ありがとうとごめんね~6年間通った保育園を卒園するきみへ~
先日、長男の保育園の卒園式がおこなわれた。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で規模が縮小されたりしたけれど、中止にならなくてよかったよかった(謝恩会は中止になりました涙)。
卒園証書をもらい、「大きくなったらなりたいもの」をしっかり発表した姿は希望にみちあふれていたし、子どもたちが歌った4曲は、どれも保護者の涙腺を破壊してあまりあるエネルギーだった。
ドキドキだった謝辞も、最後まで読み上げることができてひと安心…。
いやほんとね…卒園式、よかったです。
でも、ふと気づいた。
がんばって保育園に通った子どもたちへ親からメッセージを伝える場面は何もなかったこと。
だから、ここで「長男(いっちゃん)への謝辞」書いておこうと思う。
保護者代表じゃなくて、あくまで私個人から長男への今の気持ちを伝えておきたい。
謝辞の「謝」に、「ありがとう」と「ごめんね」の意味をこめて。
∞∞∞∞∞
いっちゃんへ
卒園おめでとう。
卒園式での立派な姿をみることができて、かっかはとてもうれしい。
本当に本当に、大きくたくましくなったね。
堂々と卒園証書を受け取る姿に重なってみえるのは、やっぱり保育園にはじめてお願いした日のことかな。
はじめて保育園に行った日のことは、きっと覚えてないね。
まださんちゃん(末っ子)よりもちっちゃな赤ちゃんだった。7月生まれだから、8カ月の頃だったんだよ。
いっちゃんは、はじめての場所、はじめての先生、はじめてかっかと離れて過ごすこと、何もかもがはじめて。
ただならぬ空気を感じて泣き出したきみは、いつまでもかっかの服をしっかりにぎって離さなかった。
しかたなく先生にやさしくひっぺがされて、
「ママの気持ちが赤ちゃんに伝わるから、しっかりね!」
なんてベテラン先生にどーんと背中を押され、振り返らずに部屋をでた。足早に廊下を歩きながら、実はかっかも一緒に泣いてたんだよ。
いっちゃんと離れるのがさみしくてね。
あの頃は、「自分ひとりの時間がほしい」なんてあまり思わなかった。抱っこ紐の中にいっちゃんがいないと落ち着かなくて、なんだかお腹がすーすーして心細かった。いっちゃんの保育園が決まってほっとしたものの、実は4月が来るのがずーっとさみしくてたまらなかった。
だってお腹の中にいたときから、一心同体だったからね。
生まれてからも、この世の中にこんなにかわいいものが、愛おしく思えるものがあったのかって、びっくりした。日に日に大きくなるきみを観察しながら、その成長ぶりに目からうろこな毎日だった。いっちゃんの笑顔はずっとながめてても飽きなかった。ぷにぷにすべすべなお肌は極上の癒しだった。
なかなか寝なくて苦労したこともあったけど、そんなことはきみがあどけなく笑えばどこかへふっとんでしまった。
どこへ行くにも抱っこ紐にほいっと入れて、家でもぎゅーっとして、一緒にゴロゴロ過ごしていたから、いっちゃんと離れて遠くの職場に通うなんて、とても頭が追いつかなかった。
お腹の中にいたときみたいに、いっちゃんをもっともっとちっちゃくして、かばんの中にいれて一緒に仕事にいきたいなんて妄想までしたよ。
そんなかっかのさみしい気持ちより先に、保育園に慣れたのはいっちゃんだったかもしれないね。
いっちゃんはがんばった。
少しずつ、泣かずにお別れできるようになった。
熱がでることも減ったし、先生からお迎えをお願いされる電話も少なくなっていった。
6カ月のときにわかった乳製品のアレルギーもあったけど、2歳くらいまでには給食から除去しなくても大丈夫になった。
最初は大豆のミルクを飲んでいたもんね。
本当に本当に、よくがんばったね。
そういえばかっかもね、いっちゃんが保育園に行っている間、お仕事がんばってたよ。
だけど、なかなかうまくはいかなかった。
6時間の時短勤務で帰らせてもらっていたから…というのもあるけど、もともと要領がよくないから仕事が全然終わらない。それまでは残業に頼っていたことが身にしみてわかったんだよ。
職場のみなさんは子育てしながら働くことに理解はあったし、とてもよくしてもらってる。でも、時に先輩方はとてもきびしいこともあった。今思えば愛のムチなんだけどね。
なかなかできるようにならない仕事に、「いつになったらできるようになる?」って言われたこともあった。
理不尽に思えることがあって、終わらない仕事が積み上がって、締め切りが音もなく近づいてきて、たくさんミスをしちゃって…
それでもみんなより早い時間に帰らなきゃいけない。
そんな日は暗い気持ちをなんとか胸におしこめて、職場の前の坂道を一気に駆け下りた。ぼーっと電車に乗って、駅から保育園まで自転車をこぎながら、ふがいない自分に涙があふれた。
涙が止まってから保育園の玄関をあけるんだけど、ばったりでくわした先生に目が赤いのがばれて「ママ、どうしたの?大丈夫?」って声をかけてもらったのに、それにもあいまいに笑うしかできなかった。ちょっと油断したら大声で泣きだしそうだったからね。
クラスに入ると、暗くなるまで待っててくれたいっちゃんが、つかまり立ちでぴょんぴょんうれしそうに跳ねながらこっちをみて笑ってた。そのプレーリードッグみたいな姿が愛おしくて、また泣きたくなる。
なんとか家までたどりついたら、今度こそがまんができなくて、いっちゃんの前でわんわん泣いちゃったね。仕事での感情を家に持って帰らないように気をつけてたつもりだったけど、全然ダメだったね。
ちっちゃないっちゃんは、よくわからずきょとんとしてた。
泣いてたのは、いっちゃんのせいじゃないんだよ。
かっかは、社会人としての自分が情けなくてしかたなかったんだ。
あのときは、不安な気持ちにさせてごめんね。
泣いてたら、いつものようににこにこしながら、あったかくてちっちゃな手でぎゅうっとしてくれて、ありがとう。いつもどおりの無邪気なきみがそこにいてくれるだけで、救いになっていたんだよ。
できない自分に向き合うのがつらくて、「仕事いきたくないなぁ」なんて思うような朝にもね、へんてこな歌をきみが熱唱するから、かっかは自転車のペダルをこぎだすことができたんだ。
そう、いつも元気のみなもとはいっちゃんだった。
それなのに、きみを傷つけてしまうこともあったよね。
じろちゃんが産まれて、2歳半でお兄ちゃんになったいっちゃん。
産まれたばかりのふにゃふにゃのじろちゃんと比べたら、とてもしっかりみえてしまって、期待しすぎちゃうことがあった。
まだまだ2〜3歳。甘えたい時期だったのに、厳しすぎる言葉を投げかけてしまって本当に後悔してる。
かっかはいつでも「お母さんとしてのはじめて」をいっちゃんと一緒に経験するから、慣れない戸惑いや不安な感情を知らないうちにぶつけてしまっていたんだと思う。
「もっとやさしいかっかならよかった…」
って言われて、そのとおりだと涙がでた日もあった。
つらい思いさせて、本当にごめんね。
それでも、「ごめんね」って抱きしめたら「だいすきだからだいじょうぶだよ」って…ありがとう。無理させてたかな。大丈夫だったかな…今でも心配になる。
小さな弟たちが一緒に遊びたくて、お邪魔しちゃうこともたくさんある。さんちゃんが大きくなってきて、さらに大変になってきたよね。それでも、ぐっと色々やりたいこともがまんしてくれているの、知ってるよ。
大変な時、さっとお手伝いしてくれてるの、本当に助かってる。
いつも頼りにしすぎてごめんね。ありがとう。
そう言ったら、「お兄ちゃんになりたかったんだからいいんだよ」って誇らしげな顔するよね。その言葉はうれしいけれど、無理しすぎないでいいんだよ。がまんしすぎなくていいんだよ。
「小学生になったら、たくさんお勉強もしたいし、運動もしたいし…将来はスポーツ選手になる!なんのスポーツかはたくさんあって決められないよ~」
って、夢をふくらませてお話ししてる顔をみていたら、あのウミガメの赤ちゃんみたいだったいっちゃんはどこにいっちゃったのかなってちょっとだけ胸がきゅっとする。
時々、とっても不思議に思うよ。
こんなに優しくて心が広くて、前向きに自分から色んなことに挑戦できる子が自分から産まれてきたってことが。
かっかも、4月からは「小学生のお母さん」としては1年生。それから、さんちゃんの育休が終わるから、また働くことになる。
あの頃よりは、少しはかっかも強くなれたかな?
正直にいうと、かっかはまた働くことがちょっとこわい。心に余裕がなくなって、家でみんなにごはん食べさせたり、楽しく過ごしたりできるかちょっと自信がない。
だからこそ、小学校っていう新しい環境を素直に楽しみにしてるいっちゃんがすごくまぶしくみえる。
ちょっとお願いがあるんだけど、その元気と勇気を分けてもらっていいですか?
勇気玉をかばんに入れてお仕事に行けたなら、またがんばれる気がするよ。
さいごに、いっちゃんは自分の気持ちをお話しするのがちょっと苦手だから、それだけが心配だな。
かっかはいつでも味方でいるつもりだから、いつでも、なんでも話してほしい。
かっかに話せないことは、とっとでも、じぃじやばぁばでも、先生でもお友だちでも誰でもいいから、伝えて助けてもらうんだよ。
なんでもひとりでやりたがる頑張り屋のいっちゃんだけど、まわりに頼ることはかっこわるいことじゃないからね。
そんなふうに頑固で不器用なとこだけは、かっかに似ちゃったみたいだから許してね。
なんだか「ごめんね」の「謝」ばかりになってしまったけど…最後はやっぱり「ありがとう」を伝えたい。
6年間、一緒に成長してくれてありがとう。
ランドセルしょって小学校に通う姿、今から楽しみにしています。
かっかもまだまだ修行中だし、いっちゃんに助けてもらうこともたくさんあると思うけど、これからも一緒に、進んでいこう。
2020年3月 かっかより
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