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茶の「おもてなし」

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茶の「おもてなし」に関する記事をまとめています。お茶をより深く楽しむために、少し学んでみませんか?
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#茶道

四季の茶花の「おもてなし」

第一章:春の茶花1.1 元旦の茶花 春の始まりを祝う元旦には、椿と突羽根を用います。椿はつばき科の常緑高木で、赤、白、薄紅など多彩な花色を持ち、一重咲きから八重咲きまであります。艶やかな葉に照り映える椿の花は、新年の華やかさを象徴するのにふさわしい花材です。突羽根はビャクダン科の落葉低木で、正月の空に舞う追羽根を思わせる姿から「羽子木」とも呼ばれ、正月の茶席にぴったりの花材です。 1.2 小寒の茶花 小寒には、梅の楉(ずわえ)と妙蓮寺椿を飾ります。梅はバラ科の落葉高木で

茶の歴史と文化と「おもてなし」-室町時代後期から近代

はじめに 日本文化の象徴である「茶の湯」は、室町時代後期から現代に至るまで、多くの変遷を経て発展してきました。その変遷は、日本人の「おもてなし」の心と深く結びついており、時代ごとの社会状況や人々の価値観を反映しています。本エッセイでは、室町時代後期から現代に至るまでの茶の湯の発展を四つの章に分けて考察し、その文化的意義と現代における「おもてなし」の精神について探ります。 第一章:わび茶への道(室町時代後期) 珠光から紹鷗へ 茶の湯が精神面を重視するようになったのは、

茶の歴史と文化と「おもてなし」 伝来~室町時代前期編

はじめに茶は、日本の文化に深く根ざした飲み物であり、その歴史と風習は多様な形で発展してきました。本エッセイでは、茶の起源とその伝来から、平安時代から室町時代前期にかけての日本における茶の発展について探ります。特に、仏教行事としての「引茶」や、栄西禅師がもたらした新しい茶の点て方、そして室町時代における武士や庶民の間での喫茶の普及まで、茶の文化がどのように形成され、広がっていったのかを詳述します。茶の歴史を通じて、当時の社会や文化、そして人々の暮らしぶりに触れることができるでし

お茶の「おもてなし」

第一章:お茶の種類と歴史日本茶は、その豊かな歴史と多様な種類で知られています。煎茶、玉露、抹茶、番茶、玄米茶、釜炒り茶など、それぞれが独自の製法と特徴を持っています。煎茶は摘んだ茶葉をすぐに蒸して発酵を止め、手で揉んで撚りをかけた茶です。深蒸し茶は煎茶の一種で、蒸す時間が長いため、味や色が濃く出るのが特徴です。玉露は新芽を日光から遮り、1ヶ月ほど育てた茶葉から作られ、その名は製造業者「山本山」が江戸時代に出した商品名に由来します。 抹茶は碾茶を石臼でひいて粉末にしたもので、