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金沢まち歩きの「おもてなし」 -兼六園・金沢城公園編-


第1章:兼六園の四季折々の美

日本三大名園の一つ

兼六園は、日本三大名園の一つに数えられる回遊式大名庭園です。池を中心に曲水が巡り、築山や多彩な樹木で覆われたこの庭園は、訪れる人々に四季折々の美しさを提供します。その広大な敷地は約3万4600坪におよび、8200本の樹木が四季に応じて異なる表情を見せます。

昭和60年(1985)には、「名勝」の中でも特に重要な「国指定特別名勝」に指定されました。その歴史は延宝4年(1676)、加賀藩前田家の5代藩主綱紀が現在の瓢池周辺を金沢城の外庭として整備したことに始まります。その後、歴代藩主が作庭を重ね、約170年後の13代藩主斉泰の時代に現在の原型が完成しました。明治7年(1874)からは一般公開され、今では多くの観光客が訪れる名所となっています。

六勝の美

「兼六園」の名前は、六つの景観、「広大」「幽邃」「人力」「古色」「水泉」「眺望」を表す「六勝」に由来します。広大は広々とした明るい景観、幽邃は物静かで奥深い景色、人力は人の手がかかった造形美、古色は歴史を感じさせる趣、水泉は豊かな水の風景、眺望は遠くまで見渡せる見晴らしの良さを意味します。この六勝の美しさが、訪れる人々の心を癒します。


第2章:兼六園の名木と花々

唐崎松と根上松

兼六園には、数々の名木があります。その中でも唐崎松と根上松は特に有名です。唐崎松は近江の唐崎から種を取り寄せ、実生から育てた黒松で、冬には雪吊りが施され、墨絵のような風景を作り出します。根上松は、地上2メートルに40数本の根が盛り上がった迫力のある黒松で、その成長過程で土を取り除いて根をあらわにしたものです。

桜の競演

兼六園には、20種類、420本の桜があり、春には園内を薄紅色に染めます。特に、「兼六園菊桜」と「兼六園熊谷桜」は珍しい品種で、花弁の数が300枚以上にもなる菊桜や、一重で大柄な緋桜が訪れる人々の目を楽しませます。また、大輪の白い花弁が特徴的な旭桜も見どころです。

紅葉と椿

秋には、広葉樹に覆われた山崎山や瓢池の翠滝周辺が紅葉の名所となります。紅葉の色鮮やかさが庭園全体を染め上げ、訪れる人々を魅了します。また、龍石椿は兼六園発祥の品種で、薄紅色の花弁に白い班が入った優雅な椿です。

カキツバタ

兼六園の曲水に沿って1万株4万本のカキツバタが群生し、訪れる人々を楽しませます。特に夜明けに聴くことができるという「ポッ」という小さな音は、金沢らしい風流な暮らしぶりを感じさせ、五木寛之さんも感激したと言われています。


第3章:金沢城公園の歴史と復元

伝統的な木造軸組工法

金沢城公園には、伝統的な木造軸組工法で復元された建物があります。菱櫓、五十間長屋、橋爪門続櫓は、城郭復元の先駆けとなり、明治以降の木造城郭建築物として日本最古のものです。現在の建築基準に基づきながら、釘を一切使わず、継手や仕口を用いて部材をつなぐ伝統工法を取り入れ、より忠実な復元がなされています。

橋爪門続櫓と五十間長屋

橋爪門続櫓は、三の丸から二ノ丸へ向かう者を監視する役割を果たしていました。五十間長屋は、武器の保管庫であり、防御の城壁でもある2階建ての建物です。出窓の下には「石落とし」が再現され、石垣を上ってくる敵を撃退するための装置が備わっています。

菱櫓

菱櫓は高さ17メートルの三階建てで、建物全体が菱形の平面から柱、梯子の形まで全てが菱形に設計されています。四隅の内角は100度と80度になっており、その独特の形状が訪れる人々の目を引きます。


第4章:金沢城公園の名所と防御の美学

防御と美を兼ね備えた建物

金沢城公園には、防御と美を兼ね備えた建物がいくつかあります。石川門は金沢城後方の防御の要であった搦手門で、宝暦の大火(1759)の後、天明8年(1788)に再建されました。2層2階建ての枡形門です。

海鼠塀と三十間長屋

海鼠塀は壁面に平瓦を貼り、その間を漆喰で蒲鉾型に盛り上げる技法で、防火・防水の機能性と整然とした美しさを兼ね備えています。三十間長屋は海鼠壁が端正な二層二階の櫓で、大火(1759)後、安政5年(1858)に修復されました。

鶴丸倉庫と石垣の博物館

鶴丸倉庫は嘉永元年(1848)に竣工した武具土蔵で、石坂を貼った外壁や窓回りのデザインが美しい建物です。また、金沢城公園は「石垣の博物館」とも称され、亀甲石のある土橋門石垣や陰陽石のある大手堀の石垣など、さまざまな石垣が見られます。

玉泉院丸庭園

玉泉院丸庭園は、池泉回遊式庭園で、高低差22メートルの立体的な庭です。色紙短冊積石垣や段落ちの滝など、古絵図を参考に再現された植栽や泉水が庭園の美しさを引き立てます。玉泉庵からは、意匠に富んだ石垣群を借景に庭園を一望することができます。


終章:金沢の歴史と文化に触れるまち歩き

金沢のまち歩きは、兼六園と金沢城公園を訪れることで、歴史と伝統、自然の美しさが調和した「おもてなし」の心を感じることができます。このエッセイで紹介した場所を巡りながら、金沢の豊かな文化と温かい人々の心に触れてみてはいかがでしょうか。金沢のまち歩きは、訪れる人々にとって忘れられない体験となることでしょう。

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