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しろいカラス

「あなたは、えらばれたカラスなのよ。」


ヒナのときからずっと母さんにいわれてきたことば。


ぼくはカラス。

だけど、ぼくはしろい。

はねがまっしろだ。

こんなカラス、きょうだいのなかにも、きんじょにもいない。

みんな、くろい。

ぼくだけしろい。


「おまえはカラスか? だったら、どうしてしろいんだ? 」


ぼくがしりたいよ。

みんな、ぼくをわらう。

みんな、ぼくがすきじゃないみたい。

エサをよこどりされるし、りゆうもなくクチバシでツツかれる。


あるひ、母さんがいった。


「あなたはここからでていきなさい。

ここでしろいカラスがいきていくのはたいへんでしょう。

あなたのいるばしょをさがしなさい。

だいじょうぶ。

あなたはえらばれたカラスなのよ。」


ぼくはとびたった。

こわかったけど、ここにいるよりも、いくらかいいとおもった。


ここからとおくにいかないと。

でも、ぼくはめだつみたいで、ほかのトリがやってきて、バカにする。

ツツいてくるやつもいる。


カラスはもっとバカにしてくる。

おなじカラスだとおもわれたくないみたい。


おおきなトリがやってきて、するどいつめでガシッとつかまれそうになったとき、もうダメかとおもった。

むちゅうでもりのなかににげこんだら、ついてこれなかったみたい。

でも、また、あったらどうしょう。


おおきなトリにあわないようにひくいところをとぶ。

ひとのいえのまえをとんだとき、コトリのこえがきこえた。

よくみてみるといえのまどにかかっているカゴのなかにコトリがいた。


「なんで、こんなところにはいっているの? 」

「えっ? ああ、トリカゴのことかい? 」

「トリカゴ? どうやってはいったの? 」

「ひとがいれてくれたにきまってるじゃないか。」

「ぼくもいれてくれないかなー? 」

「ダメダメ、ぼくはひとにかわれてるからはいってるんだよ。きみはちがうだろう。」

「うん、ちがう。」

「だったら、あきらめたほうがいい。」


こんなカゴがあったら、だれにもツツかれなくてもいいのになー。


ぼくはコトリとおわかれし、そらへともどる。


するとどこかできいたことのあるはねのおとがした。

ぼくをおそったおおきなトリがそこにいた。


にげるにげるにげる。


おおきなトリはスピードをあげておいかけてきた。

にげこむところはないかとひっしでさがす。

むちゅうでにげてるうちに、こうえんにでてきた。

つかまりそうになったとき、ジャングルジムにとびこんだ。

おおきなトリははねをジャングルジムにうちつけたらしく、よわよわしいこえをだしながらどこかへヨタヨタととんでいった。


ここはいい。

ぼくはギリギリのおおきさではいれる。

おおきなトリははいれない。

そうだ、このジャングルジムをぼくのトリカゴにしょう。

ずっとそこにすむことにした。

たまにエサをとりにいくことはあっても、すぐにジャングルジムにもどった。


ほかのカラスたちはかえっていくけど、ぼくはこのジャングルジムのトリカゴにずっといる。


ここにすんでいるうちにひとがやってくるようになった。

さっきまでひとがほとんどいないこうえんだったのに、子どもたちがやってくるようになった。


「これ、しろいけどカラスかな? 」

「カラスはくろいのよ。」

だからたまに

「カー」

ってないてあげることにした。

「あっ、やっぱりカラスだ。」

いつもあいてにされなかったぼくをみるために、まいにちあつまってくる。


まいにちまいにち、子どもたちはどんどんふえていった。


あるひ、おとなたちがきた。

てにアミをもっている。

ぼくをつかまえるつもりだろう。

でも、ここはぼくのトリカゴだ。

つかまるわけがない。

ぎゃくにアミをもつてをツツいてやった。

いたがってるいたがってる。


どうしょうもなくなったらしくひとりのおとなが、ぼくにいった。


「ここは子どもたちのあそぶばしょだよ。

子どもたちにかえしてあげてくれないか?

きみにはもっといいトリカゴをよういしてあげよう。」


ぼくはいわれたとおり、ジャングルジムをでていった。

子どもたちはぼくをみにきていたんじゃなくて、ジャングルジムであそびたかっただけかもしれないし。


ぼくのあたらしいウチは、どうぶつえんだった。

ぼくのためにあたらしいトリカゴをよういしてくれていた。

ひろくてじゅうぶんにとべる。

エサももってきてくれるようになった。


子どもたちがぼくをみにくる。

おどろいている。

めがかがやいてる。

いままでこんなめでみられたことがなかったなー。


しろいから、いじめられたけど、

しろいから、じぶんのトリカゴをてにいれることができた。


「あなたは、えらばれたカラスなのよ。」


母さんのこえをおもいだした。

おしまい

                        え あぼともこ

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