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【K-POP探訪】第3回・TXT ノート端の青春音楽

さて、第3回になりました、K-POP探訪。

お馴染みの注意書きを。

・私は全くをもって音楽には詳しくありません。好きな曲について思ったことを書きます。
・私はRed Velvet培養のK-POPアイドルファンです。それもあってか、世界観のある曲や世界観の一貫したアルバムが好きです。
・音楽はネオシティポップなどのニュートロポップ、ニュージャックスイングなどのR&Bの雰囲気がある曲が好みだと自負しています。そういう曲を褒める傾向にあります。
・記事中で取り上げたアーティスト以外の曲の話もめちゃします。

今回はTOMORROW X TOGETHER!

TOMORROW X TOGETHER、通称TXTは2019年デビューの比較的新人グループ。事務所はBig Hit Entertainment。BTSと同事務所で、弟分という触れ込みでデビューしました。
日本での活動にも積極的で、最近は音楽番組でもよくその姿を見ることができ、人気も右肩上がり。


彼らの話をする時に避けては通れないこと

彼らの音楽の話をする時、どうしても話してしまいたくなること、それはBTSのことです。

私(というかみんな)、他のグループと比較するのはなるべく避けたいことだと思います。私は音楽はナンバーワンよりオンリーワンだと思っているし、「この曲もいい」っていう文脈以外で他のグループのことを持ち出したくないのですが。
やはりビッグヒットという会社を長年BTSだけが切り盛りしていたこと、そしてBTSが世界的なグループになったことを考えると、彼らの存在はTXTにとって、どうしても大きすぎるように感じます。


鮮烈なデビュー、生々しいほど爽やかな青春

EP、「The Dream Chapter: STAR」で、彼らは全世界に注目されデビューを果たしました。

表題曲『CROWN』。「CROWN」を表すモールス信号から始まる、吹き抜けるように若々しいポップスです。

韓国題名は『ある日、頭からツノが生えた』で、後にリリースされる日本語バージョンでも同様の題名が採用されています。歌詞も題名にあるように、頭からツノが生えてきた痛みと青年期に誰もが持つ心の苦しみを重ねて、それでも前向きに、爽やかに歌い上げるものです。
ツノで表す青春って、非常に詩的だけれど生々しい痛みも感じますよね。

2016年公開のFree!という日本のアニメの映画、『ハイ☆スピード!』の主題歌が『Aching Horns』と言うのですが、これも同じように、青年期の痛みをツノに例えたものですね。
『ハイ☆スピード!』は水泳部中学生の悩みと成長を描いた作品です。

ツノが生えるって、永久歯が生えてくるとか、第二次性徴とか、そういうものと一緒で大人になるための苦しみなんですよね。『CROWN』はその痛みと、それと共にやってくる成長という栄光を表している曲だと思います。

『CROWN』自体が非常に完成度が高い曲だと思いますが、このアルバムの旨味は『CROWN』に留まりません。

一曲目、『Blue Orangeade』は『CROWN』よりもHIPHOPテイストが強めです。初々しい恋愛をブルーオレンジエイド(青い色をしたオレンジソーダ)の歪さに重ねて歌った曲。非常にいいです。みんな聴いて欲しい。

それから、K-POPファンとしては、『Blue Orangeade』と言われてしまうとこの辺を想起せずにはいられません。

三者三様のラブソングへの取り組み方。面白いですね。

更に三曲目『Our Summer』。

詩的な歌詞の中には「終わらない期末考査」なんて言う、超・むき出しの青春が出てきてウギャー!!!となってしまいます。しかもセルフィービデオなんて付けられちゃった終いには、ウギャー!!!で倒れ込んでしまうよね。

そして4曲目『Cat & Dog』。

初めてMVを観た時は、「こんな"モロ"なことやってるんだ...」と思いました。最高。サービス精神の塊ですね。


ラスト5曲目、『Nap of a star』。

鮮烈なデビューアルバムのトリにふさわしいバラード曲です。
そしてここまで、デビューアルバムの曲全てに何かしらのビデオが作られていることに驚きます。非常に大切に、丁寧に作られたアルバムだと思います。


デビューアルバムから香る「Big Hitの香り」

『CROWN』を初めて聴いた時の第一印象は、「Big Hitっぽい」でした。

どの曲も生身の青春を書いたような痛みと喜びがあるのに、その音楽はどれをとってもBig Hitという、事務所特有の音がします。「この事務所っぽい」ってすごく言語化しにくい。でもBig Hitに関しては、それがいいのか悪いのかはともかく、「Big Hitっぽい」はすなわち「BTSっぽい」を意味します。この理由は前述の通り。Big HitはBTS単独で大きくしてきた事務所だからです。

『Cat & Dog』なんて絶対BTSはやらないだろうテーマですがその音楽は初期のBTSっぽい雰囲気があります。『DOPE』とか『FIRE』とかとマッシュアップできそう。


青春を描き続ける

その後も彼らは突き抜けるような爽やかなメロディーと共に青春を歌い続けてきました。

時にはハリーポッターの世界観をイメージした楽曲で、これも直喩的に青春を表現。

英語タイトルは 『Run Away』ですが、日本語タイトルは『9と4分の3番線で君を待つ』です。

『Run Away』の収録されるアルバム、「The Dream Chapter: MAGIC」。

タイトル通り、魔法にフィーチャーした作品です。
CROWNもそうですが、TXTは生々しい青春を歌っていますがその世界観はいつでも異世界の美しさがある。そこもBig Hitらしさ、と言ったところか。

収録曲『Roller Coaster』は、ニュートロ風のメロウな雰囲気がありながら、Big Hitらしい透き通り溶けるような歌い方が存分に発揮された曲です。

さらに「 The Dream Chapter: ETERNITY」。

このアルバムは特にBig Hitっぽい、壮大なバックサウンドを感じさせる曲が多く並びます。

『Drama』はアルバムの中で若干異質なアップテンポソング。日本語バージョンのイメージが強い曲です。

MVが非常に良くて、日本のアニメのような衣装とアートワークに、思春期の友情の熱さとインスタントさをどちらもちゃんと表現したような繊細な雰囲気が刺さります。
Red Velvetの雰囲気感じちゃうよね。ミンヒジン関わってるのかな…。


そして、ここまでのアルバムは全て「The Dream Chapter」という一続きの作品だったことがわかります。
2020年、この作品群は一度終わり、TXTは更なる進化を遂げます。

minisode1 : Blue Hour

2020年にリリースされたアルバム「minisode1 : Blue Hour」。

表題曲の『Blue Hour』。今までと同じように青春の美しさと異世界の美しさが共存します。


そしてこのアルバムに収録された『We Lost The Summer』。

2020年、マスク姿のサムネイル。失った夏。
彼らが歌うのはほかでもない、「コロナ禍せいでめちゃくちゃになった自分たちの二度と来ない夏」です。

何もすることが出来ないもどかしさを歌った悲痛な歌詞、僕らの夏を返してよ、という声が聞こえてくるようです。

同時期、BTSは同じようにコロナ禍をテーマとしたのであろう曲をリリースしました。

「Life Goes On」。あの日から全ては止まてしまった、苦しい今。でも手をとりあって未来へ走ろう。人生は続くから。

BTSが歌うのは、コロナ禍へのエールです。BTSは音楽でアジアを、さらに世界を照らしてきた、そんな彼らだからこその曲になっています。

それとは対照的に、TXTは「僕らは夏を失った」と歌います。その悲痛な叫びは、BTSとは全く違った角度で、でもとても強く、深く、私たちの胸に届きます。
それは彼らが「生身の青春」を歌い続けてきたから。それができるのが彼らだからです。
『We Lost The Summer』のMVには、そんな彼らだからこそできるような表現もあります。

新型のiPhoneに映る自分。

TikTok動画を撮っているかのようなシーン。

Web会議システムのような編集。

TikTokなどの動画サイトで流行した、スマートフォンを鏡の前で落として場面転換する動画。

若者の間で流行した、少女漫画フィルターのような表現。
さらに、要所要所である4:3の画面構成が、「4:3の青春」を歩んできた世代にすら刺さらせようとしているようにも感じます。
これらをやって面白にならない、ちゃんと表現になるのは、紛れもなく彼らの持ち味です。

彼らの持ち味、それはこのような、「今、青春を生々しく表現できること」だけではありません。

それは『Blue Hour』が歌えること。
Blue Hourも青春の青臭さがある曲です。しかし、Big Hitの音だから、BTSのような音だからこそ、何年先も歌える曲に仕上がっていると思います。
3年後の、5年後の、20年後の『Blue Hour』は、どんな曲になっている?そう思わせてくれるような、未来まで見せてくれるようなグループです。


ノートの端の青春音楽

彼らのタイトル曲の題名から分かるように、彼らの音楽はとても詩的です。
それはまるで、中学時代にノートの端に書いた書いたポエムのよう。
中学時代のポエムなんて、私達は「黒歴史」って言いがちですが、そこには過ごした青春時代の感性が余すことなくたっぷりと含まれています。

TXTの音楽は、そんな音楽です。
ノートの端に書いたポエムを読み返すように、痛みも苦しみも喜びも、全てが聴く私たちの耳に飛び込んでくる。

第一回で取り上げたSEVENTEENも青春を歌いますが、彼らの青春は「そこに『あった』青春」です。

まだ取り上げていないですが(いつか絶対書きたい)NCT DREAMも青春音楽ですが、彼らの青春は「どこにもない青春」です。

でもTXTの歌う青春は、確かにそこにあります。目に見えるように、聴こえるように、存在しています。
それは彼らのステージにも現れています。何かに囚われるような苦しみと、歌う喜びが共存するようなステージを彼らは作ります。

そして、そんな音楽は、彼らにしかできません。BTSにできない、だけでなく、K-POP界でできるのは彼らだけだと思う。


私が結局のところ言いたいこと。それは、BTSと言う存在があろうとなかろうと、TXTの音楽の未来は明るく光り輝くものだ、ということです。



私がスクショするとびっくりするくらいスビンが半目になるの何…?推しなのに…ごめんねスビンちゃん…。

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