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拷問について 拷問の手順

エメリコの「異端審問官の指針によると、
① 拷問適用基準は、
「尋問に対する返答が絶えず変動する者」
「異端の風評があり、証人が不足する場合」
 他7要件であり、決定的な自白が欠ける場合になる。

※異端審問の場合は、被告の魂の(ローマ・カトリックに対する犯罪への)断罪であり、単なる世俗(現世)における犯罪の処理やと正義の回復ではない。
※あくまでも、被告(異端)を、悔悛と誓絶を効率的に導くために、拷問を積極的に使用したのである。
※異端審問官は、「霊魂の裁判官であり、霊魂の救済者(※肉体ではない)である」と自認していた。(拷問による肉体の痛み、苦しみは、異端者を裁く神の恩寵と考えていた)

② 拷問の適用を決定した場合は、被告(異端)に、通告を行う。
「拷問を用いるべき十分な理由があるので、お前を拷問する」
※要するに有罪の証拠がない。
※被疑者は、拷問による肉体の痛みで、「してもいない異端行為」を自供した。

③ 拷問を用いる場合の審問官の心得」が、記載されている。
「拷問の実行を急いでいると見られてはならない」
(他には証拠がないと見抜かれるからである)

「苦痛は軽度にとどめ、流血にいたってはならない」
※あくまでも原則であり、流血、骨折は免れなかった。

欺瞞のような原則も書かれている。
「拷問による自供には虚偽が多く、効果が少ないことも、常に考慮に入れておかなければならない」※しかし、拷問は継続された。

「恐怖と痛みのあまり、犯してもいない罪を申し立てる者もいる」
※異端審問官は自白を重視したので、無視された。
※そもそも、虚偽の自供を強いていたし、後に撤回すれば、「嘘をついた」として、極刑に処した。

「あるいはいかなる苦痛にも屈しない強者もいるため」
「特に魔法使いは無感覚になる術を使うし、彼らは自白する前に絶命する」
※拷問による殺人の欺瞞的表現である。
※殺すほどの拷問をしておきながら、被告が行ってもいない魔術のためと、殺人の責任は取らない。
※異端審問官者は、異端撲滅のために、この世の罪を犯しても、裁かれることが極めて少なかった。(同僚の異端審問官により、互いに免罪されるシステムが確立していた)

「獄吏が拷問を準備するのを見せながら、審問官は自発的な自白を勧める」
※隣室でも拷問は行われていて、悲鳴が聞こえて来る状態。
※被告は、その悲鳴を恐れて、「自白」を行う場合も多かった。
「自白に同意しなければ、獄吏に命じて衣服を脱がせる。(その間も自白を勧告する)」
「それでも自白を拒んだら、別室に連行して、全裸のまま別室で再び、自白を勧告する」
※これも一種の恥辱拷問になる。

「勧告も約束も効果がないことが明らかな場合は、拷問を実行するが、古来の拷問を用いるべきである」
「新案の方法や、精妙な方法を用いるのは、適切ではない」
「拷問の間にも審問を続行し、公証人は尋問と返答を記録すること」
※拷問の時だけ、痛みに耐えかねて「自白」する場合もあったため。

「節度正しい拷問にも自供しない場合には、別の型の拷問道具を見せて、これら全てにかけられることになると、言い聞かせること」(苦痛の度合いを上げていく)
「頑強に沈黙した場合は、翌日以降も、拷問を繰り返す」
※原則では、一容疑で拷問は一回だけになるが、「再び始めるのではなく、あくまでも継続」のため、続行とされた。

「拷問の後、拷問器具の無い場所に連行して、拷問中に成した自供の筆記を読み聞かせ、確認させる」
「被告が否認する場合、拷問の全過程が終了していなければ、拷問を継続する、終了していれば苦痛から解放する」
「最後まで自白しなかった場合、被告が判決の確定を要求すれば、審問官は拒否できない」
「その時に用いる文章は次の通りとなる」
「本人の書類を精査した結果、問題の容疑は、何一つ発見できなかった」
(理論上、拷問は最後の手段であり、最後に審理される書面からは、拷問の文字を消す)
(つまり、拷問は実施していないと、してしまう)
(ただし、特にスペインの場合は、拷問の乱用は、無制限だった)

※エメリコの先輩にあたる、スペインのドミニコ会教会法学者ペーニャは、エメリコ以上に拷問における節度を要求している。
「異端審問官は、様々な種類の新しい拷問方法を考案するが、好ましいことではない」
「私は、残忍な異端審問官に反対する」
「彼らは、法と羞恥心を蹂躙し、無防備な被告に、落命したり手足を砕くほどの苦痛を与える」
「本来は、釈放するにしても、処刑するにしても、被告は五体健全でなければならない」
※ペーニャは、拷問を否定するのではなく、節度を求めた。

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