人間は生きてるだけで消費する 生み出さないと、ただのうんこ製造機 さてじゃあ何で生み出すか しかし、何も生み出せない私 戦争も終わらせられないし 社会課題の解決もできないし 人の命も救えない マッチングアプリでさっさと出会って、 子どもでも産めばいいのだろうか しかし、こんな遺伝子のこしたとて 無価値よね 困った 費用対効果で言うと、 人類にとって全く無価値な私 未来のためには消えて無くなった方がいいのではないかという私 それは優生思想的な、おぞましさではなくて、
あなたは金曜の夜中2時に来た いや、正確にはもう土曜だった 仕事が終わらなくて飛行機の時間をずらして、 その飛行機が遅れて、 終電に間に合わなくて、 タクシーに乗ってきた じぶんは悪くないって、 言いたいみたいにそう言った 土曜は昼過ぎまで寝ていたあなたをどうにか起こして、 朝ごはん兼、昼ご飯を口に放り込んで、 大家さんにあいさつに行った 今時じゃない、なんて不機嫌なあなたを引きずっていった 約束しているのと言うと、なんだかんだ律儀についてきてくれるあなたのそういうと
あたしを彼女にしてくれたら、 あなたにシワのついた服なんて着せないのに あたしをお嫁さんにしてくれたら、 あなたにコンビニ弁当なんて食べさせないのに ねえ あたしを恋人にしてくれたら、 毎日一緒にラーメンを食べに行ってあげるのに 家系だって、ジロー系だって、背脂にんにくマシだって、付き合ってあげるのに あたしを奥さんにしてくれたら、 浮気だって許すのに 風邪みたいなものでしょう? 同じお墓に入れればいいのよそれで 近いかな 重いかな ウザいかな あたしにシワが増
ぼくは恐怖にまみれてる 今日も恐怖にまみれてる 君は5年も前のメッセージの、 スクショをまだ持ってたりするからさ 魚拓のように 鬼の首をとったように 遺品のごとく 後生大事にするからさ 推敲しないとメッセージの一つも送れやしない おいそれと既読もつけられやしない ぼくは恐怖にまみれてる 今日も恐怖にまみれてる つらいことも苦しいことも悲しいことも 最近どんどん減ってきた でも怖いことだけは、 どんどんどんどん増えていく 君とのさよならが、なにより一番怖いんだ
君と、お揃いだったらいいのに 君が満腹のとき、僕が空腹だと、 申し訳なくなる 逆だったら、 胃を四次元ポケットみたいにするのに あとで気持ち悪くなるかもしれないけど 君が疲れてるとき、僕が元気だと、 申し訳なくなる 逆だったら、 空元気でもがんばるのに あとで居眠りをしちゃうかもしれないけど 君がつらいとき、僕が楽しいと、 申し訳なくなる 逆だったら、 どんなことも乗り越えられる勇気が湧いてくるのに あとでひとりで泣いてるかもしれないけど 君さえいたら、 つまん
君の声は僕にとって、神様の声 天啓をください 終わりのない暗い夜を照らす 星々の輝きによく似た、神様の肉声 教会のパイプオルガンのように 無限の祝福を響かせて 君の言葉は僕にとって、神様の言葉 天啓をください 迷える子羊を教え導く 世界中でベストセラー間違い無しの名言集 黄金の言葉たちが 永遠の後悔に終止符を打つ お願いです もっとあなたの声を聴かせてください 天啓をください
夜九時半に、連絡が来る 「飲み会になった」って 私は、夕ご飯を流しにぶち込めるほど バカな女じゃないけれど そういう日に限って、 お刺身を買ってきたり 大きくて色が綺麗な方を、 あなたに取って置いてたり そういう日に限って、 あなたが好きで、私が好きじゃない、 サーモンが入っているのを選んだり そういう日に限って、 とても美味しそうにぱりっと鶏肉が焼けたり 分かってる お刺身は私が今日二人分食べればいいし 鶏肉は冷蔵庫に入れて明日食べればいいって あなたの妻ですも
数年ぶりに電話してみたら、 結婚してて、 後ろで赤ちゃんの泣き声が聞こえる そんな、そんなエンディングは とてもイヤだとおもったので 決死の思いで、告白した 30まで、いい人いなかったら、 試しに付き合ってみませんか?って 彼女は言った 30まで待てないので、付き合ってください って
「犬が好き」 彼女は言う 「僕は猫派なんだ、知ってると思うけど」 僕は答える 「君は犬みたいだね」 彼女は聞いてないみたいに続ける 発車のベルが鳴って、 僕は途端にパブロフさん家に居候する 「連絡、まってる」 淋しさに負けて、僕は忠犬のごとく言う ほんとうはいつだって 猫のように生きていたいのに 芸の一つもできない僕を、 駄犬と罵りもしないで、 「またね」と彼女はヒールを鳴らす
あなたは、ブルーオーシャン 我ながら、見る目があったと思うんだ そう言ったら、あなたは レッドオーシャンになれるように がんばろうと思うよ、って いつもののんびりした口調で そう言ってくれた いいの あなたは そのままで わたしだけのブルーオーシャン
男と2人でいて トイレに行く時に スマホを置いていく君 ぜつめつきぐしゅ 夜も更けてるのに 終電の時間もろくに調べない君 ぜつめつきぐしゅ わざとやってるのかな? いや、たぶん違う きっと君のスマホは、 君の誕生日なんかじゃ開かない ましてや 彼氏の誕生日なんかじゃ開かない 終電の時間は正確に記憶されていて、 脳内では緻密なタイムアタックをしてるんだ 嘘をつく嘘つき 君は、ぜつめつきぐしゅ
そばにきてほしい ぼくの針の内側まで かきわけて 血を流して ここまできてほしい あなたの体温 あなたの怠慢 あなたの欺瞞 教えてほしい 魂がつめたいんだ 針が獲物を求めてるんだ あたたかい血が欲しい 誰でもいいからこのジレンマを いっしょに抱えて 生きて欲しい
ライブの時だけ三次元になる アイドルみたい 三日間現実だったあなたがまた、 スマホの中の人に戻っていく 触れないし、匂いもない 残ったのは 遺品みたいな、パジャマだけ 匂いはあるから、いんだけどね そっと、自分の腕を撫ぜる 隙さえあれば、あなたの腕に触れていたから 致し方なく、眼前の腕を撫ぜる
冷蔵庫に、 自分のしらないものが入ってるワクワク感 じぶんで買ったデザートと、 同居人が買ったデザートのわくわく感は 全然ちがうとおもう 朝起きて、低血圧なので、 まずしばらく床でねむる でも、あなたは許してくれる 最初の頃は動物みたいだなんて言って、 写真を撮ったりしてたけど バイバイを言わなくなった おかえりを言うようになった テレビをあまり見なくなった 代わりによく、 掃除をするようになった 風邪になったら、 いつもよりあなたが優しい
ちょっと高級なマカロンを買った フランボワーズとピスタチオ これが私のお気に入り あなたはキャラメルと、 季節限定の和栗を選んだ 我が彼氏ながら良い趣味しておる ちょっと茶色いけど 4つのマカロンは ぜんぶはんぶんこした あんのじょう粉々になったけど、 フランボワーズはすばらしかった 我ながら良いセンスしておる 次に和栗を食べたけれど、 これはちょっとイマイチだった 苦いかんじがした あなたも普通と言っていた 続いて、キャラメルを食べたら、 和栗の味がした あな
『短くていいから、返事してよ』 「飲み会の時にスマホいじってるやつ嫌いなんだよ」 『返事くれなくていいから、既読だけはつけてよ』 「既読つけたら、返事するの忘れるんだよ」 『既読をつけたら、忘れちゃうの?』 「ああ、タスク管理ってそういうものだろ」 「タスクなの?」 「……ごめん」