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「口に合わない」とは言えない繊細さん

まけまなは山間部にある
人工5千人に満たない小さな町で暮らしている。




仕事柄、個人商店に顔を出すことも多々あり
プライベートで買い物をせずともコーヒーや
お菓子を出してくださることもしばしば。



先日、ご主人に急用があってアポ無しで
訪れたところご不在とのこと。




代わりに出てきてくださったのは、
70前後くらいの奥様。



また出直しますと言って帰ろうとすると
「時間ある?柚子のお菓子を作ったの」
と、ほぼ無理やり引き留められる。




以前(5月頃)も、こちらの奥様に
柚子の手作りお菓子をご馳走になった。




柚子の皮を天日干しにしたものに、
砂糖がまぶしてあって、砂糖菓子のような
風味に柚子の味が効いてて美味しかった。



「まあ、短時間だけでしたら」




と返答しつつ、前回食べた
美味しい柚子のお菓子を頭に思い浮かべ、
少し期待をしてしまった。



数分後、運ばれてきたのは1枚の皿に乗った
3種類の食べ物。




左から、皮を剥いた柚子らしき塊のもの、
煮卵、きゅうりのお漬物という並び順。




柚子の覚悟はしていたものの、
煮卵ときゅうりは想定外だった。飲み物は、
奥様がハマっているというごぼう茶。




卵が好きというのもあって、
煮卵からいただくことに。



中は半熟。見るからに美味しそうだ。
口に運んで酢の味がしたことに少し驚く。




「米酢に漬けた煮卵なの」




と。やや酢の主張が強かったが、好きな卵と
あって完食。次にきゅうりの漬物は想定内の
味付けで普通に美味しく完食し、最後の柚子へ。




ちなみに、まけまなは果物全般が苦手。




柚子は食べようと思ったこともないし、
辛うじて食べられる蜜柑も、強いて言えば
缶詰のみかんの方が食べやすいくらい。




無加工の果物はどれもイマイチ口に合わず、
避けているのに、柚子の塊という最後の砦。




最初から半分に割ってあって、
断面を開いて見ると柚子の中には
黄色い物体が。これは?とお聞きすると




「栗をペーストにしたものよ」




と。柚子と栗の組み合わせ、
生まれて初めての試みはどちらに転ぶかと
頭で考えながらも意を決して口へと運ぶ。




「うーん!柚子の風味と栗の甘味が
合いますね!」



と笑顔で奥様に食リポする心の中で、
早く吐き出したいという思いに駆られていた。




決してマズい訳ではなく、
単に口に合わないだけ。




柚子の果肉感や素材の味というか、
果物全般が苦手な理由のまさにそれで、
これまた微妙なごぼう茶で流し込んだ。




柚子の最後のもう片割れを口へ運び、
しゃべれるくらいに咀嚼したところで
丁寧にお礼を伝えお店を後にした。




そこからは、自販機で水を買って
同じく胃へと流し込んだ。




口に合わないと瞬間的に分かりつつも、
「いやー、ちょっと口に合いませんね」
とは言う選択肢にすらなかった。




お人好しな性格もあって、つい相手が
喜びそうな言葉を選んでしまう性分な反面、
口周りの表情は素直だったように思う。




「口に合わなかった」自分に正直になって
相手を傷つけその場の空気が悪くなるより
僅かな時間、自分が我慢することを選ぶ。




これが繊細さんならではの生き方なのかと
改めて実感した体験だった。

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