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加奈子(2)
「お礼なんて、メールのありがとうだけで十分だ」
そう思うけれど、それ以上考えるのは面倒だ。
そういう面倒なことがあるから、どうも女は苦手だ。
俺は、そこで考えることをやめた。
テキトーに勉強して、夜の11時には寝てしまった。
それでも、朝になり、学校には行かなければならない。
口うるさい母と妹が、制服の洗濯とアイロンが面倒だったとか何とか言ってきたけれど、聞いているふりして謝って電車に乗る。
ただ、文句を言われ過ぎたこともあり、加奈子のお礼とかは、すっかり忘れてしまった。
そんな、ボヤッとした状態で、いつもの教室に入ると、加奈子が立って俺を見ている。
「あ、そうか、お礼とか何とか言っていたなあ」
「ちょっと面倒」
なんて思いながら、自分の席に。
そして、すぐ「その面倒」が声をかけてきた。
「翔君、本当に昨日はありがとう」
「それで、これ・・・お礼・・・」
「私が作ったので、味はわからないけれど」
加奈子は、顔が赤い。
そして、籐のランチボックスを差し出してきた。
「え?何?」
「いいよ、お礼なんて、当たり前だし」
お弁当を、作ってくれたらしい。
いつも、学校の売店でおにぎりしか買ったことがないのに、それを見ていたのかと思う。
しかし、そうは言っても、男どもも女どもも、みんな注目して見ている。
加奈子は赤い顔しているし、恥をかかせたりして泣かれても困ると思った。
「うん、じゃあ、遠慮なく」
「でも、今回だけにしてくれよ」
あらぬ噂になりそうだし、とにかく、俺は女には無粋だ。
全くもって、そういう自信のカケラ一つもない。
ただ、ランチボックスを受け取っても、加奈子は俺を見ている。
「あの・・・まだ、何か?」
聞いてみると
「あのね、母がすごく感激して、翔君のこと・・・」
「一度、連れてきてって言っているの」
加奈子の顔は、ますます赤い。
そして、困ったような顔をしている。
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