紫式部日記第96話

(原文)
中清のは、「丈どもひとしくととのひ、いとみやびかに心にくきけはひ、人に劣らず」と定めらる。右の宰相の中将の、あるべきかぎりはみなしたり。樋洗の二人ととのひたるさまぞさとびたりと、人ほほ笑むなりし。はてに、藤宰相の、思ひなしに今めかしく心ことなり。かしづき十人あり。又廂の御簾下ろして、こぼれ出でたる衣の褄ども、したり顔に思へるさまどもよりは、見どころまさりて、火影に見えわたさる。

(舞夢訳)
(尾張守藤原)中清が選んだ舞姫のお世話役は、「背丈が同じくらいに揃い、とにかく都会風でしっとりした様子は、全く他に劣るとは思われない」との評判になっています。右の宰相の中将の舞姫のお世話役は、やるべきことは全て準備してありました。それから樋洗の二人の童がきちんとしていて、ひなびた雰囲気であると、見物者たちは微笑んで見ているようでした。
最後に藤宰相の舞姫のお世話役は、そう思って見ているからかもしれないけれど、いかにも現代風で格別な様子。10人のお世話係がいます。孫廂の御簾を下ろして、こぼれ出ている衣の褄が、いかにも完璧に整えたと自慢げなものより、よほど見どころが多くて、灯火に照らされ(美しく)見えています。

この文も紫式部による見たままの記録。
淡々としていて、感情を挟んでいない。

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