第249話　聞くから、ちゃうかなぁ

カーナビは便利だ。

でも、カーナビを使うと、道を憶えなくなる。「憶える必要がなくなった」と、そう言い換えてもイイかもしれない。

道は、助手席に座っていても憶えない。

何度も通った道だからと、完全に憶えているつもりで1人で運転すると、「あれ？」「あれれ？」ってなったりするのは、よくあることだ。

これは、【自分で考え、自分で操作し、自分でやり切る】ということを省いた場合、なかなか記憶には定着しないという、そういう脳の仕組みなのではないだろうか？

僕はそんな、仮説を思い抱いた。

そう、思い抱いたのだ。

これは、わが家のコンセントである。

右は、僕のノートパソコンにつながっている。

真ん中は、電気ケトル。

左は、スマホ充電用の線だ。

ゆかりちゃんは、美味しいカレーを作るとき、ミキサーを使う。

「じょーじ、これ、どれなら抜いていい？」

僕は、スマホの充電用を指し、「これ抜いていいよ。スマホの充電の線だから」と説明する。

もう、お察しかと思う。

ゆかりちゃんは、何度もこの質問を僕にしている。もう3～4回は教えている。

ついこのまえも、

「これだったよね？」

と言って、電気ケトルの線を抜こうとした。

（線をたどって、どこにつながっているか、確認すれば解決するなぁ）（首を、ちょっと上に動かすだけだなぁ）

僕は、そう思った。

そして僕は、そんな指摘などしない。思っても言わない。

お腹を見せてみろ！　などとは、僕なら言わない。

おそらくは、僕を、カーナビかSiriか、そんな風に活用するので、それが原因でゆかりちゃんは、一向に憶えられないのだろう。

◆〆

久しぶりに短文だ。

見出しも、この〆、だけだ。

Siriで思い出した。

僕が、「OKグーグル」「5分後にアラーム鳴らして」と、スマホに語るようになった。

すると、ゆかりちゃんが「ヘイSiri！」と、iPhoneに語るようになった。（マネされた）

そして、ゆかりちゃんはときどき、「OKシリ」と言ったりする。ごっちゃになって可愛いのだ。

僕は、そんなゆかりちゃんが大好きなのだ。