【後悔しないために】患者力を身につけるための大事な3つのポイント【患】#136
こんにちは、心療内科医で緩和ケア医のDr.Toshです。緩和ケアの本流へようこそ。
緩和ケアは患者さん、ご家族のすべての身体とこころの苦しみを癒すことを使命にしています。
今日のテーマは「自分で育てよう!患者力」です。今日はがん患者さんにお話します。
動画はこちらになります。
そんな患者さんは多いかもしれません。
そんな方にぜひ身につけてほしいものがあります。それは患者力です。
患者力について良県総合医療センターの東光久(あずま てるひさ)先生がとてもわかりやすく説明していますのでご紹介します。
今日は自分で育てられる患者力についてお話します。この記事の最後に、患者力を使って自分の満足する治療を選ぶことができた患者さんのお話をしますので、ぜひ最後までご覧ください。
今日もよろしくお願いします。
患者力:3つの要素
結論から申し上げます。
自分が納得できる治療は、誰かに納得させてもらうのではなく、自分で自分を納得させる答えを見つけるしかないのです。
そのために患者力をつけることがとても大切です。
患者力とは先ほども言いましたが自分の病気を医療者任せにせず、自分事として受け止め、いろいろな知識を習得したり、医療者と十分なコミュニケーションを通じて信頼関係を築き、人生を前向きに生きようとする患者さんの姿勢のことです。
私は、患者力は3つの要素に分けられると考えています。
これらの力をつけることが、患者力を高めることになると思います。
でも、人には得意不得意がありますよね。
例えば、病気の情報などをパソコンで調べたりできるけれども、先生に話すのはとても苦手だとかです。なかには全部不得意だという人もいるかもしれませんが、大丈夫です。
まず、1番最初にすべきことは、自分の何が得意で、何が不得意なのかを整理することです。
今から、患者力をつけていく方法をお伝えしていきますので、ひとつずつ、自分のできるところから始めていきましょう。
患者力を上げる①コミュニケーション力
患者力の1つ目は、コミュニケーション力です。
患者さんの中には、医師とのコミュニケーションがうまくいかないと思っている人も多いのではないでしょうか。聞きたいことがたくさんあったのに、先生の顔をみたら、何を聞きたかったのかを忘れてしまい、半分も聞けなかったなどという話も聞いたことがあります。
コミュニケーションがうまくいかない理由の1つに医師が非常に多忙だということがあげられるでしょう。私も1日30人くらいの患者さんを外来で診察することが多いです。
しかも、外来だけでなく、入院患者さんも診察しますし、患者さんのよりよい治療をするための多職種で行うカンファレンスの時間、退院する人がいれば、退院時カンファレンスも行います。
また、大学病院では医学生を教育する時間も必要です。
このように、医師は大変多忙です。本当は患者さん一人一人ゆっくりと診察したい気持ちはあっても、1回の診察に使える時間が限られていて、実際にはできていないという医師も少なくないのです。
このような忙しい医師の状況をまずは理解して、そのうえで患者さんは、どう上手くコミュニケーションを取ればよいかを考える必要があります。
1つの有効な方法は、あらかじめ言いたいこと、聞きたいことをメモして持っていき、それを基に話すことです。これなら、聞きもらすことはありませんね。
できれば、そのメモを医師にも渡して見てもらいながら聞いてもらうというのもいいと思います。中には前もって手紙を出しておくという人もいます。
コミュニケーションが苦手な医師の場合、耳で聞く情報よりも書いたものの方が理解しやすいことは多いのです。
もう1つは、サポーターをつくり、一緒に診察に行くことです。
自分で聞きにくいという人は特に、家族や友人と一緒に受診し、その人に代弁してもらうという方法もあります。また、がん相談支援センターのMSWやカウンセラー、あるいは緩和ケア医等、病院の話しやすい人に話して、主治医に伝えてもらうという方法も有効だと思います。
患者会で、先輩の患者さんにアドバイスをもらうことも良いと思います。
自分自身のコミュニケーション能力を高める方法もあります。コミュニケーション能力をつけるセミナーに参加するなどです。
コミュニケーション能力をつけるセミナーを、先ほど紹介した白河総合診療アカデミーの東先生が主催しています。リンクを貼っておきますので参考になさってください。
以上のように、コミュニケーション力をつける色々な方法があります。1回でうまくいかなくてもあきらめずに、頑張ってみてください。
患者力を上げる②情報を得る力
今は多くの情報があふれています。
インターネットから検索するとすぐに多くの情報が得られます。本・新聞・テレビなどの既存の媒体からも得られます。しかし、様々な媒体から得られる情報は、玉石混合です。これらの中から、自分にあった、正しい情報を得ることが重要なのです。
1つの例としてここでは、インターネットの情報で、良くないものを選ばないヒントについてお話します。
1つ目は、極端な表現のものを避けることです。
絶対治るとか、どんながんにも効く、とかいう表現のものは避けましょう。
高価すぎるのも、良くないものが多いと思います。
2つ目は、1つの事実のみで判断しないことです。
例えば、ある方法で末期がんが治りましたという患者さんの声を載せている場合には、何人が治療して何人が治ったという記述がない場合が多いです。よくよく見てみると、たったの1例しか載っていない、症例報告レベルの場合もあります。
また、試験管内での結果や、動物実験のみの効果で治る、と言っている場合も多く見かけます。動物と人間は全く違います。動物実験で結果が出ても、人間の臨床試験までいかないものは山ほどあるのです。
このように、多くの情報から正しい知識を知る力も患者力のひとつです。
患者力を上げる③自分で決める力
自分で決める力とは何でしょうか。私は、責任を自分がとると決める「勇気」のことだと思います。
あなたは、自分が決められる人か、決められない人かどちらでしょうか。
自分では決められない。怖いから誰かに決めてほしいと思っている方にお聞きします。
もし、誰かに決めてもらってうまくいかなかったとき、本当に後悔しませんか。自分や他人を責めないですか。もし失敗したとしても、自分が決定したときは、後悔しないのではないでしょうか。
最後は勇気!です。自分のことは自分で決める、と決めるのです。勇気が出せたら患者力は少しずつついてきます。
とは言っても、自分で決められない、勇気が出ない、という人もいるかもしれません。しかし、そんな方は、できない自分を責めて、自分をいじめないでください。
そんなあなたでも大丈夫です。自分で決める力は、トレーニングできるのです。小さなことを「決める」ことから始めるのです。
例えば、スーパーやコンビニに行って、今自分が何を食べたいかを自分の心に聞きます。
いつもは特価の100円のアイスを買っている人も、いったん本当にそれが食べたいのかを自分に聞いてください。本当は300円のハーゲンダッツが食べたいと思っているかもしれません。そして、今日は心が食べたいと言っているハーゲンダッツを買いましょう。
この時のポイントは、なんとなく買うのではなく「心が食べたいと言っているものを買うと決める」ことが大切です。その時の自分の気持ちを感じてみてください。簡単に見えますが、決められない人には結構難しいことです。
このように、毎日の生活の中でひとつづつ自分で決めるということを、意識しましょう。当たり前の日常にひと手間かけてみてください。なぜなら、これは決める練習だからです。
決めることが苦手だという方は、ぜひやってみてください。そして、実際にやってみた時に、あなたが感じた気持ちをよろしければコメント欄でお聞かせください
高野先生を受診した乳がん患者さんの話
以前の記事でもお話したことのある70代の乳がんの患者さんのお話です。
彼女は、ある医師のセカンドオピニオン外来を受診し、がん放置療法を選択しました。ところががんは徐々に悪化してきました。彼女は、がんが悪くなった時それで本当にいいのかを自分で考えました。
そして、いろいろ自分で調べて、ある本に出合いました。その本を書いたのは、がん研有明病院 乳腺内科部長の高野 利実(たかの としみ)先生でした。
高野先生は「いったんがん治療をしない選択をした方でも、悪くなった時に病院にかかることや、緩和ケアを受けることについても否定するなら、それは、『がん放置療法』というよりも、『がん患者放置』です。がんの症状がつらくなったら、放置するのではなく、きちんと緩和ケアを受けてください。」と言っている腫瘍内科の医師です。
そして、彼女は高野先生の外来を受診し、高野先生の抗がん剤治療を受けました。その結果、がんが小さくなってQOLもとても上がり、生活が快適になりました。
彼女は、自分で選択した放置療法が違うと思った時に、勇気をもって「違うかもしれない」ということを受け入れたのです。
自分を責めたり、他人を責める気持ち、あるいは後悔の気持ちは当然あったと思います。でも、ここでその現実を受け入れる勇気を持とうと思い、新たな情報を集め始めたのです。そして、今の自分にとって大事だと思われる情報を集めて、分析し始めたのです。
いったん自分のそれまでの信念を全て白紙にもどすということは、とても勇気がいることだったと思います。その結果、今の自分に必要な治療と考え方を持っている医療者とつながったのです。
彼女の勇気と行動力こそが、患者力と言っていいのかもしれません。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
私は、緩和ケアをすべての人に知って欲しいと思っています。
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