熊野ミツオ

発達ナイスガイ、自称詩人。

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  • ベスト詩集「知らない国」

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まいたけ絵日記

    • 【詩】ビー玉の空

      きょうの空のしたに ひとりでいて 誰にも邪魔されないで 時間の廊下に散らばった ビー玉を見ていた ガラス玉の表面に映るのは 未来ではない ガラス玉の表面に映るのは いまのぼくだ 幼い顔はどこか寂しくて 恥ずかしさからは 逃れられなかった 廊下はひんやりとしていて 薄暗かった 帰っておいで 外国を旅している夢を見た とても幸せな夢だった 毎日がお祭りのようで 幸せって あんな風なことなんだね あしたの空のしたに 誰かといて 雨の匂いがしている 紫色の雷が鳴って 永遠が照

      • 【詩】夢を見るための装置

        あなたの つまらない玩具になりたい みじめな鼠になりたい もしも木々が 歌うなら その歌を聴いてみたい 長い廊下を歩きたい 音楽がはじまる前の予感に包まれている 二週間眠りたい バラバラになって 壊れてしまいたい もう 恋愛の詩なんて書きたくない ぼくが書きたいのは 夜が どれくらい静かなのかについての詩だ 雨の 温度についての詩だ ひとりで老いていく 寂しい 女のひとについての詩だ ぼくは 偽善者でさえない ぼくはただ立っているだけだった あなたの脚に挟まれたくて 身体

        • 【詩】ねえ

          胸が痛むのは いつものことだった ぼくは詩人として生きていくことになってから ずっと 胸が痛い きっと見えない傷跡があるのだろう でもこれは内緒だ ぼくが詩人だということは誰にも言わないでほしい 恥ずかしいからね だから毎日 なんてこともないような 顔をしている 人生はうつくしいとは言えない でもぼくが 知らないふりをしているとは おもわないでほしい 思春期の頃 やったように急に振り返る 世界を驚かせるためにね ねえ ぼくたちはきっと 最後には 幸せになれる 幸せの意味

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        まいたけ絵日記

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        • ベスト詩集「知らない国」
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          【エッセイ】丁度いいティーシャツ

           いつものように近所を散歩するだけでは満たされないだろうという気がした。だから、少し遠くまで行くことにした。  きょうは休日の二日目で、世間はゴールデンウィークだった。でも、ぼくはサービス業なので関係ないと言えば関係ない。ゴールデンウィークという言葉の響きが嫌だ。  午前中はだらだらしていた。ゴミ出しと、トイレ掃除はやった。  お昼にはペペロンチーノをつくって食べた。きのうもペペロンチーノをつくった。ペペロンチーノという料理はシンプルでかっこいいような気がする。シンプルな料理

          【エッセイ】丁度いいティーシャツ

          【詩】笑っていた

          失ってしまった 人生の意味を きのう偶然見つけた 手遅れだったけれど かなしいほどに 歳をとっていた そのぶんだけ ちょっと賢くなったようだった 涙が流れるまでの すこしの時間 涙が 眼に溢れるまでの時間に 流れ星が消えるようにして 消えた 大丈夫だとおもう 生きていける そうかんじたのは 嘘ではなかったけれど ほんとうでもなかった ほんとうではなかったから 愛はなかった やさしさだけがある いつまでも ほんものの ニセモノだけがあった すべては幻だった そう考える

          【詩】笑っていた

          【詩】壁画

          もしもぼくが 原始人だったら 洞窟の壁に 動物の絵を描いていたのかもしれない いや そうだったらいいな きょうもぼくは 通勤の電車の窓から 季節の進み具合を観察していた 家々の向こうの 空の質感を視線でなぞり たしかめてみた いつの日か 完ぺきな映画に出会いたい その映画はぼくの一生のような映画だ 無意味で長い 夏の一日のような 夢を見た 失ってしまった 人生の意味を 偶然見つける 忘れていたまだ生きている思い出を そっと持ち上げて あなたに渡したい

          【エッセイ】ほんとうにやりたいことなんてない

          連休の前日  あしたから四連休だった。四連休前夜、ぼくはアルバイトの帰りに鳥貴族に来た。ぼくの通された席の隣の席には若い女性が二人で飲んでいる、と最初はおもって緊張したけれど、しばらくすると中年の女性だということがわかってきた。二人は、どうでもいいようなありきたりな話をしていた。夫がタバコを吸うことが嫌だというような話、子どもの愚痴などがその内容だった。二人は友だちのようで、しばらく酒を飲みながら話していたけれど、「じゃあ、またこうやって会って話をしようね」というような別れ

          【エッセイ】ほんとうにやりたいことなんてない

          【詩】四月二十日

          ほんとうに やりたいことを探していた カーテンの隙間から 春の街並みを盗み見る とくに変わったところはない 桜は とっくに散ってしまった もうすぐ四月も終わりだ ほんとうにやりたいことを 早く見つけなくては すぐに夏になってしまうだろう ぼくは 畳に寝そべって スマートフォンを撫でる そんなことをしていると 時間がいくらあっても足りない 苦しいのは 考えすぎだとわかっていた ぼくにも 好きなひとの ひとりやふたりはいる もっとたくさん 好きなひとがいてもいい ほんとうに やり

          【詩】四月二十日

          【詩】ほんとうにやりたいこと

          ほんとうにやりたいこと 上司を殴って 会社から逃げて ひとり暮らしの家にひきこもって 死ぬまでじっとしていたい 死を待っている間 ときどき近所のコンビニに行き ポテトチップスと ビールを買って 家で飲み食いしたい テレビを見ながら こいつら全員バカだな 日本なんてもう終わりなんだよ と言って笑いたい 笑った後ですこし泣くのだ どのチャンネルでも 世界の終わりの話をしている ほんとうはぼくだって 平和に暮らしたい でももう無理なんだ 死ぬまでにやりたいことは 海を見るこ

          【詩】ほんとうにやりたいこと

          【エッセイ】無意識との付き合い

           夢を見た。学校で誰も座っていない机。ここは谷川俊太郎の席だ。谷川俊太郎は体調が悪いから休みらしい。ぼくは、谷川俊太郎の机にバナナを置いた。その部分しか覚えていない。  どうってことのない夢だな、とおもう。でも、改めておもいかえすとちょっとおもしろいかもしれない。ぼくにとっては谷川俊太郎というひとが夢にその気配だけでも登場したということがおもしろい。よほど谷川俊太郎が好きなんだという気がする。  好きな人物が夢に出てきた例としては、他にはカネコアヤノが夢に出てきたことがあった

          【エッセイ】無意識との付き合い

          【詩】ぼくの庭

          ぼくの庭には草が生えている 草が生えているだけなんだ 草が生えるための地面はある 石ころもある でもそれだけなんだ なにもない でもそう言いきることができない ぼくの庭は静かな庭だ 一見なにもないように見える 地味な庭だ 小さな庭だ とくに目立つ花が咲くわけではないし 木と呼べるほどのものもない ぼくの庭には 音楽のようなものはないし 交通事故のようなことも当然ない 恋愛もないし 秘密もない ぼくの庭にはタイムカプセルも 動物の死骸も埋まってはいない ぼくの庭にはなにも

          【詩】ぼくの庭

          【詩】終わらない詩

          このぼくのなかに 自分以外の海がある この寂しいぼくのなかに 自分以外の女がいる このぼくの他に 寂しい自分自身がいるものか ぼくは いつの日か孤独死する その日には ぼくがそれまでに通り抜けてきた すべての季節がそこにいてほしい 振り返るときに ただ遠くに行くほど若くなる ぼくがいつか幼かった日々が 恥ずかしくないように 自分との約束を守れるように ただひとりで横たわり 目を閉じるときに いつか 誰かにやさしく抱きしめてほしかった でもこの世界にはぼくを 抱きしめられ

          【詩】終わらない詩

          【詩】斜めに降る静かな雨の詩

          ぼくにはたしかに 言えないことがあって 言えないことが ぼくからにじみ出ていて それがかなしくて ひとりになると泣いてしまう 涙に覆われた目で 景色を見ると とてもきれいに見える 人生を 傷つかずに生きることなんてできない ぼくたちは孤独だけれど 宇宙とつながっているね あなたがあの日に言った 愛しているという言葉は なんだか御伽噺のような響きがあって 夜中に誰にも見られずに 斜めに降る 静かな雨を ぼくにおもいださせる 降っているのか 降っていないのか 目を凝らしてもわから

          【詩】斜めに降る静かな雨の詩

          【エッセイ】キャラメルポップコーンの早食い

           髭を伸ばしている。それはQBハウスに行って散髪した結果、気に入らない髪型になってしまったからだった。髭でカバーしようという本能だった。もしかするとあまりにも髪の毛を短くされすぎたので、髭を伸ばすことで顔の毛の総量をなんとか一定に保とうという本能なのかもしれない。  いや、そんな理由ではなくて、ただ、春がなんとなく憂うつだからなのかもしれない。最近は元気がない。元気がないと髭まで気持ちが回らない。  この元気のなさはすべて春のせいなのだろうか。  ここ二日、日曜日と月曜日が

          【エッセイ】キャラメルポップコーンの早食い

          【エッセイ】協力して握り寿司をつくる

           きのうはよく覚えていないけれども、深夜の三時くらいまでは起きていた。とくになにかをしていたわけではない。ただ眠気が来なくて、眠ることができなかったのだ。  二時くらいにカップヌードルを食べた。カップヌードルを食べながら、例によってYouTubeで匿名掲示板のまとめ動画を見た。結婚できなかった中年男性たちが愚痴り、お互いを罵り合い、時には慰め合い、孤独死を恐怖する、という内容の動画だった。  その後、布団で輾転反側としながら、その匿名掲示板のまとめ動画のことが頭にこびりついて

          【エッセイ】協力して握り寿司をつくる