二文字

最後の日 書き殴った感情が今も黒板に残ってる気がする
そうか僕は あの場所に何もかもを置いてきたんだね


壊れた古時計 針を追い求めるゾンビ
彼には何が見えてるんだろう 針を動かしたところで時は進まない
机に彫られたあの告白一線も どうせ誰かの残した寂しさなんでしょ
その痛みは慰めに足りえましたか

気付けなかった僕が悪いの? 最初から分かっていたはずなのに
終わると知っていたとして 失うと分かっていたとして 僕は変わろうとしましたか

始まった事にすら気付けないままで 僕らはただ無自覚に時間を殺していた 寝過ぎた後のような甘い痛みに浸っていた
あの日々の残滓がしがみついて離れない 手放さなきゃいけないと知ったのは 手放した後の話


白いチョークを握った日 感情を書き殴った最後の日 ようやく僕は分かったんだ 何も終わらせられやしなかったんだ
扇風機に揺られる 貴女の文字を見つけました 僕が追いかけていた貴女でした まだ逸らす事はしないけど

忘れたものが多すぎた 失くしたものが多すぎた きっと迷子だった
チョークをそっと置いたあの瞬間 僕の中には何も残っていなかった 無性に泣きたくなったんだ

終わった事にすら気付けないで だから僕のそれはまだ終わり続けていて
消えて欲しいと思うほど大人になんて成れなくて
やり直したい事があるわけでもない ただ甘くも愚直な日々の中で永遠になっていたい 


書き殴った感情は一閃のきらめき 綴り続けた僕の全て
美化した過去に縋って生きてみる 僕はあの部屋で確かに笑えていたんだ


始まった事にすら気が付けないまま 気が付いた時には終わっていた 終わらせる事が出来なかった
始まりの一つを今も追いかけている 届くはずもない幻想を 失う事を恐れ過ぎた僕の我儘だ

あの群青をたった二文字で呼ぶことも嫌ったまま
僕はそれをまだ「青かった」なんて言いたくないんだ

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