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たった5年 されど5年

どろんこ園が14時までの訳。
子育ての主役はお母さんです。(お父さんももちろん主役、と言いたいところですが、出産授乳、就労システムでお母さんが主になっている場合が多いので、あえてお母さんと表記)
結論から言ってしまうと、お母さんがゆったりとした気持ちで乳幼児期の子育てを楽しむには長時間労働、長時間保育は向いていないからです。

私自身、息子が1歳になったころから職場復帰し、2歳まで保育園にお世話になりました。お迎えが18時半を回ることも多く、本当にバタバタで大変な生活でした。それでも孤独な子育てのしんどさ、子育てだけしている自分を認められない自分自身がいて…子どもは大切でかけがえのない存在であったけれど、仕事をしている自分を手離せなかった。

17時を過ぎ、他の子のお母さんがお迎えに来る頃になると、お友だちを噛んだり、自分を噛んだりするようになった息子に、ごめん!と思いながらもすぐに決断できなかった…
娘を妊娠、出産を経て育休中には、泣いたりぐずったり、暴れたり、今なら妹が生まれて、たくさんのがんばりや葛藤を抱えていた息子のその言動は、当然だと理解できるのですが、その頃の余裕のない私は 息子や自分自身を責め続けて、本当に苦しかった。
でも、そんな息子のサインのおかげで、私は自分を見つめて、たくさん悩んで考えて、夫とも話し合って、子育てに向き合う決心をすることができました。

子育てに向き合おう!楽しもう!と決めてから、世界がまるで違って見えました。自分のこだわりや決めつけが、自分自身を苦しめていたのですね。
そんな経験から、お母さんが子育てを主役になって楽しめる社会になったらいいな、と強く感じています。 

程よく自分の時間もあって、共に学び合ったり喜び合える仲間がいて、お母さんが子育ての主役であれる場。

お迎え後、のんびりおしゃべりしたり、道草食ったり、遊びながら帰宅する道中は、子どもが園で楽しかったことや悲しかったこと、がんばったことを消化しつつ心と体に自然にしみこませる時間。そんな時間を確保しつつ、子どもも お母さんもそれぞれの自分の時間を無理なく楽しむのにちょうどいい、だから14時にお迎え(園バスではない)なのです。


子どもにとっては、園は はじめての社会。集団のなかでたくさんのことを経験し、遊びを通してワクワクする楽しさや思い通りにいかない葛藤を感じ、自分の気持ちに気付き、友だちの気持ちを聴いて、自分以外の人にも気持ちや考えがあるんだということを知っていきます。
気持ちを見つめ言葉にして、他者との対話の中で自分や他者をわかり合っていく、「自分は自分、あなたはあなた」それぞれのありのままを表現し合い受けとめ、多様性を認め合い仲間になっていく…
大人の私たちでも、身構えてしまう高度なコミュニケーションスキルを、子どもたちは毎日の園活動の中で取り組んでいるのです。

そんな刺激的な活動から、最も安心安全なホームに帰る道中は、子どもが良い意味でがんばっていた自分から、素の自分に自然に戻っていくのに最適な時間。子どもたちは言葉にはしなくても、嬉しい時は歌を歌ったり、がんばったな~という時は、いつもより甘えて来たり。悲しいことがあったら、少しのことでグズグズするかもしれません。
そんな時は、楽しかったんだね~ がんばったんだね~ なんか悲しいこと経験したんだね~ とだまって受けとめ、手をつないだりハグしたりして、子どもが1日のいろいろをリセットし、リラックスできるまで見守ってあげられたらいいですね。

素の自分に戻る時間…歩いたり、夕食の買い物に立ち寄ったり、移動しながら一日のいろいろな感情をリセットし、おうちに帰ったら、のんびりおやつを食べ、お風呂に入り、夕食をとって、安心の中で眠る…子どもにとってこんなにも成長発達の糧になるものはありません。
普通の毎日、日常こそが子どもにとって、かけがえのない幸せな時間です。(脳科学や心理学でも実証されています。この話はまた次回に)

公園に寄ったり買い物したりしながら、のんびり帰宅し、18時頃にはお風呂と夕食をし、20時には布団に入る。幼児期に必要だとされる11~13時間の睡眠をしっかりとって7時頃起床し、ゆっくり朝ごはんを食べて登園…

何でもない日常に見えますが、これを実現するのは至難の業!!
乳幼児期の子どもの発達と健やかな成長に欠かせない、本当に大切なこの日常の生活リズムや生活環境をつくること、それが十分素晴らしい子育てなんです。

でも、子育て経験者なら誰だって、それが簡単でないことを知っています。ましてや、フルタイム就労の母親が、その大切さをどれだけ理解していたとしても、現実はどうしたって難しい…

長い人生の、はじまりのたった5年間、母と子がこの日常を安心して過ごして行ける社会にしていきたい。
だから、どろんこ園の保育時間は14時まで。

そのなかで精一杯、自然に触れ、自分を見つめ他者に出会い、親も子も共に育ち合える環境を、安心安全のコミュニティをみんなで創る場です。
お迎え時のお母さん同士のおしゃべりタイムも実はとっても重要。こんな思いをしているのは自分だけじゃないんだ…こんな言動、我が子だけじゃないんだ…と安心したり、他のお母さんの声掛けや、工夫にアイディアをもらったり、我が子だけでなくお互いの子どもの成長に一喜一憂し合える仲間がいること。3年間毎日毎日、お迎え後の少しの時間でもその積み重ねは、人生の宝物になります。
子育てって、最高!!おもしろい!幸せ!と共感しあえる仲間がいることが、本当に大切なことなのです。

11時間を標準とする長時間保育、延長保育や預かり保育、各家の前までの通園バスといった、園や行政サービスが増えていく中、どろんこ園の在り方が理解されないことも選ばれないこともあるとは思います。
それでも、どろんこ園では、子育ての主役は家庭にあるということを大切にしていきたい。
長時間就労や長時間保育を望まず、子育てを楽しみ、その日常の中で自分らしさに向き合い 共育ちを目指すお母さんの為に そんな場を守っていけたらいいなと思っています。

不安がいっぱいの情報に溢れた世の中ではありますが、
子育てが辛い、大変、だけど本当は楽しみたい! 
仕事しなきゃ将来が不安、だけど…こんなに小さい時期に長時間保育で本当に良いの? と迷っているという方、自分を信じて。
どんな選択をするかはその人次第。
不安を軸にせず、こうしたい、こんな子育てが良いな、と思う道へ一歩を踏み出しましょう♪

その上での失敗や後悔はあり!どんな場合でも切なさや痛みは多少伴うけれど、納得のいく人生になっていくだろうと思います。
でも、逃げや不安から本当の自分の気持ちを見つめず いつも目先の利益や情報で選択する癖がつくのは危険です。
子どもたちが大きくなって、自立してもなお、もっとこうできればよかったな…と思ってしまうのが親心。
どろんこ園で12年間たくさんの親子と関わり、我が子の子育ても19年が過ぎ、我が子たちが家を離れて改めて強く実感しているからこそ、伝えたい。
人生の軸になる乳幼児期、たった5年、されど5年です。

乳幼児期の子育てがなぜこんなにも重要なのか、はまた次回。
今日はこの辺で~

読んでいただきありがとうございました♪

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