指標が朽ちる音を聞きたくない

僕のせいにして欲しい 綺麗な言葉なんて要らなかった
空の音が聞こえた気がした 君にふ塞がれて聞こえなかった音だった
僕にとっては救いだった ただの我儘だけど
左隣がやけに涼しくなった 窓を閉めるのはいつも君で

悲しみも 頁をめくる手付きも 言葉も イヤホンの色も 笑える理由も
全部は君の真似事だったんだよ
君を殺したのが僕だったらいいのになんて
僕はまた君の笑顔を作りたくなる

涙の流れる速さで また歌が歌いたい
ピアノの音のような君にしか歌えない歌
真似事の歩き方で進んだら
君にはきっと追いつけないだろうけど

君が泣くよりもっと早く 僕は夜を迎えたかった
青空の下で君なんか見たくない 月を返して光る君の目元を拭えない
また会えたらその時はなんて言うんだろう
知らないふりをして欲しいのは僕だけかな


全てを君のせいにしているよ まだ終わらせていないんだ
言葉にしなくてよかったと思う 本当に会えないだろうから
雨はまだ止まない 君の背中がまた僕の周りを香る
君じゃなくてもよかったのかもしれないね 僕は笑った

安っぽいラブソングが喉を絡みつく 何も言いたくない
聞き覚えのある歌を ふいに口ずさんでいた
また真似事のコードを抑える 薬指が痛む
君を殺す歌だけを歌っていたかった

さよならの速度で また詩が書きたい
下手くそなギターを鳴らして 透明だと叫びたい
報われない僕らはそれでも
どこか遠くを目指して指差していた

僕が泣くより先に 君は月を見上げていたんだ
灰色に染まった街で拭う涙は 雨に隠されて愛想笑いに上書きされる
君に会えたら次は僕の番だ
救えなかった君に捧げたいものがあったのに


綺麗な言葉なんてどこにもないから 僕らはまだ迷子のままなんだ
信じられるものなんて 君の瞳の奥にしかないから
揺蕩う影はあの日々の残滓 まだ足りない
情けないけど まだ大事にしまっておく事にしたよ


どんな速度で歩けば またその名前を呼べるかな
隣で黒色を叩く君も 二本目を抑える君も また速度を緩めてしまう
どんな大きな音を鳴らしたって 君の涙が落ちる音が反響する
終わらない音楽が欲しかった 君をまだ鳴らしていたかった

許せない事だけが 僕らを追い越していく
諦めた君は笑うかな 僕はまだ笑えそうにない
光じゃなくていい せめて指標にさせて欲しいんだ
どんな速度で歩いたって さよならも涙もまだ歌えないから


空の音を聞き流す 僕は窓を閉める
止んだ雨は桜を散らした 左の瘡蓋はまだ剥がさないでおこう
いつか歌ったあの歌を 君がもう覚えていませんように

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