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2020年、若手エンジニア市場はどうなるのか。と言うか、そもそもあの売り手市場は何だったのか。

 現在進行している21新卒、徐々に始まりを見せる22新卒、そして通年の第2新卒やビギナー層。このあたりの動きをウイルスは大きく変えてしまいました。就活中の学生さんやエンジニアへのキャリアチェンジを実行されている渦中の方はもちろんですが、企業の皆さんもどう振舞えば良いか頭を抱えている頃合いかと思います。今回はこれまでの市場を振り返りつつ、この動きがどうなるのか予測していきたいと思います。

プログラミング学校の台頭とRoRしかやりたくない層の形成

 ここで注目したいのがプログラミングスクール受講者です。2017年くらいまでのエンジニア採用は情報系学科を中心に、一部企業で年単位アルバイトとしてプログラミングをしている人が「プログラミング経験者」として珍重されていました。この頃まで学生は課金をしてまでプログラミングを覚えたいという(主に非情報系の)学生は少なく、非常にレアでした。エンジニアキャリアチェンジを狙う会社員に混じって学んでましたという声もあり、採用する側も「意識が高い学生だ」と受け取ることができました。

 これが2018年にはプログラミング学校が爆発的に増えていきました。例えばProgate社がユーザー登録者数の推移を掲載していますが、2018年に飛躍的に会員数が延びていることが分かります。DMM.com社がWEBCAMPを買収したのも2018年11月のことです。

 この頃を境に「新卒でエンジニアを目指す人は基礎スキルを持った上で新卒応募しないとエンジニアになる意思が怪しい」と自社メディア界隈ではジャッジされるようになります。もちろん入社後にみっちり研修をする前提のSIerなどは引き続き存在していますが、どういうわけかTwitterを中心に「自社メディアを目指そう!」的な風潮が強いので皆さん志望され、必然的に新卒であっても技術力が問われるという現象に発展しているようです。

 売り手市場という背景から、プログラミング学校を卒業した新卒エンジニアの中には「Ruby on Rails (RoR)しか使いたくありません」という方も多く居られました。日本で使われている言語としてはJavaとPHPが多いのですが、RoRを主張できたのも売り手市場ならではと言えますし、若手獲得を目的にRoRでの開発を選択した企業も多くはありませんが聞こえてきていました。

2019年まで席巻したオモテナシ採用

 ここ数年の過熱しすぎたエンジニア採用シーンを揶揄して「オモテナシ採用」と表現しているのですがこの言葉は流行らなかったですねぇ。経験された方は学生サイド・企業サイド共に居られるかと思いますが、渋谷・六本木・五反田自社メディア企業を中心に頂上決戦のようなコストをかけながら学生を取り合っていました。曲がりなりにもアベノミクス効果で景気は良かったですし、2020年年初の各社の決算までは強気に21新卒採用イベントを展開していたイメージです。

採用インターンの梯子現象とデーティング化した会社選び

 インターン採用そのものが始まったのは2000年代前半でした。当時は楽天社やワークスアプリケーションズ社のものが有名でした。長らくインターン採用は定着しましたが、ここ数年は半年から年単位のアルバイトのような長期インターンは据え置かれたまま、1-3日、長くて2週間の短期インターンが量産されました。

 JPHACKSが学生を対象にしたハッカソンを開始したのが2014年。同じ頃から採用を目的としたハッカソンが徐々に始まっていきました。実務とは大きく異なる採用イベントが「短期インターン」として数えられるようになりました。その結果、短期インターンを梯子する就活生が増えました。

 2019年には短期インターンが加熱し、就活生が7社程度梯子する現象が見られました。就活生に話を聞いた範囲では梯子をすることによって会社の雰囲気を知り、「いい感じ」の企業にエントリするとのことです。

 私は元々大学が長かったこともあり、「就活はさっさと終わらせて研究室に来てほしい」と教員と共に願っていましたが、今は一部の教員からは「積極的にインターンに参加して自分に合う企業を探して来い」と後押しされているとも聞いています。

 この風潮、マッチングサービスに長らく関わってきた私から見てみると特にデーティングサービスの「マッチングしたら取り敢えずリアルで会ってみて良ければ付き合う」という流れに近似して見えます。

 2018年まで湯けむりハッカソンを実施していた弊社でしたが、余りに実りが少なかったため2019年には中止の決断をしました。他社さんにこの話を2019年にしたところ「サマーインターンは未来のエンジニアに対するボランティアだ」と返ってきたことがありますが、なんとも好景気でしたね。

売り手市場を加速させたAI・機械学習ブーム

 2019年までの好景気にうまく乗った形で展開していったのがAI・機会学習ブームです。好景気と人口減少に後押しされる形で「導入すると人件費が下がって良いらしいので投資」がここそこで見られました。

 一時期はエンジニア採用逆求人イベントで9割がAI・機械学習エンジニアを志望し、普通のプログラマを志望する人が僅少という事象がありました。

 大学がAI・機械学習エンジニアを講義やゼミを通して量産に入ったことも要因としてあります。数学や統計についての体系だった学習をするため親和性はありました。企業からの寄付講座もありました。

 しかしいかんせんポジションに対して過剰供給された感は否めません。データアナリスト・データサイエンティストにはなりたいが、前処理やプログラム実装を求めるならちょっと、と辞退するのがまた売り手市場を物語っていました。19新卒ではこうした流れを見越して、AI・機械学習で採用をしておきながら研修で普通のプログラマに誘導するという会社も聞こえてきたほどです。

企業からすると歓迎できないオモテナシ採用

 売り手市場が極まるとオモテナシされる就活生のマインドも大きく変わってきます。印象的だったのは就活中期にあった下記の件。就活を経て社会人のマインドに成長する就活生が多い中、モラトリアム感が強いですね。

市場には出てこない既戦力層

 ここ数年観察される層です。大学生時代からアルバイトとして企業に入り、そのまま就職するケースです。以前から長期アルバイトとして戦力になるケースは見られましたが、多くの場合は大学近くの開発会社でした。ここで言う彼らはアルバイトの段階から有名大手ベンチャーに入り、そのまま就職します。市場には出てこないまま就職先が決まるパターンです。大学で何名かお会いしましたが、実に優秀なプログラマです。

21新卒、22新卒がするべきこと

 市場をざっくり振り返ったものを下に示します(割合はイメージ)。2020年に採用シーンが引き締まり、世間には「売り手市場は終わった」という言説が多く聞こえてきます。また、先に述べたようなAI・機械学習への企業の投資ついても先行きが怪しいものは収束していくと思われます。

 ただし売り手市場が無くなるとは私は考えていません。オモテナシ採用を多く展開していた企業の業績などからも察することができますが、2019年のような大盤振る舞いは大幅に減るでしょう。恐らく多くの企業は適性がある層をターゲットに含んでいた頃から、実績がある層に絞ってくるものと思います。コロナウイルスの影響でだいぶ狂ってしまいましたが、22新卒をターゲットにしたサマーインターンから各社がどう展開していくか注目しています。

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身近な先輩の就活話は役に立たない状況

 就活中の21新卒は突然の急展開で気の毒な限りですが、待っていても状況が好転するのは恐らく先でしょう。今できることをしなければなりません。本来であれば先輩に話を聞くのが就活の正攻法ですが、残念ながら直近の就活氷河期は2013年には終わっているので近い年齢の人の話は参考にならないでしょう。30歳以上は氷河期を知っていますが、就活に登場する企業ラインナップも違うので、精神論くらいしか参考にならないと思います。

 オススメしたいのは自力での情報収集に完結せず、(複数の)紹介会社から情報を得るということです。近日中に公開しますが、私も2012年にAcadexitした際には全く企業や社会を理解していなかったので、2社の紹介会社を利用して無事に就職しました。キャリアを拗らせすぎて人材紹介会社の開発部長をしている私ですが、そのことを差し引いても情報収集を短縮するために損はないでしょう。

就活をするための進学という選択肢

 修士と博士への進学ですね。

 修士については情勢を鑑みるとナシ寄りのアリです。就活を前提にした進学は正直オススメできません。採用インターンや内定者インターンにフルコミットすると研究に費やせるのが3ヶ月程度だったりします。「卒論との差分は何かね」がキラークエスチョンな学生は時折見ました。計画建てないと厳しいです。1年後の好転に文字通り「賭ける」選択になります。

 博士は就活がうまく行かなかったら行くところではないです。出てこられなくなるぞ。

エンジニアへのキャリアチェンジ

 エンジニアへのキャリアチェンジは離職前なら時期をずらしたほうが良いでしょう。現職の中でキャリアチェンジできないか相談するのもありでしょう。弊社では何人か事例がありますが、ポジションは据え置きつつエンジニアからプログラミング課題を出してレビューをながら成長を確認したり、プログラミングによる業務効率化を図って貰いながら実績を出したりしてキャリアチェンジを実現しました。

 理解がない現職であれば仕方がありませんが、プライベートで自主制作物を作りながら気長に応募するスタンスに移行すべきと思います。かつてのエンジニア教材で見かけたような「自分を追い込むために離職しよう」はとてもじゃないですが言えません。

 とはいえ、既に離職済みの方も居られるのは事実でしょう。先に述べたようにプログラミング学校卒業者は市場ではマジョリティですので、前職と掛け合わせたときによほどビビッドなものがあるか、自主制作物に目を見張るものがあるかになるでしょう。自主制作物を作りながらできるだけ中長期戦で考えるのが良いと思われます。自主制作物についても近いうちに言及して見たいと考えています。

5/11更新 自主制作物についての記事を公開しました。

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エンジニアはどこから来てどこへ行くのかが現在の研究テーマの博士(慶應SFC、IT)/ BiTT開発、LMS監修、日菲エンジニア採用、エンジニア採用・組織改善コンサル等←レバレジーズほぼVPoE・レバテック技術顧問←Omiai SRE・情シス部長←高学歴ワーキングプア研究職

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