また春、僕ら嫌って

開花予想が外れた 嬉しそうに君は笑ってた
蕾をすり潰せば春が香る ここで閉じ込めて置きたい
隙間風が吹き込んだ 君は目を細めた
ありがちな別れが僕らを襲う 僕は忘れ物をする

歪んだ顔を二回見た 僕も真似して嫌った
催花雨に煙る嫌いな町が 少し欲しくなった
枝垂の君は頁を捲る 初春はまだ寒い
好きなものを手放していく 桜になり損ねた

君の嫌った春 花言葉を一枚、はらり降らせて
散れと願う間も 君は哀しく笑う
桃色を映し出す 君の眼に残花
今、ここに春を置き去りにして


紙の香り 薄汚れた黒板 皺の寄った制服 君の囁く声
桜花に汚れゆく 春なんていらなかった
在り来たりな言葉は流るる 知らないふりをする
何かを想い遺そう 言い訳をしよう

桜を呑もう ここに居残ろう
春風が吹く 枝垂はゆらり揺れ
君の背中で別れが香った 三回目は見えぬまま
変われなかった僕らがいた 春になり損ねた

僕の嫌った春 花言葉をまた一枚、はらり降らせて
散れと祈る間に 君はまた憂いだ
桃色に染まる君 瞳に映し出すは余花
今、ここで春に取り残されて


春が君を連れ去る 今更涙は滲む
桜が奪い去る 僕らの当たり前が零れてる
花弁がはらり降る 始まりを連れてくる
君は笑った 今、ここで開く花を


僕らの嫌った春 花言葉を一枚、はらり降らせて
狂い咲けと叫ぶ間も 君は哀しく泣く
花弁を手にした君 涙に映し出す桃色
今、僕ら春に取り残されて

君の嫌った春 花言葉をまた一枚、はらり降らせて
散るなと叫ぶ間に 君は泣きながら笑う
小さく眼に映る桃色 きっと君は残花
今、ここに春を置き去りにして

今、ここで春を置き去りにして
今、僕らここに取り残されて

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