幸せのための買い物
知らない街で、誘われるように入ってしまったヴィンテージショップ。せっかくだから掘り出し物を見つけようとあちこち眺めていたら、店員が近寄ってきた。彼は饒舌に私にTシャツを勧める。それは大きなハサミがプリントされた、あまり可愛いとは言えない風変わりなTシャツだった。
なんだか私は店員に値踏みされたような気がして、あまりいい気分ではなかった。どれどれと値札を見てみると、値段は書かれていない。
私はいいカモだと思われて、高値でこのTシャツを買わされるのだろうか。
まるで他人事みたいにこれから起こることを想像していたら、店員が笑顔で言った。
「このハサミはあなたが不快に思うものや苦しくて辛いと感じるもの、病気や事故などの不幸なんかをあなたの人生の周りから切り離してくれるものなんですよ」
店員は私が一言も買うとは言っていないのに、そのTシャツをレジに持って行ってしまった。
提示された値段はとんでもなく高額だった。
私は拒否せずに購入した。
人を騙すことを躊躇わない不幸な店員の幸せを願って。
(437文字)
お題【復習Tシャツ】
反省:謝らなくてはならないことが……。お題を【復讐Tシャツ】だと勘違いしてしまっていました。でも書いてしまったので読んで頂きたくて、タグをつけてしまいます。こんな勝手をお許しください。
(そもそもお題を勘違いしていたので作品にカウントはしなくても大丈夫です。すみません。)
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