもう1人大学に進学した子がいて、そうやって知らなかった選択肢が増えることによって行動する子はいるなって思います。

 あとは、プログラミングを教えている時にすごい思ったんですけど、始めはパソコン触るの苦手とか興味ないって子たちも、1回2時間ぐらいのプログラムの最後には、もう終わりだよって言っても全然やめてくれないぐらい触ってて、何も興味なかったものにすごい興味を持ってくれるとか、自分これ好きだなって気づいてくれる瞬間が見れるところがやっぱいいなって思うし、それをたくさん続けて、みんなが自分の好きな何かができたらいいよねって最終的には思ってます。

 プログラミングって小さな成功体験をたくさん積めるのがすごいメリットだなって思ってて、その中で自分にはできないってところから自分もできた、次もできるかもしれないって思ってくれる子たちがすごい多くて。たとえば、実はしたいことがある子達、たとえば、野球やってるけどサッカーもしたいって子に、「それ先生に提案してみたらいいじゃん」って私が言ったら、できるかもしれないって反応が変わってて。プログラミングをやる前だったら多分、言っても無駄だよって言うと思うんですけど、成功体験を積んでいくことでできるかもしれないって思ってくれる子たちがすごい増えて、そこが自分のやりたいことを実現していく力にもなるだろうし、施設を出た後も自立していく力になっていくんだろうなって思います。

子ども達にどうなってほしいとか、生み出したい状態ってありますか?

 子ども達にどうなってほしいっていうのはあんまりなくて、自分のやりたいことできてたりとか、元気に生きててくれたらいいってぐらいなんですけど、施設自体がどうなってほしいっていうのは結構たくさんあって。

 今はパワーのある職員さんがいてその職員さんの言ったことは絶対みたいな、子どもたちに意見を言える場がなかったりとか、集団生活なのでルールが厳しくて個々をなかなか見れなかったりとかすることが多くて、それで子どもたちの才能を削っちゃったり取っちゃったりとかしてるなってすごい思ってて、施設自体がもっと子ども一人ひとりを見れる環境になったり、一人ひとりに合わせられる施設が増えていって欲しいなって思います。

 後は世間の児童養護施設に対するイメージを変えていきたいなって思ってます。講演に呼んでいただいたりするんですけど、その中で「児童養護施設ってかわいそうな子がいると思ってました」って言われたりとか、「少年院と何が違うんですか」って聞かれたりすることがすごく多くて、何か、児童養護施設=かわいそうって思われていて、しかもそれが子ども達にも伝わってしまっているから施設にいることをオープンにしづらい、不安になる子がやっぱり多くて、そこの正しい認知を広げていくことで、児童養護施設に住んでることが普通に言える社会になっていって、かつ、社会で子ども達を育てていける、児童養護施設にお任せとかじゃなくて、施設で暮らしてる子ども達を社会で見ていく仕組みになればもっと施設も良くなっていくんじゃないかなって思います。

活動のハードルや難しいことはありますか?

 そうですね。最初の本を配るプロジェクトでもすごいお金が必要だったので、お金を集めることだったり、あと1人ではできないので人を集めるところだったり、あとは施設に外部の人が入るのを嫌がるというか、閉鎖的なのでその習慣がないことが多いので、施設長さんの理解だったりとか、施設をまとめてる協議会の理解を仰ぐことだったりとかは、すごく大変でした。

 でも、続けていれば少しずつ良くなってきて、外部の人は誰も入れませんよって施設が、企業のCSR活動とかでも入ったりできるようになった施設も出てきました。子どもたちも、施設出身でも声を上げていいんだって思ってくれる子が最近増えてきて、施設出身の有名な方が何人かいらっしゃるんですけど、私含めその人たちが声を上げることで、私も声を上げていいんだ、施設出身って言ってもいいんだっていう風潮がちょっとずつ出てきたのかなって思います。

そうなれば段々、児童養護施設に関わる人も増えてきそうですね。

 そうですね。たとえば福祉系の大学とかで社会福祉士を目指していて、児童養護施設や社会的養護に関わりたいって思ってくれてる人は多いです。でもなんだろう、社会福祉士を目指して児童養護施設に関わりたいって言ってる人に「どうして児童養護施設に関わりたいと思ったの」って聞いたら、「かわいそうな子たちを救いたい」って言われたりすることがあったりして。なんかそれは違うなって私はすごい思ってて。

 施設に住む前のたとえば虐待経験とか、複雑なバックグラウンドですごい暗い過去があったとしても児童養護施設自体がかわいそうってわけではないと思うんです。施設に住んでる子たちみんながすごい暗いわけでもないです。

 関わりたいって思ってくれる想いがある人でも、そういうバイアスというかステレオタイプが強い社会ってすごい悲しいなと思うし、どうやったら理解してもらえるんだろうってことをすごい考えてます。

難しいですね。

 でも、施設に一緒に行って、実際に子ども達を見てもらうとやっぱり違って。やっぱり、施設の子はなんかかわいそうで、なんか心を閉ざしてる、みたいに思ってたらしいんですけど、でも実際に会ってみて、一緒にその辺の公園で歩いて、歩いてる子も普通に遊んでる子と一緒じゃんって変わったらしくて。そこが伝わったのはやっぱり大きいなと思うし、実際に見てもらわないと変わらない、わからないことってやっぱりあるなって思ってます。そこは施設が閉鎖的で体力がないのが一番良くないですね。

 施設に就職したらすごい大変なんですよ。子どもでもわかるんです。この人、22時に勤務終わってるのに残業してるよとか。施設の職員さんの労働環境をどうにかしたいなって思ってて。職員不足が原因で、そもそも児童養護施設を知らない人が多すぎるっていうのと、実際に働く人たちがすごいバタバタしているので、実習に行って無理だなって思っちゃう。施設の労働環境、給料を上げるなりしてでも施設の職員さん一人ひとりの負担が軽減されるような環境を作れば離職率も減るんじゃないかなって思ってますし、そういうことをやりたいなと思ってます。

今後の目標や目指していることはありますか?

 そうですね、私の一番初めは、人に話すことから始めたと思ってて、「こういうことやりたいんですよね」「こういうもの欲しいんですよね」みたいなことをずっと言ってたら「これできるよ」とか「これやったらいいやん」とか「こうやったらできるよ」って教えてくれる人がすごいたくさん出てくれて。自分一人で何か作ることは難しかったとしても人に話すことは無料なので、色々な人に話してアドバイスをもらってたら、私は本当にポンコツで何もできないんですけど、色々な人が作り上げてくれる自分、私がやりたいもの作りたいものを周りの人が作り上げてくれるってすごい感じたので、人脈を大切にしていければと思ってます。

 やらなきゃいけないからやってるって時もあるんですけど、でも、私自身施設で育って、一緒に住んでた子ども達は家族だと思ってるし、その子たちのために何かできるんだったら自分の時間を使ってもいいって思ってますし、私が活動してる中で「ゆなちゃんでもできてるんだから私でもできるかもしれない」みたいな、身近なロールモデルになれたらいいなって動いてます。そういう私を見た子ども達が自分で好きなことができたらいいんじゃないかなって思ってます。

 最終的には施設の子たちが自分で情報を取りに行ける、自分で挑戦できるような力を手に入れることを目標にしてて、たとえば全国の施設にWi-Fiやパソコン、携帯を設置して、子ども達が自力で情報を集められるスキルを手に入れたら、もう私達がやること多分ないので、解散ってなると思います。

 全国に600近く児童養護施設があるんですけど、Wi-Fiついてるところも数える程度、100もないと思いますし、高校生以上はともかく小学生、中学生がインターネットにアクセスできる場所は全然ないから、今後5年-10年くらいでどんどん広げていきたいなと思ってます。

 でもそれを私が全部やる必要はないと思ってて、やりたいって言ってくれる人がいたらその人にもやってもらって。必ず代表じゃなくちゃいけないわけでもないですし、みんなでやったらすごい早いじゃないですか。なんか「ゆなさんもう要らないよ」って言われるぐらいになればいいなって思ってます(笑)。

山内さんの想いや理想、そこから湧き出る行動や挑戦、いかがでしたか?
引き続き、応援しています!

[取材日]2023/2/13
© 2023 Yuna Yamauchi&ETIC. All Rights Reserved.

<最後に>

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こちらのnoteに新キャッチコピーに込めた想いを綴らせていただきました。

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今後とも、応援よろしくお願いいたします。

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