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第484話 不満や愚痴に対して「同意」や「共感」以上の、凄いガス抜きがある


※ この記事は、数年前の日記をネタに2020年4月に書いた記事の書き直しです


◆昔なら「お局様」と…

ゆかりちゃんは、金融機関一筋です。

そろばんや簿記はもちろん、ファイナンシャルプランナーの資格も持つ、
お金のプロであり、街の『相談役』でもあります。

そして支店では、女子のリーダーでもあります。

時代が変わりました。

20~30年前なら、ゆかりちゃんは「お局様」と呼ばれたことでしょう。
今では、「寿退社」が死語になりつつあります。

共働きは「普通」になりましたし、女性が定年まで勤めるのも珍しくありません。


◆喫茶コーナー

僕とゆかりちゃんは、娘のことを「るーちゃん」と呼びます。
もちろんニックネームです。

大学生のるーちゃんは、喫茶店でアルバイトをしています。
「喫茶店」と書きましたが、正確には、珈琲豆屋さんです。

すぐ近くのショッピングモール内にある、由緒正しい珈琲豆屋さんで、
るーちゃんはアルバイトをしているのです。
珈琲豆屋さんが、豆を売る本業のかたわらで、ホンの少しのスペースを
「喫茶コーナー」にしている、そんなイメージのお店です。

お客さんが、MAXで6人入れるかしら?というくらいの、狭いスペースしかないのですが、そこで、珈琲やスイーツや軽食もいただけます。

フードコートのすぐ隣という立地ゆえに、人の流れは、メッチャあります。

るーちゃんが言うには、この「喫茶スペース」を利用したがるのは、常連さんばかりだそうです。

お持ち帰りするお客様や、フードコートに行くお客様の方が、圧倒的に多いのでしょう。
そもそも「珈琲豆屋さん」ですから、豆を買って帰るお客様がメインです。

喫茶コーナーは、メインではなくサブなのです。


◆ガス抜き

るーちゃんが、アルバイト中に溜まったストレスを、
ゆかりちゃんに『ボヤく』という方法で、解消をもくろみました。

僕も一緒にいましたので、僕は僕なりに素晴らしい相づちを打ったり、ちょうど良いリアクションをするなどして、娘の『ガス抜き』に貢献したいと思いました。

僕は、ゆかりちゃんの言うグチは、聞いているとウンザリしてくるのですが、不思議なことに、るーちゃんのグチは聞いていて楽しくさえ感じます。

貢献感が感じられて、ワクワクします。

ただ、この日るーちゃんは、明らかに僕ではなく、ゆかりちゃんに話しかけました。
まあ、しかたないのですが、少し淋しい気持ちになりました。

ちなみに僕は、「甘い父親」とは思われたくないので、そのような淋しさを態度には出しません。

飄々と、雲のジューザのように、自由に、なんなら眠そうなフリをして話を聞きます。


るーちゃんが話し出しました。

「ああ! もう! ホント腹立つ!」
「ちょっと、もう~、聞いて欲しいの!」

「どうしたの、どうしたの~?」と、ゆかりちゃん。

「あのね、今日店でね」
「っていうか、今日に限ったことじゃないんだけど」

僕とゆかりちゃんは、るーちゃんのグチを、全力で聞く気満々です。
100%の肯定も、準備万端整っています。

なんなら、どっちがより聞き上手か、負けないぞ感 が少し漏れていたかも。

まだ1%も内容を話していませんが、それでも、るーちゃんは正しく、誰かが100%悪い、そう決まっています。

それは、僕もゆかりちゃんも共通の見解で、共通の思いでした。


◆ドヤる常連

「わたしが超~忙しいのに、なんで、何度も何度も話しかけてくるの~?」「忙しいの、見てたら分かるのよ~!」
「いくら常連でも、ホントに困る!」
「わがまますぎる!」

「常連さんって?」と、ゆかりちゃん。

「常連のおばあちゃん! 」
「ま、時々おじいちゃんもなんだけど」

「ほぉ~」と、僕。

「お年寄りって、何度も同じ話しするんよ!」
「そして、話が長い!」
「長すぎる!」
「ヒマな時ならまだしも、超~~~忙しいときでも!」
「わざわざ『奈星さ~ん』って呼ぶし!」
「レジにお客さんが並んでるのは一目瞭然なのに!」

「お年寄りは、話長いよねぇ~」と、ゆかりちゃん。

「話の内容は、どうでもイイようなこと、ばっかり!」
「毎回毎回、ど~でもイイことばっかりなの!」
「こっちにも、どうでもいい細かいこと言い出すし」
「まだ入ったばっかりの新人に『私のこと知らんの?』ってドヤるし!」

ゆかりちゃんが、この話に同調します。

この手の話のお相手は、僕なんかより、断然ゆかりちゃんの方が適任です。


◆ああいう人はねぇ

ゆかりちゃんが激しく同意します。

「ウチの窓口に来るお客さんにもいる~!!」
「話が長い~!」
「年寄りに多い」
「説教する人もいるんよ~」
「理不尽なクレーマーもいるし!」

「そうそう! どうでもイイようなことに文句言わん?」と、るーちゃん。

「言う言う~!」
「どうでもええやん!っていう文句を~」
「さも大問題かのように言う~~~」
「あとね、たとえイイ人でもね、とにかく世間話が目的の人には困るわ~」「きっと普段、話し相手がいないからや思うわ~」
「相手される方は、ホント迷惑!」
「こっちは忙しいのよ!」

すっかりエンジンのかかったゆかりちゃんは、

結論として、

断定口調で、こう言い放ちました。

「ああいう人はねぇ~」
「喫茶店に行けばいいのよ!」

「・・・」
「・・・」

るーちゃんは無言。

ここで、僕の登場だ。大爆笑しながら、僕は言った。

「ゆ、ゆ、ゆかりちゃん、ひ、ひ、ふ、ふふ、腹筋がつるわ~~」

「な、なによ?」

「るーちゃんが、たった今、『そんな人が喫茶店にきて困っている』って、そう言ったばっかりやん~」

「あっ!」

「なんで、『喫茶店行けばいいのよ!』なん~? オモロイけど~~」
「さすがに、るーちゃんも、今、言葉を失ってたでぇ~」

るーちゃんは、苦笑いで爆笑していた。


◆〆

結果的には、ゆかりちゃんの大ファインプレーでした。

るーちゃんに溜まっていた不満やストレスは、【同意】や【共感】でも、ある程度は『ガス抜き』できたことでしょう。

そしてそこに、ゆかりちゃんの天然ボケが加わったのです。

最高の『ガス抜き』になったハズです。
苦笑いでの大爆笑って、そうそう出来るチャンスは訪れません。


そして僕は、そんなゆかりちゃんが大好きなのです。




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