M-12023年と、変化


僕が真剣にM-1を見出したのは確か2018年、霜降りさんが優勝した年からだったと思う。
真剣にというか絶対にリアルタイムで全部見るようになったのは。
芸人さんたちの戦いの熱さにしびれて毎年胸を高鳴らせて気付いたら一年が終わるといった、そういうお祭りのような、年末特番に相応しいありがたい存在。
2019もまたドラマのようにミルクボーイが優勝してアナザーストーリーはなんべんも見たし、
2020年のマヂラブさんの返り咲き優勝も意地のかっこよさを見せつけられたし、
2021年こそ本当にお祭りで地下から無名のおもろぎるコンビが続々と出場したし、
2022年は文句のない三組が最終決戦に進み高揚して酒が進んだ記憶がまだ新しい。

楽しみすぎていた。全く関係ない立場なのに没入しすぎていた。
まっさらな気持ちで楽しめていた。


しかしここ1,2年くらいで僕はかなりお笑いという素晴らしい分野に足を踏み入れすぎた。お気に入りの芸人さんのメディア出演やラジオなどをこれでもかというほど追って、人として芸人さんとしてのかっこよさや人柄のよさとか、色々と知って気付かぬうちに思い入れが強くなっていた。気付かなかった。ほんとに。今年のM-1見るまで。



まず怪しい雲が立ち込めたのはカベポスターさんの点数が伸びなかったとき。
うわー、残念!!とかのレベルじゃなかった。身内くらい落ち込んだ。

そして真空ジェシカさんが敗退したとき、
毎年恒例のお祭り没入体験が急に終了した。
こんだけ工夫や試行錯誤を重ねて挑んだM-1のためのネタが、審査員の点数にバラつきを生んでいた。
びっくりするほど伸びなかった。
赤の他人のただの素人視聴者がこんなこと言うのは失礼なのも承知だが、本当に不憫でならなかった。ガクさんと同じ表情をしていた。


それ以降、楽しめなかった。
本当に楽しめなかった。
酒が余った。
次の組がネタを披露していても、ずっと目が熱かった。
最終決戦で、令和ロマンさんが行きそうだなあとうっすら考えながらも、
結果が伴わなず敗退したコンビのことが頭から離れなかった。
令和ロマンさんが優勝した。
本当に面白かった。
文句のつけようがなかった。
相応しい優勝者だった。


なのに気持ちよくなかった。
没入終了の瞬間から本当に酒を一滴も飲んでいなかった。
自分でも意味がわからないが、悔しくて悔しくて仕方がなかった。
楽しみにしていた反省会や飲み会も見れなかった。

年末、この一年間を締めくくるに相応しい熱い戦いを全力で楽しめることを期待していた。というかどんな結果でも楽しめるものだと思っていた。




好きになって、興味が湧いて、いろんな情報を手に入れたくて、いろんなことを知りたくなって、
知って、楽しんで、応援して、もっと好きになって、
これって素敵なムーブだと思っていたんだけど違かったみたいだ、
スポーツの試合ともまた違う、実力出し切れば結果が伴うものではないこの賞レースというお笑い独特の大会では、
審査員に全て委ねる戦いでは、
思い通りにいかないことなんてざらなんだ、
比例しないんだ、
報われるべき人たちが報われないんだ、

そういう気持ちが強くなってしまった。
悲しい感情が生まれてしまった。

知りすぎてしまったのが良くなかったのか、
割り切って見れないのが良くなかったのか、
ただネタだけに集中して笑えば良かったのか、

好きになったら、思い入れが増える、
今まで見えなかったものが見えてくる、
情が生まれる、
そうなると楽しめないことも増えてくるんだ、

そう思った。

何においてもそうなのかもしれない。
当たり前のことやんって笑われるかもしれないけど、僕はなぜか今年のM-1で痛感した。

距離があるからこそ楽しめることって多いんだろうな。


本当にお笑い番組でここまで悲しくなったのは初めてだった。
来年は僕の記憶を全部消すか、全組アマチュア初出場であってほしいとか思ってる。







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