熊野ミツオ

発達ナイスガイ、自称詩人。

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  • ベスト詩集「知らない国」

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【詩】ビー玉の空

きょうの空のしたに ひとりでいて 誰にも邪魔されないで 時間の廊下に散らばった ビー玉を見ていた ガラス玉の表面に映るのは 未来ではない ガラス玉の表面に映るのは いまのぼくだ 幼い顔はどこか寂しくて 恥ずかしさからは 逃れられなかった 廊下はひんやりとしていて 薄暗かった 帰っておいで 外国を旅している夢を見た とても幸せな夢だった 毎日がお祭りのようで 幸せって あんな風なことなんだね あしたの空のしたに 誰かといて 雨の匂いがしている 紫色の雷が鳴って 永遠が照

    • 【エッセイ】ポケモンで現実逃避

       ほんとうにやりたいことがわからない。ぼくの場合、ほんとうにやりたいことについて考えはじめると調子が悪くなる。ぼくがほんとうにやりたいことは詩を書くことだということになっている。でも、最近は自分の書く詩に飽きてしまった。自分を上手く詩のモードにすることもできない。  ぼくは以前、詩を書くだけの人間だった。それが、最近は多趣味になっていった。詩を書いているのは詩しか書けないからだった。それなのに、いつのまにかいろんなことが出来るようになった。短歌がつくれるようになり、絵日記を描

      • 【詩】デート

        きょうはなんとなくさびしい さびしい一日になる予感がする だからぼくは きみに電話をかけて きょうは二人で 壊れやすい幻を見に行こうと誘う 壊れやすい幻を見ることは なんとなく安心することだ 暗闇の部屋のなかに 白いスクリーンが光り うすみどり色の世界観を展開する あの少女はきみに似ているね きみに似ている少女は あかるい金色の髪の毛をしている 幻が去ってしまった後で ぼくたちは自分自身に戻るために 夜風に吹かれに行く 今夜は月が見つからないね きょうはさびしい さびし

        • 【詩】大人になるための詩

          いつの日か 大人になるとしても いまのぼくは 曖昧な輪郭をしていて 外を歩いただけで いろんなものがくっついてくる すぐに不安になってしまう 雑踏のなかで 自分を見つけることさえできない よく似たひとを見かけたんだ 暗い眼をした中年の男だった 大人になることは寂しいことだった いつの日か 大人になるとしても いまのぼくは いつまでも言葉と戯れていて 未来には光を束ねるための ガラスでできた場所になりたい だからきみは ぼくに触れるときには慎重に 柔らかくなければいけない

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        【詩】ビー玉の空

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        • ベスト詩集「知らない国」
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          【詩】やさしいだけの一日

          きょうはやさしいだけの一日だった 風がゆるゆると吹き 空にはもやもやがかかっていた 草花は半分眠っていた やさしいだけの一日に ひとは働いたりはしない なんとなくゆっくりとした気持ちで 朝のコーヒーをいれる きょうのような日には うす緑色の映画を見よう ぼくは彼女に電話をかける いまからふたりでどこかに行こう ぼくたちは海辺に座って とくになんでもない風景を眺める やさしいだけの一日には 怒りもかなしみもない とくになんでもない風景のなかに いまぼくたちはいる なんと

          【詩】やさしいだけの一日

          【詩】夜は昼で汚れている

          夜は昼で汚れている ぼくの影は行方不明になってしまった 影はいま 夜のなかに隠れている 影はタバコをふかしている 汚れてしまった夜は 更けていくにつれてまた澄んでくる 夜のなかを どこまでも沈んでいくことができる それでもぼくは呼吸をすることができる 偶然できた静かな場所で いままでの人生のことを 振り返ることができる ぼくはかわいそうな父と かわいそうな母から生まれた かわいそうな子どもだった そんな自分をかわいそうだとおもう ぼくの影は夜の果てを旅している ぼくは

          【詩】夜は昼で汚れている

          【エッセイ】なぜなのかはわからない

           最近、いろんなことが上手くいかない。なぜなのかはわからない。もしかすると、あまり文章を書いていないせいかもしれない。たまには、こんな風にしてとくになにも内容がなく、読んでもあまり役に立たないような、そういうような文章を書くのもいいかもしれない。それによってすこしは頭が整理されるかもしれない。  短歌の結社に入っていない。結社に入ろうとおもって、半年が経った。この前のお盆に連休をもらったとき、そろそろ本格的に調べて、どこの結社に入るか決めようとおもった。ほんとうは連休が終わ

          【エッセイ】なぜなのかはわからない

          【日記】セロトニンが不足している

          2024年8月26日(月)晴れ  変な夢を見たので、朝の八時に起きた。きょうは休日だったけれどスーパーに買い物に行っただけで、それ以外は家にいた。米不足なので麺類と食パンを買った。どちらかと言うと地味な一日だった。でも、地味なりに完成された一日だった。早起きしたお陰か、時間があったので映画を二本見た。一本は北海道のうつのフォロワーの好きな映画監督、キム・ギドク監督の『春夏秋冬、そして春』で、もう一本は『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』という1984年の映画だった

          【日記】セロトニンが不足している

          【詩】きょうの続き

          きょうは きのうの続きなのかもしれない きょうのぼくは きのうのぼくの続きなのかもしれない ぼくは 子どもの頃のぼくの 続きなのかもしれない ぼくは忘れてしまった思い出の 続きなのかもしれない 約束を破ってまで 叶えたかった夢があったはずなのに あしたの朝に 目を覚ます理由がない あしたの朝に おはようと言うひとがいない 必ず来るあしたの朝は きょうの夜の底にあって ダイアモンドの雨が降っている

          【詩】きょうの続き

          【エッセイ】子どもの頃はゲームが好きだった

           もうぼくはダメなのかもしれない。でも、まだ大丈夫なのかもしれない。それはわからない。  最近は、店長がつくった一日にやることのリスト、作業表を見ると憂うつになる。作業表はやることが書いてあって、それをやったらそこに確認のために名前を書く。ぼくともうひとり障害者雇用の同僚の二人でその表を埋めていく。ぼくはやる気がない。どの仕事も雑用ばかりだし、ほんとうはそんなに毎日やる必要もない作業だとおもう。この作業表にはやりがいというものがない。それに比べて同僚は常にやる気のあるひとだ。

          【エッセイ】子どもの頃はゲームが好きだった

          【詩】寂しい告白

          きょうという日は たぶん 百年前と同じ一日だけれど 忘れているだけだ ぼくは誰? ぼくはきょうも ひとりを寂しいとおもったのに ひとりでいる以外に 自分でいられる方法がなかった ぼくは変身する 珍しい鳥 しゃぼん玉色の鱗の魚 繊細な触角を持った虫 どれもぼくなのに ぼくではない 幼年時代に見て いまも覚えている夢がある そんな寂しい告白は 愛を求めている証拠だろう かなしいときに ひとは泣くものなのに ぼくは泣いていないから かなしくないのかもしれない あしたという

          【詩】寂しい告白

          【詩】楽器

          いつもより 穏やかな顔 いつもより 白い腕 いつもより 柔らかい胸 いつもより 寂しい口 いつもより 遠いつま先 いつもより やさしいまなざし いつもより 澄んだ声 いつもより 黒い髪の毛 いつもより 単純な言葉 あなたが 夢を見ているときに わたしは起きている 夜は どこまでも落ちていくことができて 底がない あなたはうつくしい楽器 ひとりぼっちの思い出だけが スローモーションで降り続ける

          【エッセイ】二〇二四年の夏休みの記録

           仕事はまあまあやっている。ぼくはお盆に六連休をもらった。ぼくは普段は、配送業者のひとが届けてくれる段ボールを開梱して、なかに入っている商品を仕分けしている。だから、配送業者がお盆休みに入ると、仕事がなくなる。そういうわけで、店長に頼んで休むことにした。  店長は自分が長期休みなんていらないひとだからか、ひとが長く休みたいと言っても、あまりそれについて理解がない。ぼくの目から見ると店長は働きすぎなので、もっと休んだ方がいいとおもう。でも、そんなことは他人のことだからどうでもい

          【エッセイ】二〇二四年の夏休みの記録

          【詩】ソフトキャラメルのような午後

          ひとりでいると 柔らかくなっていくのがわかる 自分で自分自身の 柔らかさにはまって溶けそうになる とても心地いいけれども ダメになっていくような気がして すこし不安だ でもたまに 知らない人間と会うと 私もそのひとの形を真似て 人間らしくなっていく 人間って退屈だ だから私は 天気の話で適当にやり過ごす きょうのような穏やかな天気の日には ひとりで 自分の柔らかさにはまって 自分自身を溶かす 魂のレベルでリラックスして 身体に空いているいろんな穴から 甘い匂いのガスが漏れ

          【詩】ソフトキャラメルのような午後

          【詩】詩人たちの水切り

          詩人たちが 川辺に集まって水切りをしていた 詩人たちは 丁度いい言葉を探して うつむいて歩く 軽くて平たくて 色のついていない言葉が いちばん役に立つ ぼくは偶然見つけた 薄いグレーの小石を 水面に向かって 絶妙な角度をつけて投げる でもぼくは あんまり上手くないから いい詩人は 複雑な形の言葉でも 上手く跳ねさせることができる 金平糖のような甘い言葉や あられのようなゴツゴツとした言葉が 水面を 光りながら渡っていく ぼくはあんまり上手くないけれど それを見ていると

          【詩】詩人たちの水切り

          【詩】ズレ

          いつもよりも すこしだけ自分からズレたい すっかり隅から隅まで 自分にガッチリハマっているのはきつい ほんの数センチでいい ズレた部分が透明になって そこを風が抜けていく その冷たさをかんじていたい