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石仏

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石仏について、書きます。
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#歴史

石仏の話(54)元興寺

奈良町を歩いていると、元興寺がある。 元興寺と言えば、日本最古の歴史を誇る仏教寺院飛鳥寺を起源として、平城京に移ってきた歴史を持つ。 戦前までは、それが荒れ放題で、お化けが出るとまで言われていたらしいけれど、戦後の住職の御尽力により整備され、今は世界遺産の石碑が門前にある。 ほぼ官寺の東大寺や藤原氏の氏寺としての興福寺などの大寺も素晴らしいと思うけれど、この元興寺は庶民の信仰の雰囲気に満ちている。 特に信仰に根ざした智光曼荼羅を中心とする浄土信仰、地蔵信仰、聖徳太子、

石仏の話(36)自他法界平等利益

石の柱に「自他法界平等利益」と書いたものがある。 仏様の造形はなされていない。 言うならば文字塔になる。 意味としては、「自分も他人も世界も平等に幸せになりますように」ぐらいだと思う。 まさに仏教の真髄のような言葉になるけれど、実はそれが最大の難事である。 他宗教の中には、自らの信仰に異とするもの(人間)は、「神の意に反する」のだから、神の民ではない(つまり悪に属する)ので、滅ぼさなければならないとするものもある。 神の意と信じ、他宗教の民を殺戮する。(根絶やしにするのが神

石仏の話(34)血と涙の歴史

この現代の日本であっても、また世界においても、他人を残虐に害する行為は後を絶たない。 自分のため、自らが所属する集団のため、自らの国のためと称して、無抵抗で弱い相手を残虐に害する。 害される人の恐怖、痛み、涙は目に入らないのだろうか、心に感じるものは無いのだろうか。 やはり人の世は、血と涙の歴史。

石仏の話(29)

お寺の主要構成は、木材。 だから火災にあえば、焼失することが多い。 それでも、敷地内の石仏はかなり残る。 寺が焼失した悲しさや自責の念を、残った石仏にぶつける。 または再興の誓いやお願いを、残った石仏にしたことも多々あることと思う。 お寺の本堂などという立派な場所に収められていないけれど、仏としては何ら変わることはない。 石仏は、どんな時でも、苦しむ人の支えとなった歴史を持っている。