君を殺す歌がうたいたい

言葉を育てる 君だけを傷付ける葉を
その腐った傷口に一つ 僕の呪いを寄生させて
瘡蓋なんて付けさせるかよ 死ぬまで抱えていればいい
いつか育った呪いが 全てを蝕むその日まで

君に穴を開けたい 直径十五センチの左穴
多分永遠に埋められないだろう 歪な代用品を探す
この痛みが分かってたまるか この痛みは僕だけのものだ
吐き出した言の葉は この日を思い出させるから

君に一つでいい 傷を付けたかった
ふと触れたとき疼いてしまうような そんな優しい傷を
僕にはあるんだ 君に殺された心ってやつが
僕を殺した君の歌が まだ耳元で言葉を囁いている
いつかまた会えた時、君を殺せますように


毒を小さく盛る 君だけを苦しめる劇薬
致死量の恋に侵されればいい そっと甘く眠れるような
また毒を盛る 弾にありったけの忘却を込めてみる
いつかこの毒が 君を貫くその日まで

君の頭に埋め込みたい 直径二ミリの僕の話
小さな例え話をした時 どこかで蟠りになる
この虚しさが分かってたまるか 満たされないでいたい
表面張力でゆらゆらと 美しいものだけが浮いていた

君に一瞬でいい 苦しんで欲しかった
気泡のように軽く 一番上まで来てほしい
僕にはあるんだ 君が作り出した心ってやつが
僕を殺した君の歌は 深いところで膿になっている
いつかまた会えた時、君を殺せますように


死にぞこないの僕の歌だけが どこかで弧を描いている
君に傷を付けたかった 君に苦しんで欲しかった
僕だけうなされているのが許せなかった 遠いところで死んで欲しかった
掬ったとて隙間から漏れ出るような たかがそれくらいでいい
君を殺す歌がうたいたい


君にもう一度でいい 微笑んで欲しかった
僕を殺すような微笑みで 君を忘れられない歌を
君には多分ないんだ 僕が遺したかったものは何も
僕を殺した君の歌みたいに そうだ本当はただ
君を殺す歌が歌いたかった

忘れないなら 離れないなら
君が覚えていないなら 君が知らないままなら
僕を殺す君の歌 それさえあればよかったんだ
いつかまた会えた時、君に殺されますように

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