紫式部日記第84話心にくからむと思ひたる人は、
(原文)
心にくからむと思ひたる人は、おほぞうにては文や散らすらむなど、疑はるべかめれば、いかでかは、わが心のうち、あるさまをも深うおしはからむと、ことわりにて、いとあいなければ、仲絶ゆとなけれど、おのづからかき絶ゆるもあまた。住み定まらずなりにたりとも思ひやりつつ、おとなひ来る人も難うなどしつつ、すべてはかなきことにふれても、あらぬ世に来たる心地ぞ、ここにてしもうちまさり、ものあはれなりける。
(舞夢訳)
(友人の中でも)奥ゆかしくあるべきと努力している人からすれば、(私のように宮仕えに出るような)様々に紛れた暮らしをしている人に手紙を送れば、結局(ずさんな扱いをされ)他人に手紙を見られてしまうだろうと警戒しているに決まっているから、私としても「私を信じられない人が、どうして私の本当の気持ちをわかってくれるのだろうか」と思うし、そのまま当然に絶縁と言うわけではないけれど、つまらない関係となり、交流がなくなってしまった人も多い。
これも紫式部らしい難解な原文。補って意訳しても、理解が難しい。
要するに宮仕えをする女性(宮仕えを好まない奥ゆかしい女性からすれば、恥ずかしい女性)(男性貴族との交流も多くなるので、いろんな艶な関係も生まれやすい、そんな女性を卑下する心理もあるかもしれない)には、手紙などは送ることは危険なのである。(誰に盗み見されるか、その結果、自分や、自分の家が、どんな酷い噂をされるか、心配でしかたがない)(宮中は特に狭い社会、足の引っ張り合いなのだから)(紫式部自身が、宮仕えをするまでは、そのような発言をしていた可能性が高い、だから、宮仕えをしていない友人に遠慮の気持ちがある)
そのような結果として、はっきりと絶縁をしないまでも(絶縁も、下手に行えば、悪い噂が流れるだけ、何の得にもならない)、交流は、慎重に、控えることになる。(ただ、それでも、自然に手紙のやり取りは無くなって行く)
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