君の瘡蓋でいさせてください

いつだって君が選ぶのは まるで違う方法だった
遠回りの末に薄膜を貼る 白い包帯を剥がしていく
泣き止む頃には忘れるけど 雨が降ればふと思い出す
無邪気な顔で君は殺す 笑ってごまかすのだろう

言葉なんかで救われてたまるか 痛々しく傷を残したい
君の痣にすらなれない 守っていた証明もいらない
どちらも忘れられない君は きっと優しい人だから
君にすら覚えられない僕でいい そっと赤を閉じ込める

気付かないでいいよ 傷かない君でいいんだ
邪魔になったなら いつか剥がしていいからさ
癒せないけど 守れないけど 何もできないけど
さよならできる日までいつか 剥がれない瘡蓋になりたい


掻き毟った瞬間に思い出す ここにいた誰かのこと
敏感になり過ぎた僕は 痛みすら忘れたくない
忘れたかった痛みを 忘れるまで包んでいた誰か
まだ零れ落ちるなら いつだってそこにいるから

捨て去る時は君がいい その手で切り捨てて欲しい
そっと触れたとき もういいかと殺されればいい
必要最低限 傍にいさせて欲しいと思うんだ
忘れたくない君に 上書きされる僕でいいから

気付けないままでいいよ 傷けない君でいいんだ
ふと思い出した時 いつでも剥がせばいいからさ
何もできないけど 忘れることもできない僕だけど
思い出せないでいいから 忘れる日までは その日までは
どうか、君の瘡蓋でいさせてください。


傷なんて無い方がいいんだと君は言う
痛いのは怖いって君は泣き叫ぶ
涙を拭うのは僕じゃない

赤色だけじゃない その言葉も心も
全てをそっと庇うような 要らない日まで忘れるような
見向きもされないような そんな瘡蓋がいい


気付けばいいって 傷付けばいいって
痣を見た時 僕を思い出せばいいって
そんな事は言えないから 思えないから
君から痛みを忘れさせるなら それだけでいいんだ

癒せなくていい 守れなくていいんだ
ただ傷口をそっと包み込む そんなゴミでいい
いつか剥がせる時に 痛みを奪い去ってしまうような
思い出せないような、傷けないような、そんなどうしようもない、

君の瘡蓋でいさせてください。

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