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日記 2019.06.04 -BROWN

いままで使っていたコスメがしっくりこない。妊娠したからなのか、それとも、その他に理由があるのか、わからないのだけど、特にチークの色が肌になじまなくなったような気がする。

つわりもあって、この数ヶ月はあまり積極的に外出しなくなった。気がつくと、数日、化粧をしない日も続いていた。

ようやく体調もすこし落ち着いてきたこともあり、今日は思い切って、手持ちの口紅を総入れ替えすることにした。鏡台にスタンバイしていたリップは全部で6本。総入れ替えのつもりだったが、すこし考えて、そのうちの1本は、そのまま残す。(NARSのカルメンという真紅のリップ。たくさん使う色ではないけれど、私の肌にもっとも合う赤だと思っていて、これだけは手放せない)

私のメイク用具はたくさんの色が揃っているけれど、実際に私が普段の生活で使用するものはほんのすこしなので、気分や季節に合わせてその時期の気分に合うものをセレクトしておいて、しばらくそればかり使う。他のコスメはメイクボックスのなかにきちんとしまわれておやすみしている。

この二年半の間は創作ばかりしていて、ほとんどメイクについて考えることすらなかった。

それが、今日、突然、火がついたように、私は新しい口紅を選び始めた。気持ちのままに色を選び、いまままでほとんど使ったことのなかったブラウン系のリップを唇に乗せると、とたんにぼやけていた視点が定まった。私はそのままそのリップを少量指にとって頬にも乗せた。そしてそのまま、まぶたにも少し。ワントーンのメイクがこの数年ずっと好きだ。そこに白のアイライナーを目尻にだけささやかに引く。心が華やいだ。そして、とてもしっくりきた。今の自分にぴったりだ。

私は近所のスーパーにみりんを買いに行くためだけに、こうしてメイクをしてもいいなあと思い始めていた。そして、明日はこっちのリップを塗りたいから、あ、あの服を着て、そうだすこし早起きしよう。と、思い始めていた。

私は久しぶりに、短く切りそろえた爪にも色を乗せた。ずいぶん古いネイルだったから、ねっとりと固まりかけていたけれど、ようく振って、10本の指先をすべて真紅で染めた。私の唇に乗せたブラウンの口紅は、もとの唇の色と混ざり合って、深い赤に発色していた。その色と、私の爪の色は同じだった。

ファンデーションはつけずに、まつげにたっぷりと黒のマスカラを塗った。まつげはカールさせずに下を向いたままだったけれど、お構いなしで。まつげは黒く艶めいて、頬に影を落とす。

影。陽が落ちた。

バスルームの磨りガラスからは夕焼けのピンクが透けていた。私は窓を開けて夕焼け空を見つめた。あまりに美しかったから、二階に駆け上がり、寝室の大きな窓を開けて、もう一度眺めた。


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