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あるゲームについて話そうとしたら別のゲームの思い出話になった(後編)

 こんにちは、Makaru.Gです。
 今回の記事の内容は、数日前に公開した「前編」の続きになります。

 この記事を書こうと思ったきっかけは、2022年10月18日にサービスを開始したゲーム「マーベルスナップ」が、ちょうど1周年を迎えた事でした。私は「マーベルスナップ」をサービス開始初日から継続してプレーしていたので、1周年を祝いつつ、その魅力を紹介する記事を書こうと試みたわけですが……どこをどう間違えたか、ふと気づけば「類似のルールを持っていた過去のゲームを振り返る」という昔話ができあがってしまいました。
 ただ、できあがった昔話を読み返すうちに、私の中で「これはこれでアリかもしれない」という思いが生まれました。「マーベルスナップ」は現在も好評配信中のゲームですから、私以上に詳しい人、私以上に多くを語れる人が多数いらっしゃいます。しかし、サービスを終了したゲーム、特に携帯電話やスマートフォンでしか配信されなかったゲームアプリについては、誰かが語れるうちに語らなければ、その存在自体を忘れ去られてしまうおそれがあります。その意味でも私は、当時を知る者として「とことん脱線する」事を選びました。

 さて、前置きが長くなりました。
 今回は、スマートフォン用ゲームアプリ「トリプルモンスターズ」の紹介となります。


▶︎「トリモン」の始まり

【トリプルモンスターズ】
 メーカー:ブシモ(開発はゲームスタジオ)
 サービス開始:2018年4月26日
 サービス終了:2018年12月21日

 「トリプルモンスターズ」はオンライン対戦の可能なデジタルカードゲーム。「マーベルスナップ」のように、両方のプレイヤーが、決められたタイミングで同時に手札からカードを場に置く基本ルールが採用されていました。
 対戦に使用するデッキは20枚。各カードには、固有の効果のほかに「パワー」と「コスト」、そして「属性」が設定されています。属性は無属性を含めて7種類が存在しますが、無属性ではない属性を2種類以上、同じデッキに混ぜることはできません。また同名カードは2枚まで(最高レアリティのみ、例外的に1枚まで)という制限があります。
 実際の対戦では、各プレイヤーはライフを2個持った状態でゲームを開始します。ゲーム中は各ターン、自分と相手が「3枚ずつ」カードを使用し、3枚のカードを使用後の合計パワーが相手よりも低いとライフを1個失います。これを繰り返し、先にライフをすべて失ったプレイヤーの負けです。

 このゲームの駆け引きの大部分は「3枚目に何を出すか?」に集約されています。
 カードを置ける場所は「左・中央・右」の3箇所のみであり、そのカードを置く流れは「左と右を同時に出す→中央を同時に出す」と2段階のステップになっています。また、カードの効果が発動する順序は左と右に出された2枚の合計パワーで決まり(多いほうが先に発動)、高コストのカードは総じて「中央に置くと強い」傾向にあります。
 そして、ここで「トリプルモンスターズ」を象徴する最重要ルールが登場します。それは「場に置く3枚のカードの合計コストが10を超えてはならない」というものです。例えば、相手が「左にコスト3、右にコスト2」という組み合わせでカードを出した場合、中央に出される相手のカードは「コスト5以下」という推定が可能となります。この合計コストをめぐる読み合いは、いま振り返っても、相当に深いものだったと思います。


▶︎「属性」によるデッキ構築の制約

 本作品における駆け引きの本質を簡潔にまとめると、こうです。わかりやすいですね。

①最初にお互いが出した2枚のカードと、
②最初に決定した「カードの公開順」を参考に、
③相手が「3枚目に何を出すか」を予想し、
④予想した相手の思惑を上回る動きをする

 また、最初に「カードの属性は無属性も含めて7種類」と説明しましたが、その属性ごとの個性も非常にわかりやすいものでした。
 以下に列挙します。

【風属性】
 加算ではなく「乗算」によるパワー上昇効果を多数持ちます。乗算効果が連鎖すると、合計パワーは10万以上にまで膨れ上がります。
【水属性】
 手札の補充と、パワー変動の無効化が得意。後出しで「相手全体のパワー上昇値をゼロにする」カードが、サービス開始から終了まで、猛威を振るい続けました。
【雷属性】
 相手のカードに「ダメージを与えて」退場させるのが得意。攻撃回数とダメージにすぐれており、15万という特大ダメージを出せるカードも存在します。
【火属性】
 相手のカードを「パワーに関係なく」退場させるのが得意。サービス終了直前に、(敵味方を問わず)カードを退場させることで発動するパワー上昇効果が実装されました。
【幻属性】
 全属性で唯一「相手カードの効果から味方を守る」シールドを張れます。最高レアリティのカードの効果に被りがほとんどなく、勝ち筋が多彩で、的を絞られづらい特徴があります。
【地属性】
 規定の手順を踏むことにより、合計コスト11以上の組み合わせでカードを出せる属性。独自要素の「ドロップ」カウンターを蓄積すると、特定のカードの効果が驚異的に倍加します。
【無属性】
 上記6属性の弱点を補うのが主な役割です。しかし、サービス終了直前には「一度場に出れば絶対に退場しないカード」が登場するなど、テコ入れがなされました。

 このように個性的な属性が揃っていたわけですが、残念ながら、属性間のパワーバランスは良好ではなく、一度デッキを組めば即座に理解できるレベルで「カードパワーの格差」が存在しました。中でも特に問題とされたのは幻属性と地属性でした。
 幻属性は、最高レアリティのカードの中に「収録されるべき属性を間違えた」とも言われる1枚のカードが収録されて物議を醸しました。そのカードの具体的な効果は「自分の手札をすべて捨て、捨てた枚数と同じ回数、相手カード単体に大ダメージを与える」というものです。どう考えても雷属性のカードが持つべき効果です。手札をすべて捨てる関係上、このカードが出るシーンは実質的にその対戦の最終局面になるという特徴も、当時のプレイヤーのヘイトを集めた原因でした。
 地属性は「合計コスト上限値やドロップカウンターの値を参照してパワーが激増する」カードが多い一方で、コスト上限やドロップカウンターを増やす行動への妨害手段が存在しませんでした。それらの「仕込み」による合計パワーの期待値も高く、「弱い属性、弱いデッキを環境から締め出す」足切り性能が高かったのです。


▶︎「お祭りゲーム」になれなかった作品

 また、本作品は、多種多様なコンテンツからキャラクターが多数参戦している「お祭りゲーム」としての魅力を持ちながら、本作独特のゲームシステムがその魅力を損なうという、困った問題を抱えた作品でもありました。

 このゲームにはサービス終了時点で405種類のカードが存在しましたが、そのうち「トリプルモンスターズ」オリジナルのカードイラストは238種類でした。つまり、カードに描かれたキャラクターの約4割が、他作品・他社製コンテンツから入ってきたキャラクターである、という計算になります。この比率は、他作品からのキャラクター流入がアタリマエである例外(「ヴァイスシュヴァルツ」など)を除けば、異常ともいえる数字です。
 また、他作品からの参戦キャラクターを見ても、「ラクエンロジック」「カードファイト!ヴァンガード」「フューチャーカード・バディファイト」などのブシロード製TCGで登場したカードやキャラクターが多数を占め、その一方では2018年7月にアニメ放映が開始された「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」の登場キャラクターがカード化されるなど、ブシロード製コンテンツを徹底的に推していく方針が随所に見られました。

 そして、これらの参戦キャラクターは、「トリプルモンスターズ」オリジナルのカードと同様に、無属性を含む「7つの属性」のいずれかを与えられます。

 そうです。ここに落とし穴がありました。プレイヤーが好みのキャラクターを集めたファンデッキを組みたくても、ゲームの仕様上、個々のキャラクターの属性が違うと混ぜることができないのです。具体例を挙げると、「レヴュースタァライト」原作ではペアを組んだこともある「愛城華恋」と「神楽ひかり」のふたりは、このゲームだと「華恋→火属性、ひかり→水属性」であるため、同じデッキに入れることができません。
 この制約は、対戦ツールを手軽に楽しむための配慮としては、確かにプラスに作用しました。しかし、多種多様なキャラクターによる自由なデッキを組みたかったプレイヤーにとっては、モチベーション低下の大きな原因になったことでしょう。今さら言及しても仕方ないことですが、個人的には「属性による制限」自体、撤廃しても良かったのではないかと思っています。


 前述のように「トリプルモンスターズ」は何かと欠点の多い作品ではありましたが、対戦ツールとしての根幹部分は非常に良くできていました。また、このゲームは世界観の設定やソロプレー時のストーリーモードが深く作り込まれていたのも特徴で、個人的には「ここまできちんと作られた作品が8ヶ月でサービス終了になった」事を、今でも不思議に思っています。ちなみに、そのストーリーモードについては、そのあらすじを記した当時のメモが残っていますので、後日、この場を借りてご紹介できれば良いな、とも思います。

 だいぶ長くなりましたが、今回の内容はここまでです。
 長い長い昔話にお付き合いいただきまして、本当に、ありがとうございました。

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