cahier(カイエ)

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「語る」という種族

サンソン・フランソワという稀有なピアニストがいる。 彼の演奏をはじめて聴いた時期を正確には思い出せないのだけれど、10年以上も前のことだったように思う。 それはドビュッシーの「月の光」で、「なにごと?」というのが第一印象だった。 だって、全く「月の光」に聞こえない、というか、フランス音楽の響きにさえ聞こえなかったのだ。 ひとことで言えば、現実感。しっかりと地に足がついたような意志的な一音一音が、まるで宣言しているかのような発音だった。 ドビュッシーの響きの特徴として、浮遊感と

    • はじめまして

      局所性ジストニアにより、現在活動休止中の楽器弾きです。 専門はヴァイオリン、今は指を動かすということをお休みしないためにピアノを毎日弾いています。 ここに書いていくことが、一体どんなことにカテゴライズされていくものなのかは、まだ曖昧です。 ただの指を不自由にした楽器弾きがあくまでもその視点から楽器を弾くということ、音楽という独特な共通言語を聴く、あるいは考えるということをしているに過ぎないからです。 ひとつだけ言いたいのは、楽器を弾くことも音楽を聴くことも、そのやり方や感

    「語る」という種族