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藍染絞りの第一人者 片野元彦に学ぶ、『偉業を成し遂げた人がやっている3つのこと』

染めものをされたことがある方なら
一度は耳にしたり、実際にやってみたことがある『絞り』

『絞り』とは布を、たたむ・縫う・絞る の
3要素で成り立つものを指し、
その起源は、自然発生的かつ、同時多発的に
日本各地はもとより、全世界で行われ、
今もなお続いています。

そんな絞りの中でも、
<片野絞り> <折縫い絞り> と呼ばれる
技法を考案し、画期的な絞りの新時代を開拓した片野元彦さん。


片野さんの作品が一堂に会した
『特別展 藍染の絞り 片野元彦・かほりの仕事』
に実際に足を運び、作品を目の当たりにし、
作品の持つ優しい温度にとても感動しました。
片野さんはなぜ、こんなに素晴らしいものを生み出せたのか。
絞りに新時代を生んだその偉業を3つの要素で紐解きます。

片野元彦さんとはどんな方?

今から123年前、
明治32年、名古屋市に生まれます。
20代で、画家を志し上京、
岸田劉生に師事し画業の傍ら、染色も学びはじめます。
20代後半に結婚、子どもが生まれ、再び、名古屋市へ。
30歳の年、師の没後、染色に専念し始めます。
40代、戦時下、どうされていたのか、詳細は記載がありません。
50歳、妻の死後、工芸の道へ。型染めを始めます。
57歳、柳宗悦の示唆を受け、藍染の絞りの再興に取り組み始めます。
60代、様々な賞を受け、活躍。
73歳のときに絞り全集を発刊、
76歳で逝去されています。

(年譜は豊田市民芸館パンフレットより抜粋)


さて、本題。私的考察!

『偉業を成し遂げた人がやっている3つのこと』



その1、変化を恐れない

片野さんの年表を見たときに注目したのは、ほぼ10年ごとに新しい何かに取り組んでいること。
画家、染色、型染め、そして、藍染の絞り
似たようなカテゴリーで括られる中でも、
新しいエッセンスを取り入れ、とどまらずに挑んだ軌跡が伺えます。

変化することをいとわない、
ひとつのことに固執し続けない。

現状維持に甘んじない、成長志向、
そして、変化を楽しめる柔軟さが、
普通じゃない発想・功績を生むひとつの要因だと感じます。



その2、自分の可能性を信じ抜く


片野さんを知ったときに驚いたのは、
絞りをはじめた年齢が、57歳だということ。
やらない、できない、やめる、言い訳なんてごまんと出てきても
おかしくない年齢だと私なら感じます。
それでも、挑み続け、今までにない画期的な作品を生み出し続けた。
その歩みには、自分への絶対的な信頼があったように思います。
わたしならできる、やってやるよ、
という確固たる信念と覚悟、
抗えない老いさえも、いとわない、
折れない強さを感じます。


その3、よき仲間と出会う

民芸館の展示では、送られた書簡、文通の展示もありました。
心の折れそうなとき、励まし合える仲間の存在に繋ぎ止めた気持ちがあったんだな、
と伺い知ることができました。

孤独な作業の連続に向き合うなか、
よき仲間の存在が感じられることは、
心の強い支えだっただろうと思います。
同じ方向をむき、同じ時代を生きる、
師や同志に出会えることは、
挑戦のモチベーションやぶれない軸を保つためにもとても重要なことだと感じます。


変化を恐れず挑戦し、
いつでも自分の最大の理解者であり続け、
そしてそんな自分が心許せる同志を見つける。

そうあれたら、自ずと、道が開ける気がしてきます。



片野さんの作品をみて私が、一番に感じたのは『温度』
血のかよった温度、
手で紡がれた時間と空間、
洗練されているなかにも、
粗野な潔さを垣間見て、
その空間いっぱいに飾られた作品から
伝わってくるエネルギーが本当に温かかった。
広巾に縫い絞られた藍染の風合いが、
唯一無二の存在感を放ち、浸りきる今に至福を感じる時間でした。


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