谷崎潤一郎のグダグダとした言い訳
それから、ここにもう一つ、私が貧乏している重大な原因は、遅筆と云ふことに存するものである。これは原稿の催促に来る記者諸君にはいつも訴えてゐるのだけれども、その程度が如何に甚しいと云ふことを本当に諒解してくれてゐるのは、私と起居を共にする家族の人達だけであって、記者諸君などはいい加減に聞いてゐるらしいのが残念でならない。
実は私も、凝り性とか彫琢の苦心とかを看板にしているやうに思はれるのが嫌であるから、くどくは説明しないのであるが、私の遅筆はそんな殊勝な理由よりも、主として体力