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不健康なバターが不健康になった日

6️⃣  2016年4月

▶︎Previously on Majimena Butter前回までのお話

それでもやっぱり、上手くいかなかった。
ジョンと私は、それからも連絡は取り合っていたが、何の進展はなかった。

縮まったと思ったジョンとの距離は、全くこれまでと変わっていなかった。
「ジョンに期待しすぎて、傷つきたくない」と思い、マッチングアプリでデート相手まで見つけた。
でも、相手はジョンじゃない。全然満たされなかった。

ジョンは、「会いに行くよ」と言ってくれたし、私の勤務地へのフライトを希望してくれたらしいが、結局4ヶ月のうちに会えたのは1度だけだった。
パイロットだから、仕方がない…そう思うようにした。
悔しかったが、最後はしびれを切らした私が、彼に会いに行くことにした。

その時彼は、アメリカでヘルニアの手術をした後だと言っていた。
そして、手術時の映像があるから一緒に見ようと言われた。
うげーと思いながらも、彼のノートパソコンで、その映像を一緒に見ていた。アメリカは訴訟が多いから、もしものためにこうやって映像で残しておくのだろう。
彼は私に、映像内で何が行われているのかを説明してくれた。

それから、2人で映画を見ながら、彼は私の腕の中で眠りに落ちた。
その感覚は、何ものにも変え難いものだった。

この日を境に、彼の様子がおかしくなった。

ある日、彼は「なんでもないと思うけど、足が思うように動かない」と言っていた。
トライアスロンを何度もやってきた、アクティブな彼に限って、何ともないだろう。
私はただの疲労だろうと、勝手に思っていた。

それからも、おかしなことが続いた。
今まで仕事でしか、私の勤務地に来たことがなかったのに、今度はわざわざ休みの日に、私の勤務地まで遊びに来ると言い出したのだ。それも一晩だけ。

それを聞いた時は、「彼が、やっとわたしに振り向いてくれた♡」と思っていて喜んだのだが、飛行機から降り立った彼の姿を見て、驚いた。
細くて長い足を引きずって、本当にゆっくりとしか歩けないようだった。

彼は、原因不明の病にかかってしまったのだった。

彼は、私のことが好きだったわけではなく、ただ病気に対面するため、誰でもいいからそばにいて欲しかったのだ。
そんなこと彼は言わないけど、そうとしか思えない。でなきゃ、わざわざ私に会いにきたりしないはずだ。

でも、それでも良かった。
彼が私を必要としてくれるなら、理由なんてどうでも良かった。

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