【全】緩和ケアとは何か・専門的緩和ケアと基本的緩和ケア #79
こんにちは、心療内科医で緩和ケア医のDr. Toshです。緩和ケアの本流へようこそ。
緩和ケアは患者さん・ご家族のすべての身体とこころの苦しみを癒すことを使命にしています。
今日のテーマは「緩和ケアとは」です。
動画はこちらです。
今日は、もう1度、初心に戻ったお話したいと思います。
緩和ケアってどんなイメージでしょうか。
アンケートを取った訳ではありませんが、私が実際の臨床で感じているのは、まず、緩和ケアのことを知らない人が圧倒的に多いということです。聞いたことも、見たこともないと言われます。
次に多いのは、緩和ケア=終末期のケアと思っている人です。ホスピスのような死ぬ場所で行われるケアが、緩和ケアである、と皆さん思っています。
確かに昔はそうでした。しかし、終末期のケアだけが緩和ケアではありません。もっと広い範囲をカバーしています。
この記事では、緩和ケアとは何かを、皆さんに正しく理解してもらおうと思って作りました。
この記事を見ることで、がんになっても、安心して治療や生活ができる方々が増えてくれればうれしいです。
今日もよろしくお願いします。
終末期だけではない緩和ケア
画面の図を見てください。
以前は、この図のように、緩和ケアは、手術、放射線治療、抗がん剤治療といった積極的抗がん治療が終わった後に、亡くなるまでの間受けるケアでした。
今も多くの人の緩和ケアのイメージはこのようなものかもしれません。
この図はいかがでしょう?
ひょっとすると、これはどこかで見たことがある、と言う人もいるかもしれません。
この図は、がんと言われた時から、緩和ケアは積極的抗がん治療と一緒にするものだという考え方を表しています。
しかし、この図も緩和ケアを正しく説明するには、十分ではありません。
この図をご覧ください。
今では、この図が緩和ケアを表しているものです。実は、緩和ケアはこんなに広い範囲で行われるものなのです。
早期では、手術、放射線治療、抗がん剤といったがんをやっつける治療が主となりますが、がんが進行、悪化してくると、緩和ケアの占める割合が多くなります。そして、積極的抗がん治療ができなくなると、がんの治療は緩和ケアが中心となるのです。
早期でも緩和ケアは必要であり、終末期にも必要です。そして、さらに、患者さんが亡くなった後の遺族にも必要なものです。
今では、緩和ケアはがんの治療の1つであると考えられています。手術、放射線療法、抗がん剤治療に加えて、4番目の治療が緩和ケアなのです。
緩和ケアは第4のがん治療
先ほどの図をさらに詳しく説明します。
緩和ケアには2種類あります。それは、基本的緩和ケアと専門的緩和ケアです。
図の緑色の部分が基本的緩和ケアです。基本的緩和ケアは、がん治療を行う医療者なら、誰でも行わなければならない緩和ケアです。
基本的緩和ケアについては、次の記事で詳しく説明する予定です。
オレンジ色の部分が専門的緩和ケアです。専門的緩和ケアは、基本的緩和ケアでは対応しきれない苦しみやつらさに対応する専門的なケアです。
病院などで積極的抗がん治療を受けている患者さんに対して、基本的緩和ケアは治療チーム、専門的緩和ケアは緩和ケアチームが対応します。
病院に緩和ケアチームがない場合は現状としては基本的緩和ケアしか受けられませんが、治療医の先生の中には専門的緩和ケアをしていこうと頑張っている人もいます。
将来的には全ての人が専門的緩和ケアを受けられるように広めなければいけないと思っています。
積極的抗がん治療が終了した患者さんは、緩和ケアが主な治療になります。これは、ホスピス、一般病院、在宅で行われます。
そして、患者さんが亡くなった後は、遺族ケアとして緩和ケアは必要になります。
緩和ケアの未来
WHOの緩和ケアの対象は、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族と定義されています。実際に今はがん患者さんがメインになっています。
しかし、命を脅かす病とは、がんだけではありませんよね。現在日本では、がん以外で保険適応になっているのは、慢性心不全の末期の患者さんのみです。
ALSをはじめとする神経難病や、慢性肺疾患なども命を脅かす病ですが、残念ながら、現在では専門的緩和ケアが受けられない現状です。
私は将来的には、すべての病気の患者さんが緩和ケアの対象にならないといけないと思っています。これは、緩和ケアは、全ての病気の基礎になるべきだということです。
いつも冒頭で、私がいつも言っているフレーズがあります。
「緩和ケアは患者さん・ご家族のすべての身体とこころの苦しみを癒すことを使命にしています」
病気で苦しんでいる患者さん、ご家族のすべての苦しみを癒すことが緩和ケアの本来の使命です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
私は、緩和ケアをすべての人に知って欲しいと思っています。
このnoteでは緩和ケアを皆様の身近なものにして、より良い人生を生きて欲しいと思い、患者さん、ご家族、医療者向けに発信をしています。
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