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【詩】懐かしいことはぜんぶ嘘

ほんとうのことを言うと
ぼくは
昔に比べると
柔らかい草むらのようになったんだ
ただ風に吹かれてザワザワと揺れて
雨が降るとしっとりとする

ぼくは生まれつき小柄で
他のひととは違っていた
だからあの子の少し尖った耳を
齧りたいなんておもうんだろう
罪深いことだ
いまとなっては笑える話だけれどね

いまはひとりで暮らしている
ひとりでテレビを見ながら
お茶を飲んでいると
懐かしいことはぜんぶ嘘だとわかる
昔に比べると
これでもずいぶんよくなったほうだよ

最初の方は違っていた
でも最後の方になると
みんなが歌ったり 踊ったりして
空からは
キラキラと紙吹雪が降っていて
そんなの嫌だとおもっていた

ぼくは約束って苦手だったな
だって約束したことは
覚えていなくてはいけないし
破ったら針を千本飲まされるから
たしかなことは言えないよな
でも覚えてるって約束だったんだ

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