中学生の僕には、「かわいい仕草」と「かわいい子ぶっている仕草」の区別がつかなかった…
僕は、ぶりっ子が苦手だ。
ハッキリ言うと嫌いだ。
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「ぶりっ子」とは、「かわいい子ぶる」という行為を言う。
例えば、ひろ子が親友のさとみに、「なにぶりっ子してるのよ!」と言ったとする。この場合ひろ子は、さとみの行為を「ぶりっ子」と指摘している。
しかし!
しょっちゅうかわいい子ぶる女性を、「あの子はぶりっ子だから…」などと言ったりする。この場合は、あの子=ぶりっ子 と定義している。
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ぶりっ子には、「かわいい子ぶる」の他にも、「いい子ぶる」「上品ぶる」「カマトトぶる」なども加わるらしい。ネットで調べ、なるほどと思った。
1980年代前半。松田聖子さんが「ぶりっ子」と言われた。
当時、中学生の僕には、「かわいい仕草」と「かわいい子ぶっている仕草」の区別がつかなかった。
かわいい女子の心に、裏や駆け引きがあるとは、これっポッチも想像できなかったのだ。
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だからなのだろうか。
かわい子ぶりっ子を、男性ではなく、女性が嫌った。
「あざとい」などと非難した。
単なるヒガミではないのか? と、高校生の僕は思った。
57歳になって考えてみると、
そのあざとさを見抜けない男性への牽制球、でもあったように思う。
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しばらくして、今では、明確に「ぶりっ子」と分かる、
デフォルメぶりっ子やナンチャッテぶりっ子を、演じる女性が現れた。
ウチの娘や、妻のゆかりちゃんは、ときどきコレをする。
ぶりっ子を、これでもかとオーバーに演じるのだ。
娘やゆかりちゃんは、
ぶりっ子をする女性を「あざとい」などと、非難はしてはいない。
でも、
小バカにしている。
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さらには、
私はぶりっ子をする女性ではない、というアピールが数パーセント混じっている。57歳の僕には、そう感じる。
「私はサバサバした性格で、計算や、恋の駆け引きなどできないタイプ」
そんなアピールを感じるのだ。
わかるかなぁ。
女性が1人でラーメン屋さんに入り、普通にラーメンを食べた場合、僕は、「なんかイイな」と思う。
きっとサバサバした性格なのかな?って思う。
周りの目を、必要以上に気にしない人。『自分』が、ちゃんとある人。
そんなふうに想像する。
でも、その評価を狙ってラーメン屋に1人で行く女性は、似て非なるものだと僕は思う。
前者は、周りの目を気にしないからの行為で、
後者は、男性の目を気にしたからの行為だ。
真逆だ。
と、
これは、似て非なるものでしょ。
前者は、周りの目を必要以上に気にしていないのよ。
後者は、周りの、特に男性の目を気にしまくった結果の行為なのよ。
真逆なのだ。
ナンチャッテぶりっ子をするウチの娘を見ると、
・私は「ぶりっ子」などしない
・サバサバした性格
・だから、ぶりっ子のフリもできる
・ぶりっ子は、ぶりっ子のフリってできないでしょ
・私は、ぶりっ子じゃないからぶりっ子のフリができるの
そんな思考回路を、僕は、想像してしまうのだ。
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いまどき、ぶりっ子をする人って、かなり少ないと思う。
あるとするなら……
⑴若い女性の、うぶなアクションやリアクション
これを、ひねくれた人が見ると「ぶりっ子」になる
⑵かわいい女性の、素のアクションやリアクション
これを、ひねくれた人が見ると「ぶりっ子」になる
⑶若い女性が、心からそれが効果があると思って男性の前で演じるぶりっ子
これは、まだ若いから仕方ないよ 大目に見ましょ
⑷コミュニケーションに長けた女性の、上手なかわし方
下ネタを、「ぶりっ子」を演じて、ジョークにしてかわすのはアリでしょ
そして、最近のわが家で1番見る、
⑸必要ないのに、ジョークとして、オーバーにぶりっ子を演じる
「私は、実際はぶりっ子ではないの、だからこんなジョークができるの」
という計算が……
あと、僕は、めったに見たことはないが、可能性として
⑹20代後半や30代の女性が、あるいは40代以上の女性が、
心からそれが効果があると思って男性の前で演じるぶりっ子
これ、僕は、さとう珠緒さんしか見たことがないけど……。
つまり、僕が冒頭で書いた、
僕は、ぶりっ子が苦手だ。
ハッキリ言うと嫌いだ。
は、上記の⑸のことなのだ。
娘に説教をしたくなる。
嫌われたくないから、説教も、説明もしないけど。
実はなんと、ここまでは前置きだ。
*
ここからが本題だ。
ゆかりちゃんが、
「じょーじ、これ、せっちんグしといてぇ~」
と言った。
「せっちんグ」
これは、かわいい子ぶりっ子ではないか?
普通なら、セッティングという。なのに「せっちんグ」……。
僕に、「なに、その言い方。かわいい~」と、言って欲しいのだろうか?
さとう珠緒さん?
あ、⑸かな?
「私は、実際はぶりっ子ではないから、こんなジョークを言ったの」というサバサバ女性アピール?
今さら?
・・・なんかスッキリしないなぁ。
本気のぶりっ子だったのかなぁ。
でも、だとしたら、かなりイタイ。
ゆかりちゃんの年齢では、かなりイタイ。
周りに誰も居なかったから良かったけど……。
*
これ、事実は違った。
サバサバ女性アピールでもなく、本気のぶりっ子でもなかった。
後日ゆかりちゃんから、以下の解説があった。
「せっちんグー👍、の『せっちんぐ』だよ」
と。
なるほど。
その「せっちんグー👍」のイントネーションで分かった。
エド・はるみさんだ。
「グーググーグ、グーググーグ、グーググーグ、コォーーー!」
の、「せっちんグー」だったのだ。
ゆかりちゃんは、そう、僕に説明した。
(いやいや、「セッティング」だから、
それなら「セッティン,ぐぅ~👍」でしょ?)
(「せっちん」って、そこは変えなくてイイじゃん)
そう思ったけど、僕は、言葉にしなかった。
愛である。
まとめると、
僕は、純粋が好きだ。
本気で好きだから本気で計算する、というのはイイと思う。
本気なのだから。
純粋ゆえの計算だから。
よこしまな計算、
浅い考えでの計算、
薄っぺらな計算、
そんな計算はキライだ。
「せっちんグゥ~」は、素で間違えているから、こういうのは大好きだ。
おしまい
PS
私、奈星 丞持(なせ じょーじ)は、note創作大賞2024に応募しました。
恋愛小説です。
タイトルは『恋の賭け、成立条件緩和中』です。
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