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『おんりょう』乱Ⅲ


平安のナイスガイズ

登場人物
  平将門
  新三
  菅原道真
  公太
  大鍛治師、刀鍛冶、弓師
  平貞盛
  祈祷師
  半六 長七
  しだら神神官い、ろ
  軽業師、農民い、ろ
  藤原忠平

第一幕
一場 京 三条河原 晒し首

●舞台下手に晒し首を乗せる台が置いてあり、
川の流れる音と風で草が鳴る音ばかり。
突如、稲光と雷鳴がなり、生首が下からのライトで浮かび上がる。
おどろおどろしい雰囲気の中、生首の目ががっと開く。眉間には矢。
農民と軽業師が目が開いたのに気づき近づく。

将門  「まだか、まだこぬか。」
農民い 「(恐る恐る近ずき、軽業師に)まだ喋ってやがる。」
軽業師 「(回転しながら面白そうに近ずいてきて)首を斬られてひと月。京三条河原で晒されて五日生きてるとはね、こりゃすげえや。おいらたちの手品でもこうはいかねえ。」
将門  「すでにひと月なりや。余の身体は今坂東の地で腐り果てようとしているのか。」
農民い 「というか、もう焼かれるか、埋められてもうないのじゃないかな。諦めなさった方が
よろしいかと。」
将門  「おのれ、朝廷の腐れ貴族どもめ。京の貴族どもの差し出した餌に釣られて仲間である我ら坂東武者を裏切った藤太、貞盛め、この怨み、死んでもなお、この将門忘れぬ。決して忘れはせぬぞ。末代まで祟ってやる。そして俺が救わんとして立ち上がったのもそもそもは哀れな東国の民のため。しかるに俺を見捨てた。この怨み、この国が亡び去るまで忘れぬ。いや、俺がこの怨みの力で滅ぼし尽くしてくれるわ。」
軽業師 「首になっても威勢のいいこった。さすがは朝廷に弓をひいた反逆者だね。でも諦めた方がいいや、顔色悪いぜ。」
将門  「それよりも許せぬのは、菅原道真。よくもわしをたばかりおった。」
農民い 「え?菅公様が、なぜ。」
軽業師 「咎無くして太宰府に配流され、それをひどくお怨みになられた方、不幸なお方をそんな悪し様に言えばばちがあたるぜ。」
将門  「そうよ。この世が憎いと、いって俺をそそのかして乱を起こさせながら、京にきてみれば奴めは天神と呼ばれ崇められ、天満宮に祀られ学問の神と尊ばれておる。許せん。あのものがわしらの前に忽然と現れたのじゃ。ううむ。許せん。体が俺を迎えに来ぬのなら、俺からいってやる。まま、むむ、ぐぐ、(力んでる様子)」
二人  「あ、浮いた。」
将門「浮いたか。ふふふ、我ながら怨みの力は恐ろしいものよの。いざ!」
二人  「(腰を抜かして驚く)と、飛んだ。」

●将門の首はゆるゆると浮かび上がったあと、東を探して舞台を迷った後、東を目指して花道を一直線へ東国へ飛び去って行く。

二場
●坂東へ 首が空を飛んでいる背景は上空からの空撮が飛び去っていく。

将門(声)「 その年、承平七年冬。霊山富士が怒った。天高く炎を挙げ莫大な火山灰を天空に吹き上げて、タウ用の光を遮った。俺はその頃叔父の国香、従兄弟の貞盛と大げんか、出入りの真っ最中だった。富士の噴煙の下で民、百姓がどんな苦しみを味わっているかなど考え用もない大愚か者だった。」

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