『ミスティックキラードール』第1話

あらすじ

世の中で起こる行方不明事件、原因不明の死、犯人不明の殺人。
そのほとんどは魔術を使う殺し屋によって引き起こされた事件である。
とある魔術師に家族を殺された主人公は、犯人に復讐するために非魔術師でありながら魔術師を殺すほどの力を身につけた。

キャラ

【登場人物】
泡(あぶく)
ナイフ使いの殺し屋少年(ナイフ以外も使う)。14歳。9歳の時に魔術師に両親と姉を殺された。以降復讐のために研鑽を積み、ありとあらゆる戦闘術や学術を叩き込んだ。それらは魔術に匹敵する。非魔術師でありながら、人の技術によって魔術師を殺すカウンターのような存在。
小柄、捻くれたガキ。軽口。いつも何かを食べている(成長期)

ロゼ
泡の育て親にして監督役の魔術師。32歳。ヘラヘラおじさん。
大柄猫背。たまに怖い。魔術学團秘匿守護隊(オブスキュラス)支部長。
元々黒幕を追っていた。因縁を持たせるのであれば、兄弟子。師を殺された。
有する魔術は【命名(ネームド)】名前を与えた(呼んだ)モノや事象を操る。
泡の名前はロゼがつけたもの?泡はロゼが生み出した復讐のための道具?という部分を関係性の肝に。(結局違います。現状では直前までそのつもりだったが、泡の一文字を与えようとしたところで泡が読みの“あぶく“を選んだため魔術は掛からなかった。)


本文

学校帰りの少年。
ただいま。と声を出すが屋内から返事はない。
それどころか、部屋は暗く電気もついていない。
疑問を感じながら靴を脱ぎ部屋に入ると、
キッチンにはオブジェのように組み上げられた姉と両親の死体があった。

数年後、とある高層ビルの一室。
10人の男女が卓を囲み座っている。
【時計卿】スタン・ドレック 若々しく凛々しい青年。
【鮫喰らい】海原守定 タトゥーまみれの屈強な男。
【ドライバー】摩天楼 マントを被っている性別不明。 
【縄】アルフレッド・レッド スーツ姿の女性。エロい。
【緑壁】フラン・スニーカー 傷だらけの老人。
【デッドハウス】①(マルイチ)   ガスマスクの大男。
【コンプレイターズ】RV   人形を抱えた暗そうな女。
【影武者】ブラック 犬の着ぐるみ。
【腐腑斧】サムライハート 気弱そうなサラリーマン。 
【星見守】髑 アイドル衣装の女。
スタン「それでは、10人長による報告会をここに始める」
窓を背にした上座に座るスタンが立ち上がり、重々しく宣言した。
他の9人はそれぞれ徽章を机の上に置く。
フラン「それにしてもこんな外から丸見えの建物、落ち着きませんなぁ。」
スタン「すまない【緑壁】。我が社のカンファレンスルームで1番広く豪華な部屋を用意したのだ。だが、【影武者】と【星見守】、【デッドハウス】の三名で鉄壁の魔術防壁と探知魔術をかけている。セキュリティに関しては安心してくれたまえ。」
①「我ノ魔術ワ虫ノ1匹モ通サヌ。安心シタマエ。ゴ老体。」
髑「そうだよおじいちゃん。てかこんないい部屋用意してもらっといて文句とか老害乙ww」
ブラック「ぷくく…!」
フラン「生意気なガキどもめ。」
アルフレッド「もういいから、始めましょうよ。雑談しに来たんじゃないんでしょう。」
スタン「そうだね【縄】、みんなもいいかな。まずは魔術学團の動きだが…【腐腑斧】」
サムライハート「え!?あ、えっと…!はい、すみません!からの追手ですが、今月は今のところ13名、わたしと海原様で迎撃に成功しました!おそらく全員が学院の生徒かと思われます…」
微笑むスタン。
海原「小便臭ぇガキどもが追手とか舐められたもんだぜ。もっと骨のあるやつはこないもんか。」
スタン「油断はいけないよ【鮫喰らい】学生位なら大したことないが、教授位に出張られると流石に厄介だ。5人も集まれば私たち1人には比肩し得る。可能な範囲で戦闘行為は避けるんだ。」
舌打ちをする海原。
摩天楼「そもそも俺たちは学團の追手ごときを相手取ってる暇はねぇ。」
RV「わ…わた…わたしたちには…すう…崇高な…も…目的が…あ…あ…あります…」
スタン「その通りだ【ドライバー】【コンプレイターズ】。私たちには魔術学團の者達にはできない大切な目的がある。」
スタンが立ち上がる。
スタン「私たちは自らの魔術を高みへと導き、その頂点に至るのだ。そのために」
スタン「私たちは1人でも多くの非魔術師を殺さなければならない。」
スタン「非魔術師の血は下賎だが術の糧になる。魔術を用いて非魔術師を殺すことは魔術の頂への一歩となるのだ。学團の者は非魔術師を殺すことを禁じた。恐るべき愚行だ。魔術を使えぬものに生きる価値などないというのに。さぁみんな教えてくれ。今月君たちは何人の非魔術師を殺した?」
海原「8人。全員俺の腹の中だぜ。」
摩天楼「13人だぜ。ひひ。死体は…まぁ見つけようがねぇだろうな」
アルフレッド「7人です。新婚の夫婦3組と幼い子供が1人ですわ。」
フラン「24人じゃ。運良くまだ生きているものもいるかもしれんが…どの道、虫に食われていつかは死ぬじゃろう。」
①「11名。全テ灰ダ。」
RV「に…29です…この子が…学校ごっこをしたがったもので…」
ブラック「ぷくく…!18人だよ…!みんな突然死って報道されたよ…!ぷくく…!」
サムライハート「…すみません。6人です。どの子もいい声で泣くものですから…興が乗って遊んでしまいました…!すみません!」
髑「あたし21にーん!全員イケメンだったけど今は溶かして混ぜ混ぜして化粧水にしちゃった!」
スタン「皆さん。とても素晴らしい!!私の115名と合わせると合計で252名もの価値なき命を魔術の贄に変えた!これは魔術界において偉大な一歩だ!しかも、そんなにも大量の命を奪われておいて!ただの!1人も!魔術師による行為だとは知り得ていない!!何と下等な!何と低劣な!」
魔術師たちが下劣な笑い声を上げる。
スタン「さぁまだまだ殺しましょう!私たちの王道の為に!魔術世界の未来のために!」

言い終わる瞬間にスタンの背後の窓が派手に割れる。
飛び込んできた短パンの少年。彼の名は泡(あぶく)。
泡は口に咥えたナイフを右手に持ち替えると、素早く振り抜きスタンの首を飛ばした。
ゴトンゴトンと重苦しい音で首が転がる。
卓の中央で動きを止める無表情なスタンの首、受け身を取った泡が卓の中央に着地し、その首を踏みつけた。動揺する魔術師たち。
泡「邪魔するぜ。魔術師ども。」
ひひ、と笑いながらナイフを器用にくるくる回す。

泡「いーち、にーい、さーん」
1人ずつ指差しながら泡が数を数える。
泡「あれ?9人しかいねぇじゃん。どうなってんだよロゼのやつ!おい、あんた今日は1人欠席か?」
急に声をかけられて海原が我に帰る。
海原「今お前が殺しただろうが!!」
海原が激昂しながら泡に殴りかかる。元々大きかった身体が数倍に膨れ上がっている。
泡「ああ、そうだわ。忘れてたぜ。」
拳をくるくるとしなやかに避けると泡は海原の喉をナイフで撫でるように切る。
血が噴き出し、力なく海原が倒れる。その血で魔術師たちの動揺が解けた。

摩天楼がマントから右腕を出す。そこには魔法陣のようなものが描かれており、光を放つ。
泡はもう一本ナイフを抜きながら素早いステップで摩天楼に近づくと、その腕を根元から切り落とすと、そのままぶつ切りにした。悲鳴をあげる摩天楼の腹をマントの上から何度も刺す。

アルフレッドが両手を前に出すのと同時に、泡がそこから飛び退く。摩天楼の死体がプレスされたように潰れる。舌打ちをするアルフレッドだったが、すでにその両目には泡が投げたナイフが刺さっており視界は閉じていた。卓を蹴ってアルフレッドに急接近した泡が両目のナイフを切り下ろしながら引き抜く。

フランの服の隙間から大量の虫が溢れ出し、泡に襲い掛かるが、次の瞬間には虫たちは全て細切れにされ、泡はフランの後ろに立っている。少し遅れて、フランの体から一眼で致死量とわかる量の血が噴き出し倒れる。

①の上半身が発火し、腕から炎の鞭が無数に現れる。しかし泡の姿はすでにない。見回すと①の肩に乗っている泡に気がついた。頭を何度も刺され譫言を発しながら①が倒れる。①の炎が部屋に燃え移る。

RVが抱いている人形が巨大化し異形となって飛びかかると同時に、逆サイドからブラックの着ぐるみの口から黒い手が伸びる。泡は双方を最低限の動きで交わすとブラックの脚を掴みそのまま跳ぶ。すれ違い様RVの腹をナイフで裂くと内臓が飛び散る。合わせて人形も崩れ落ちる。
ブラックを①が出した炎の上に踏みつけて、着ぐるみが火だるまになる。

サムライハート「こいつ…!魔術師狩りだぁ…!」
サムライハートが抜いた太刀を放り捨て、部屋の入り口まで逃げようとするが、飛んできた球体が後頭部に当たりその場に崩れ落ちる。意識を失いかけながら飛んできた球体を見ると、それはスタンの生首だった。
悲鳴をあげる声をかき消すように頭頂部を貫通して地面にナイフが刺さる。サムライハートの黒目がぐりんと瞼の上に消える。

一瞬の出来事に息を荒げながら部屋の隅にへたり込む髑。
ナイフを抜いた泡がゆっくり歩きながら、髑へと近づいていく。
髑「ねぇ!お願い!許して!何でもするから!あ、えっちなことでもいいよ!ね?お願い!」
無言で近づいた泡が髑の前にしゃがみ込む。
泡「ねぇちゃん、ちょっと聞きたいことあんだけど。」
髑「へ?」
泡「ねぇちゃんたちの中に、“身体を刻んでくっつける魔術”を使う奴っていた?」
ふるふると弱々しく首を振る髑。
泡「じゃあそういう魔術師に心当たりある?」
ふるふると再び首を振る髑。
はぁ~と大袈裟にため息をついた泡。
泡「そっかぁ残念。」
言いながら髑の腹にナイフを突き立てる。
弱々しく血を吐くとそのまま力なく倒れ込んだ。
泡「さーてと。」
立ち上がる泡。その身体には返り血の一滴もついていない。
ナイフを鞘に収める。死体の山と炎に囲まれて立つ泡。

場所変わって煙を上げる高層ビルが背後に見える道。
手にはチェーンのハンバーガーショップの袋。
電話しながら、泡が歩く。
泡「ああ、終わったぜ。」
電話相手はロゼ。
ロゼ「お疲れ様。泡(あぶく)。怪我はないかい?」
泡「あんな雑魚相手に怪我なんかするかよ。」
ロゼ「それはよかった。でも、できるならもう少し静かにやってほしいな。今緊急ニュースで大騒ぎだよ。」
泡「仕方ねぇだろ。連中の中に火ぃ使う奴がいてよ。勝手に燃やしやがったんだよ。どうせ、不審火とかガス事故ってことにできんだろ?」
泡、袋からハンバーガーを取り出し包み紙を開く。
ロゼ「それでも、火事になると、無関係な人に被害が及んじゃうかもしれないだろう。」
泡「ちっ、分かったよ。次は気をつける。」
ハンバーガーを頬張る泡。
ロゼ「うん、早く帰っておいで、ご飯もできてるし、お風呂も沸いてるよ…ってなんか食べてない?晩御飯入らなくなっ…」電話を切る泡。
ハンバーガーを頬張りながら、道を歩く。

『魔術』
『魔力という未知の力を用いて、超常に近い現象を起こす技術』
『それは確かにある』
『平和維持、神秘性の保全、人種差別の危惧など様々な観点から隔離・隠蔽されている』
『しかし、その思想に叛き、魔術を用いて文明社会を脅かす者達も一定数存在する』
『この日本における年間8万人超の行方不明者、1000件近い未解決事件、さらに認知すらされないそれらの大多数は魔術師による犯行だとされているのだ』
『魔術を知らない者たちの法制で裁くことができない彼らを』
『魔術の秘匿という魔術界最大の禁忌を犯した彼らを』
『必殺という形で刑を執行する者たちがいる』
『これは』
『魔術師専門の殺し屋たちの戦いの物語である。』
タイトル『ミスティック・キラー・ドールズ』(仮)

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