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『ピンチ!奥殿大さわぎ』


登場人物

  海保忠典
  伊与田邦介(伊与田愚)
  鉄之進
  鉛造 
  新平
  古太
  お里
  大庄屋
  旦那
  長老
  村人の声(複数人)


シーン① ノノコの部屋(交流の日)

●待ちにまった交流の日。奥殿小学校のホスト家庭のノノコの家に、大浜小学校のマコがゲストとしてがやってくる。窓の外をそわそわとみているノノコ。自動車のつく音。

ノノコ 「あっ!きた!」

●飛び上がる。玄関ドアの開く音、ノノコが待ちきれずソワソワ。扉が開き、ノノコ母とマコが入ってくる。ノノコとマコは互いの全身を確認する。

マコ  「あ、ホクロ見つけた!ノノコだ!」

●マコの満面の笑顔。

ノノコ 「あ、片えくぼ!マコだ!」
●確認しあった二人は大げさに両手
を広げながら互いにハグする。

ノノコ 「待っていたよ~マコ!」
マコ  「会いたかったよ~ノノコ!」

●ノノコ母、戻ってきてお菓子とジ
ュースをテーブルに置く。

ノノコ母「マコちゃん、ノノコったらそれはそれは会えるのを楽しみにして、この一週間ご飯が喉を通らなかったのよ。ね、ノノコ。」
マコ  「え?じゃあ、飲まず食わず?」
ノノコ母「ふふふ、おかわりを一回しかできなかったくらい。」
マコ  「え、じゃあ二杯も食べたのに?いつもはどれくらい食べるの?」
ノノコ 「(お腹をぽんと叩きつつ)いつも五杯は食べるわ。」
ノノコ母「マコちゃん、今日はバスや飛行機に乗り継いで・・」
ノノコ 「電車、初めてでしょ?」
マコ  「うん(うなずく)」
ノノコ母「そうだったわね。疲れているでしょ。ゆっくりお休みなさいね。ノノコあまりおしゃべりだめよ。寝かせてあげなさいね。」

●そう言いながら退場。
ノノコとマコはお母さんの忠告をも
のともせずに、お菓子とジュースに飛びつき、手に手に話しだす。

ノノコ 「石垣島は電車ないんだよね。」
マコ  「でも、タクシーやバスがあるさ。」
ノノコ 「雪は見たことある?」
マコ  「なーい。そういうノノコは生きている珊瑚見たことあるの?」
ノノコ 「生きてるサンゴって白い石みたいなやつでしょ?」
マコ  「サンゴってサンゴ虫という生き物なんだよ。」
ノノコ 「見たことなーい。見たーい。」

●次第に声が遠のいてゆき、ナレーションが入る。

(声) 「ここは愛知県岡崎市の山間地にある奥殿学区。岡崎市ではありますが、江戸時代は岡崎藩ではなく、奧殿藩というひとつの国の首都でした。ノノコは奥殿にある奥殿小学校の六年生。マコは沖縄の石垣島の大浜小学校の六年生。今日は待ちにまった奥殿と大浜の交流会。大浜小学校の代表六人が奥殿にやってきて交流を深める日。石垣島の大浜小学校は第二次世界大戦の頃、海軍飛行場の駐屯地として使われていました。戦争が終わって大浜に赴任していた奥殿学区の兵隊さんが大浜小学校へ感謝の気持ちとして図書を送ったことから奥殿小と大浜小の交流が始まりました。岡崎市と石垣市は今では親善都市。仲の良い町同士となるきっかけとなりました。」

●声は消えて、ノノコとマコの話し声が聞こえてくる。

マコ  「でで、どの子どの子?明日の交流会で会える?」
ノノコ 「ん?(もったいぶって)なんのこと?」
マコ  「じらすなよ。ノノコの推しメンのことよ。クラスの子でしょ?中尾君か星野君だと私はにらんでいるんだけどなあ。」
ノノコ 「ああ、あのことね(さらにじらすように、からかうように続ける)ふうん、中尾、星野ね、なるほど、マコはそういう好みなのかあ。」
マコ  「そういうわけじゃないけどさあ。」
ノノコ 「そのことなら、奥殿ではあるけどクラスの子じゃないよ。」
マコ  「え?クラスの子じゃない?じゃあ下級生?五年の子?」
ノノコ 「下級生?違うよ。」
マコ  「あ、上級の子か。卒業して中学に行っているわけね。毎日会えなくてさみしいでしょ。」
ノノコ 「うん、確かに上の子だし、毎日会えなくてさみしいのは確かだけど。毎日想っているのよ、その人のこと。」
マコ  「きゃあー。人って(笑う)。どんな人?会える?話聞かせて。」
ノノコ 「仕方ないなあ。でも、ちゃんと聞ける?」
マコ  「聞ける、聞けるさあ。(興味津々に前のめりの姿勢になる。)」
ノノコ 「じゃあ教えてあげる。

●少し間を取って、急に立ち上がり、真面目な声で。マコはノノコの様変わりにびっくりして腰が抜けたみたいになる。

ノノコ 「時は元治元年夏七月十一日。今を去ること一五九年前。ところは奥殿藩奥殿陣屋大手門門前、巴川河畔。」

●ノノコの口上で舞台は暗転し、上手から江戸時代の二人の身なりの良い侍が歩いて登場。一人は壮年。もう一人は初老。さらに護衛らしき若侍二人が登場する。

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