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【全】早期からの緩和ケアとは何か緩和ケア医が説明します。#80

こんにちは、心療内科医で緩和ケア医のDr.Toshです。緩和ケアの本流へようこそ。

緩和ケアは患者さん、ご家族のすべての身体とこころの苦しみを癒すことを使命にしています。

今日のテーマは「早期からの緩和ケア」です。

動画はこちらになります。

皆さんにお聞きします。

緩和ケアって、いつから、誰がするか知っていますか?

積極的抗がん治療が終わってから、緩和ケア専門の医療者がする、と思っていますか?ホスピスでしているのが緩和ケアでしょう、と思っている方も多いかもしれません。

それは正しいです。それも緩和ケアです。

Dr.Tosh、言っていることが違うじゃないですか、以前の動画では、がんと診断されてから緩和ケアは受けられると言ったじゃないですか、と思っている方もいるでしょう。

その通りです、確かに言いました。がんと診断された時から緩和ケアを受けられます。

もう一度言います。がん患者さんは早期から緩和ケアを受けることができます。

それじゃ、早期からの緩和ケアも、緩和ケア専門の医療者がしてくれるんですか?という質問には、すべてのケースで「はい」とは言えません。

実は早期からの緩和ケアをする医療者は他にもいるのです。

この記事を見ることで、早期からの緩和ケアを誰が担い、何をするかがわかる人が増えればうれしいです。

本日もよろしくお願いします。


早期からの緩和ケアとは何か・誰が行うのか

結論から申し上げます。

前回の記事でもお話した通り、緩和ケアには「基本的緩和ケア」と「専門的緩和ケア」があります。

早期からの緩和ケアの多くは、基本的緩和ケアで対処できます。そして、それは治療医や、治療を担当するスタッフで構成される「治療チーム」が行う仕事です。早期からの緩和ケアは、治療チームがその多くを行うのです。

がん患者さんと初めて出会う医療者は、治療医でありそのスタッフです。がんの告知を受けた患者さんは、多くの場合、ショックを受け、不安な気持ちになります。

そんな時、治療医やスタッフがやさしく接してくれ、患者さんの不安な気持ちを受けとめてくれたらどうでしょうか。うれしくなりますよね。そして、治療についてもしっかりとわかりやすく説明をしてくれて、治療法についても理解ができると、安心しますよね。

あるいはがんが進行していて、痛みなどの症状がでていたらどうでしょう。
そのことで気持ちもつらくなって、治療のことなど考えられなくなるかもしれません。でも、そのつらい痛みを取ってもらい楽になったら、これからの治療のことも積極的に考えられるようになるかもしれません。

このように、患者さん、ご家族の不安や、つらさを取り除き、患者さんとご家族の良い信頼関係が作れるようになること。その結果、安心して治療が受けられるようになること。

これこそが基本的緩和ケアなのです。

もちろん治療による副作用や、有害事象の治療も基本的緩和ケアに含まれます。だからすべてのがん患者さんを診察する医師が、緩和ケア研修会=ピース研修会を受講することになっているのです。

そして、基本的緩和ケアでは対応が難しい場合、治療医の先生から。我々緩和ケアチームに紹介され、専門的緩和ケアに繋げられるのです。


5つの早期緩和ケア

繰り返しますが、がんと診断されて、がん治療中の関わりは、基本的に治療医とそのスタッフ、つまり治療チームが行います。

治療チームには、医師、看護師、薬剤師、栄養士、歯科医師、歯科衛生士、理学療法士や作業療法士などのリハビリスタッフなどが所属します。ですので、早期からの緩和ケアとは、多くの場合、治療チームが行う、基本的緩和ケアの中に含まれます。

それでは、治療チームが行う早期からの緩和ケアとは具体的には、どのようなものでしょうか。

早期からの緩和ケアには、大きく分けて5つあります。

1. 治療法の選択を援助する
2. 患者さんやご家族との信頼関係を作る
3. 治療による副作用などに対処する
4. 痛みなどの症状緩和をする
5. 精神的つらさをもった患者さんをみつけ、専門的緩和ケアにつなげる

それでは、これから、ひとつづつ説明していきます。

1番目は、患者さんやご家族が納得できる治療を選択できるように援助することです。

以前は、治療法を医療者が決めて、それを患者さん、ご家族が受け入れるということが普通でしたが、今は、治療法の選択は、最終的には患者さん本人がするようになっています。

治療医はあくまで、治療法を提示して、患者さんが納得でき、自己決定できるような援助を行うのです。ですので、セカンドオピニオンといって、違う医療者の意見を聞くことも今はできます。これは患者さんの権利なのです。

2番目は、患者さん、ご家族の気持ちに配慮した関わりができ、その結果良い関係性を築けるようになることです。

患者さん、ご家族は、自分たちが信頼できる医療者に治療をしてもらいたいと思っています。

患者さん、ご家族に信頼される医療者になることが、基本的緩和ケアの大事な1つです。

3番目は、治療による副作用や、有害事象に対して、適切に対処できることです。

抗がん剤治療では、多くの場合、副作用が出てきます。それを放っておくと、抗がん剤の継続は難しくなります。適切に対処することも基本的緩和ケアといえます。

そして、自分で対処することが難しい場合は、専門的緩和ケアに紹介できるということがとても重要になってきます。

4番目に、痛みなどの身体症状があればその症状緩和をすることができることです。

進行がんの場合、治療前からつらい身体症状がある場合があります。それを放っておくと、治療に入れないことも多いです。まずは身体的症状緩和が必要です。

また、自分で難しい場合は専門的緩和ケアに紹介できることも言うまでもありません。

5番目には、精神的治療が必要な気持ちのつらさを持った患者さん・ご家族を見つけ、適切に専門的緩和ケアに繋げられることはとても大事です。

気持ちのつらさの対処を自分でできるがん治療医は少ないので、気持ちのつらさを持った患者さんを見つけ、紹介できることが重要なのです。

最後に、とても大切なことを申し上げます。

基本的緩和ケアで対処できない場合はスムーズに専門的緩和ケアにつなげること。患者さんの苦しみは、基本的緩和ケアで対処できるのか、専門的緩和ケアにつなげなければいけないのか、を判断できること。これも、大切な基本的緩和ケアです。

以上、早期からの緩和ケアについてお話してまいりました。

患者さん、ご家族は、治療についてわからないこと、身体やこころのつらさはまず、治療医とそのチームが相談に乗ってくれます。そこで解決が難しかったり、納得できないようでしたら遠慮なく、緩和ケアチームを紹介してもらってください。

治療チームの医療者は、自分たちのできる早期からの緩和ケアを行ってください。
そして難しいと思ったら、緩和ケアチームにご紹介ください。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

私は、緩和ケアをすべての人に知って欲しいと思っています。

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