かすみ草|poem8
――あなたが好きな花を選んで
君は言った
君が僕の手を引いて
ここまで連れてきたのに
手を離された僕は
ひとり、店内をさまよう
どのみち
彼女の期待には
応えられないのだからと
端のバケツに無造作にさされた
お手頃な、白い小さな花を選ぶ
――これを二本ください
店員さんに声を掛けると
つぼみがたくさんついているやつにしますね、
これから咲いていく楽しみがありますから
そう言って、地味な花の中でも、ひときわ地味な二本を選んでくれる
僕がお金を払うと、彼女は嬉しそうに店員さんから花を受け取った
手をつないで、僕らは家に帰る
安くて地味な花を持つ彼女は、嬉しそうだった
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