カツ丼
14時30分、携帯が振動した。
私は何をしていたのか思い出せなかったが、先程時計を見た時は12時だったので2時間半もの間、神隠しにあっていたではないかと思われる程本当に何をしていた訳でもなかった。
ふと視線をスマートフォンに戻す。
スマートフォンは振動し続けており、その振動の正体は母親から電話の呼び出しだった。
母「仕事終わった。ご飯食べた?」
私「お疲れ様!まだ何も食べられてない…。」
母「わかった。スーパーで適当に買って帰るね。」
母親の優しさが沁みる。私の考え過ぎてしまう性格とは対象的な母親の明るさに私はいつも救われていた。
何かを考えている訳でもないがひたすらに考え事をしていたら、インターフォンに両手がレジ袋で塞がっている母の姿が映った。
スーパーでレジ袋3袋をパンパンにする程買い込んだ様で、私はそれを冷蔵庫やストッカーにしまうのが大変だった。
片付けが一段落したので親子揃って遅めのお昼ご飯を食べた。恐らく将来思い出して「また食べたいな」とは思わない気がする400円程の地元のスーパーのお惣菜売り場で作られたカツ丼だった。
2人でカツ丼を食べ進めていると私達はカツ丼のカツの衣がやけに分厚いことに気が付き、2人で顔を見合わせて「これ、せこいな(笑)」なんて言いあったりした。
窓の外ではひっそりと佇む梅の木の花が芽吹き始めており、おだやかな風によって花びらが美しく舞っていた。花びらがおだやかな風に舞っている様はスノードームの中の粉雪の様だった。
[完]
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