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◆東京近代水道125周年 その3

明治26(1893)年10月22日、淀橋浄水場において、改良水道起工式が行われましたが、様々な苦難に直面したこともあって、ようやく明治31(1898)年12月1日に淀橋浄水場から神田・日本橋方面に給水の開始となります。
当時の水道は、一般家庭の場合、各戸に給水されるものではなく、街路に設置された共用の水栓を利用するものでしたが、すぐに容器一杯となってしまいました。また、旧水道では雨天の際には濁りもつきものでしたが、鉄管で密封された水は衛生的にも安全で、その圧力は防火上の効果が十分期待できました。
当局者や識者は、防火上の効果も十分期待でき、殖産興業も大いに期待されることから、改良水道の実現を大変喜びました。一般市民は、それまで水道料金は全て地主が負担していたため新たな負担が生じたことに戸惑いましたが、その便利さに給水量は年々増加していきました。

【改良水道の拡張工事の始まりと震災からの復興】
1.東京市の発展と水道拡張の必要性
明治後期は、社会経済が目覚ましく発展したことで、都市化の波はすでに東京全体に及んでいました。

改良水道は当初、給水人口を150万人と想定し、1日標準給水能力は16万7千㎥で計画していましたが、給水量は年を追うごとに増加していき、明治42(1909)年の1日最大給水量は既に21万6,000㎥を超えていました。この急速に増えた水道需要に対応するために、2度にわたって淀橋浄水場を拡充し、給水人口200万人、1日給水能力24万㎥の施設に増築しましたが、ろ過能力の限度に近い、ぎりぎりの給水状況でしのいでいました。全工事が竣工した明治44(1911)年時点で見ると、市内戸数の約2分の1、市人口の約3分の2に給水を行っていたものの、水道を使用していないものは、なお約20万戸、70万人を数えました。

明治末期以降、東京市は更に急発展し、関東大震災以前に、既に市街化は近郊にまで及び、大正3(1914)年の東京駅開業後の業務用ビル増加、住宅建設の増加などもあり、改良水道建設完了後まもなく、東京水道は更なる拡張の必要性に迫られました

2       第一水道拡張事業の開始
(1)拡張計画の決定と当面の給水対策
さらなる改良水道の拡張に迫られた東京市は、給水能力の倍増を目的とした水道施設の拡張計画を策定、大正元(1912)年、第一水道拡張事業として事業認可を取得し、工事に着手しました。

第一水道拡張事業計画は、当初大正2(1913)年から大正8(1919)年までを事業期間とし、多摩川を水源として村山貯水池、境浄水場、和田堀浄水池(現在は和田堀給水所という)などの建設を含むものでした。

明治42(1909)年4月に中島博士らに東京市水道拡張に関する調査を委嘱することになりましたが、中島博士は、明治44(1911)年12月に拡張計画として大久野貯水池案・村山貯水池案の2案を挙げました。この2案は、貯水池の位置、将来の補助水源、工費の大小、工事の難易度、水質等に多少の差があるものの、いずれも主要水源を多摩川系統に設置する貯水池に求めたもので、工費が400万円(明治40年頃の100円の価値は、今に換算すると109,000円ほどですので、400万円=およそ43億6000万円に値しますと安いこと、補償関係費用が少ないこと、工事が容易であること等を理由に、村山貯水池案が選定されました。
拡張計画完成までの間の当面の給水対策として、漏水及び乱用の防止給水取締りの励行節水等を掲げ、拡張事業が完成するまでの歳月を乗り切ることとしました。

(2)拡張事業の経過
第一次水道拡張事業は、大正2(1913)年11月から着工しましたが、第一次世界大戦の勃発などによって、物価・賃金が異常に高騰したことで大正6(1917)年、事業期間を2年間延長し、大正10(1921)年度までとしましたが、大戦終了後も物価・賃金が大戦前に戻らず、既定の金額では所定の期間内に事業の遂行が望めないことが判明します。それによって、大正9(1920)年に工事を第一期(大正2(1913)年度~大正12(1923)年度)と第二期(大正13(1924)年度~大正17(1928)年度)に分割されます。

第一期工事では、羽村村山線、村山貯水池の一部(上貯水池)、村山境線、境浄水場ろ過池12池等を整備することとされ、物価・賃金上昇等の影響を受けつつも工事が進められはしましたが、大正12(1923)年の関東大震災の影響で工期が1年延長され、大正14(1925)年3月に完了となります。

村山貯水池
(出典:東京近代水道125年史)


【出典】東京近代水道125年史

【東京都水道歴史館】
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次回 <関東大震災からの復興と第一水道拡張事業の完了>へつづく

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