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オノマトペピアノ【毎週ショートショートnote】

ドッキリの企画で、世界的ピアニストを招待して、ピアノを弾いてもらうことにした。

ベーゼンドルファーのピアノという触れ込みで、僕らはオノマトペピアノを舞台に設置した。

このピアノ、ドレミじゃなくて、鍵盤を叩くとオノマトペの音が奏でられるように設計されている。例えばドならドキドキ、レならレロレロ、ミならミシミシみたいに。

スタッフの誰もがピアニストが驚くだろうと予想した。ちょっと弾いてみたらわかるんだけど、ほんと笑っちゃう音がするから。ドキドキ・ミシミシ・シンシン・レロレロ……みたいに。

でも、このドッキリは失敗に終わる。

ピアニストが涼しい顔で弾いたというのもあるけど、一番の問題は、世界的ピアニストの奏でる音楽を聴衆の誰もが理解できないことにあった。そこまでは誰も計算できなかった。ドキドキ・ミシミシ・シンシン・レロレロ……で拍手喝采。

そこで僕は音楽の不都合な真実に気づく。大事なことは何を弾くかじゃなくて誰が弾くかなのだ。

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