京都ホームズNGシーン紹介
唐突ですが、今日は著作、京都寺町三条のホームズのボツ……というよりも、NGにしたシーンのご紹介をしたいと思います。
ちなみに担当編集さんにご指摘を受けてのNGでは、著者判断で、NGとしたものです。
ではでは、① 巻のまずはNGではない、書籍に掲載された文章から。
202ページ。鞍馬山にハイキングに行った清貴と葵が、貴船の川床でランチを食べるシーンです。
(どんなハイキングだよ笑)
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川のせせらぎと、木々の葉が風になびく。
私にも創作の才能があれば、何か書きたくなるくらい。
それは無理だから、せめて俳句でも。
「夏の雨、あつめてはやし……」
ダメだこれじゃあ、芭蕉のパクりになっちゃう!そもそも、この川は『あつめてはやし』というほど、速くないし。
「夏の雨がどうかされました?」
背後でホームズさんの声がして、ビクンと体が跳ねた。
「あ、いえ、なんでもないです、本当に」
「最上川ですか?」
「き、聞こえてるじゃないですか、ひどい!」と声を上げる私に、
「ちなみにここの川は、そのまま貴船川というんですよ」
笑みを湛えながら説明してくれるホームズさん。
くっ、この少し意地悪な余裕の笑み。
いけず京男子、健在だ。
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と、ここでまでが、掲載シーン。
NGシーンでは、もうちょっとやりとりがあります。
では、書籍に掲載するのを躊躇い、ボツにしたシーンです。
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「ちなみにここの川は、そのまま貴船川というんですよ」
笑みを湛えながら説明してくれるホームズさん。
くっ、この少し意地悪な余裕の笑み。
いけず京男子、健在だ。
「そ、そうなんですね」
顔が引きつることを感じながらジュースを口に運ぶ。
「ええ。それでは、葵さん。川の名前が分かったところで、今の俳句を最初から一緒に詠んでみましょうか」
「へっ?」
「さん、はい。『夏の雨、あつめてはやし……』」
「ちょっ! やめてください!」
危うくジュースを吹きそうになり、私は手で口許を覆う。
いけずどころか、鬼ですか。
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復唱させようとする清貴。まさに鬼の所業です。笑。
さて次は、④巻。99ページ、葵が清貴にチョコレートを渡すところです。
まずは、掲載シーンから。
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「本当にありがとうございます。素敵な誕生日プレゼントにもなりました」
その言葉に、私はまた「えっ?」と声を上げた。
「――誕生日?」
「はい、今日、二月十四日、バレンタインは僕の誕生日なんですよ」
「え、ええ?」
驚きから声が裏返り、私の素っ頓狂な声が空に響く。
「そんなに驚かれなくても」
「お、驚きますよ、だって、知らなかったですもの」
いや、でも、それで店長が『君にとって特別な日なのに』と言っていたんだ。
「言ってませんから、知らなくて当然かと」
「い、言ってくだされば、プレゼントを用意しましたのに」
「プレゼントはいただけましたよ。ありがとうございます」
ホームズさんはラッピング袋を手に子どものような笑みを見せる。
「い、いえ、それは『バレンタイン』の贈り物ですから。ちゃんと、『誕生日プレゼント』をお渡ししたかったのに」
「そのお気持ちだけで十分嬉しいです」
「いえいえ、後日ちゃんと用意します。正直言うと、ホームズさんのような方に、何を贈って良いのか分からないので、また、クリスマスの時の手作りクッキーのようにしょうもないものを贈ってしまいそうですけど」
「しょうもなくないです!」
ムキになったような声を上げた彼に、私はまた驚いて瞬く。
「あ、いえ、あの時のクッキー、とても嬉しかったですよ。もったいなくて毎日少しずつ食べました。……美味しかったです」
そう言って、そっと目をそらしたホームズさんに、嬉しさから鼓動が強くなる。
「あ、ありがとうございます」
そんなに喜んでくれていたなんて思わなかった。
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ここから、NGはシーン
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それなら、またクッキーを贈ることにしようかな。いやいや、それではあまりに芸がなさすぎる。せめて、違うのお菓子にしよう。料理はあまりできないけれど、お菓子作りは割と好きな方だし……。
「そうだ、ホームズさん。もし良かったらリクエストしてください」
「リクエスト?」
「はい、誕生日プレゼントのリクエストです。お菓子作りは好きですし、マドレーヌとかマフィンとかシフォンケーキでも。なんなら肩もみ券もつけますよ」
「――肩もみ券?」
ホームズさんは少し上ずったような声を上げて、私を見た。
「なんて、レトロすぎますよね。小間使い券でもいいですし」
まぁ、今も『蔵』の小間使いのようなものだけど。
「肩もみ券に、小間使い券て。……あかん、そんなん、いろいろと」
ホームズさんは口に手を当てて、顔を背ける。
「はい?」
「あ、いえ……リクエストは、その、今は決められないので、じっくり考えさせてもらって良いでしょうか」
「はい、待ってます」
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ここまでが、NGシーンです。
NGにした明確な理由はないのですが、清貴の反応が露骨すぎる(笑)のと、話のバランスを考えて、こちらのシーンはまるまるカットすることにしました。
しかし『肩もみ券』と『小間使い券』に反応する清貴は、十分すぎるほどに、健全な二十代男子ですね、笑
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